集落営農「くまけん」逝く 農協協会副会長・熊谷健一氏を偲んで2025年10月21日
一般社団法人農協協会副会長の熊谷健一氏が10月6日に逝去した。氏を偲びJA全中前教育部長の田村政司氏(独立行政法人農業者年金基金理事)に追悼文を寄せてもらった。
去る10月6日、熊谷健一さんが82歳で亡くなりました。
熊谷さんは「笑い顔」の方でした。喜んでいても、怒っていても、悲しんでいても、表情はいつも愛くるしく、笑っているように見えました。そこに何ともいえない氏の「優しさ」を感じ、一緒にいるといつもほっとする思いでした。地元・岩手県内の方は、親しみをこめて「くまけん」さんと呼んでいました。
はじめてお会いしたのは、25年程前であったかと思います。縁あって、全中水田対策課のメンバーで、田植えのお手伝いに行き、おにぎりや「もちもち酒」をいただきながら、農家の暮らしや集落のことについて、語ってくれました。(当時、JAいわて中央では、餅米の生産振興をしており、何にでも「もちもち」をつけていました)
集落リーダーとして、農家の皆さんと話し合いを重ねながら、収穫祭や子供会などの様々な集落行事、乾燥調製施設共同運営やオペレーターによる機械作業受託など、共同活動にせっせと汗をかいていました。東京生まれ東京育ちの私にとって、農家のこと、集落のことを何でも教えてくれる「先生」でした。
2004(平成16)年からの国がすすめる市町村水田農業ビジョン策定に対して、全中として集落ビジョンの積み上げ運動を提起しました。その原型となるのが、熊谷さんの集落での実践でした。さらに、2007(平成19)年からの品目横断的経営安定対策という、世にも不思議な政策導入に対して、JAグループとして「担い手づくり全国運動」を展開し、全国で集落営農組織をつくり、補助金が従来と同様に全国の農家に行き渡るよう運動を展開しました。その際にも、熊谷さんの集落にせっせと通い、組織づくりや会計の方式を教えてもらいました。
そして、熊谷さん自身、地元の都南地域で、1000ha規模の日本最大の集落営農組織「都南営農組合」を設立し、地域の1000戸あまりの農家をまとめあげ、地域農業の発展に尽力しました。
JAいわて中央の常務、専務となりました。本人は組合長となり、管内農家の営農と暮らし、集落の発展にさらに尽力することを望んでいましたが、強い個性が地域の反発を招くこともあったのでしょうか。専務の任期を終え、JA常勤から身を引きました。
私が営農部門から教育部門に異動になってからもお付き合いいただきました。「組織づくりは、地域づくり・人づくり」と提唱し、組織活動を通じた実践的な教育について教示してくれました。
8月上旬にご自宅にお見舞いに行き、盛岡の駅前で、お酒を飲み、新鮮なおすしを地元の仲間と食べました。その時は、体調がよくとてもおいしそうに食べていました。もしかしたら長くないのではないかと察し、訪問したのですが、最後に元気な熊谷さんと杯を交わすことできて、よかったです。
最後に、熊谷さんの盛岡弁のなまりはかなり強く、通訳なしでは理解できないとおっしゃる方が多かったのですが、なぜか私は東京生まれのくせに熊谷さんの話はすべて理解できました。
熊谷さんのご冥福をお祈りします。四十九日を終え、落ち着いた頃に、全国の仲間とお墓参りをしたいと思います。
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