「地域発のバリューチェーン構築を」A-FIVE-J2013年3月29日
(株)農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE-J)は3月28日、都内で開業記念シンポジウムを開いた。地方銀行、食品や農業関連の企業・団体など中心に230人が参加した。
◆6次産業化で農林漁業者の所得向上を
堀紘一取締役会長はA-FIVE-J設立の目的について「日本農業を、後継者がたくさん出てくるような、明るい未来のある産業にしたい」として、A-FIVE-Jが支援することで「世界に誇れる日本の農産物を国内外の消費者に届けたい」とあいさつ。
大多和巖代表取締役社長CEOも、「若い人たちが、第1次産業に入ってみたい、と思ってくれるようにしたい」と、同社の目標として次代を担う若者の育成を掲げ、「(同社の支援によって)農林漁業者の所得を向上し、地域を活性化することで、これを実現したい」と述べた。
この日のシンポジウムは「バリューチェーンをつなぐ新たな結合」がテーマ。これは、農林漁業者が主体となって地域の食品産業、観光、医療などさまざまなパートナー企業を巻き込みながら、産地と消費者とを結ぶバリューチェーンを構築し、地域の活性化につなげようという、同社の事業理念を表したもの。
すでにサブファンドをつくり出資を受けることが決まった企業・団体も含めて、農林漁業の6次産業化をめざす5人がリレースピーチを行った。
◆ファンドの力で多様な農業を活性化
農業現場からの代表として登壇した川田洋次郎氏(JA広島県果実連会長、日園連副会長)は、自身の出身地である瀬戸内海の島を「TPPに対する懸念が大きく、一番早くから見放された地域といってもいい」と紹介。戦前から続いていたレモン栽培は昭和39年に関税が撤廃されたが、地域の異業種との連携を深めることで産地として復活させた、という経験をもとに、「果実は全般的に、国内の産地間競争、輸入との競争が激しい。生果だけでなく、色々な形に加工して販売をのばさなければならない。若い人たちの農業経営を支えるためにも、ファンドを活用していきたい」と期待を寄せた。
神田強平氏(群馬県上野村村長)(発表順)が1・2次産業を地域の中核としている自治体の長として「(上野村は)人口わずか1300人で面積の96%は山林。林業を産業化し、雇用を増やすためにも、3次産業との連携を深めたい」としたのに対し、食品産業から西秀訓氏(カゴメ(株)代表取締役社長)が「中山間地や大規模化できない人たちでも、農業経営を持続できるような仕組みが必要だ。農業現場との連携を深めたい」とスピーチするなど、各人が6次産業化に向けた抱負を語った。
そのほか、成井隆太郎氏(ヤマトホールディングス(株)経営戦略・グローバル事業戦略担当シニアマネージャー)、木村理氏(千葉銀行取締役常務執行役員)が発表した。
(写真)
上:堀紘一会長
下:大多和巖CEO
◇
シンポジウム終了後の懇親会ではJA全中の冨士重夫専務理事が来賓としてあいさつ。「(機構の発足が検討され始めた当初は)地域や農林漁業者の主体性が発揮されるのかどうか不安だったが、大変いい形の会社になったと思う。日本は南北に長く、農業もさまざまな形がある。多様な農業と地域の力をファンドの力で活性化させてほしい」と同社の開業を祝った。
シンポジウムに参加したJA茨城中央の川上好隆代表理事理事長は、「6次産業化に向けては、まだまだ現場の農業者やJA役職員の中でもモチベーションが低いと感じる。こうしたファンドの設立が、現場の意識改革につながってほしい」と期待を寄せた。
(写真)
全国から230人が参加し、会場は満席。注目の高さが窺えた。
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