「子ども世代に農業勧めたい」生産者の2割 所得向上が課題 農林中金調査2024年3月29日
農林中央金庫は日本の農業に対する意識調査を全国の消費者、生産者それぞれ約1000人を対象に実施し3月26日にその結果を公表した。
消費者に対して「生鮮食品・食材を購入するとき国産品と輸入品のどちらが良いと思うか」を聞いた。答えは「国産品の方がとても良い」が30.9%、「国産品の方がまあ良い」が48.3%で合わせて79.2%と約8割が国産の食品・食材の購入意向があることが示された。
その理由は「安全性」がもっとも多く89.9%で、次いで「品質」71.2%、「鮮度」58.3%という結果となった。価格よりも質を重視しているといえる。
消費者に対して「日本の農業に課題があると思うか」を聞いたところ、「とてもあると思う」が29.6%、「まああると思う」が51.2%で合わせて80.8%となり、消費者の8割が日本の農業に課題があると感じていることが示された。
課題があると回答した消費者に具体的な問題を聞いたところ、「人手不足」86.0%、「後継者不足」84.2%で「人」に関する回答がそれぞれ8割を超えた。
次いで「生産コストの上昇」51.2%、「物流コストの高騰」47.2%と続く結果となった。「販売価格の安さ」を課題だとした回答は27.2%だった。
「国産生鮮食品・食材の供給・生産の未来」について聞いたところ、「とても安心」14.5%、「まあ安心」40.6%で合わせて55.1%と半数以上の方が安心と感じていることが示された。
一方で不安に感じている人は「とても不安」5.0%、「まあ不安」17.6%で22.6%と、不安に感じている人は5人に1人にとどまっている。日本農業に課題を感じて消費者が約8割を占める一方、食の将来については安心と考えている人が半数以上ということになる。
「安心」を感じている理由は「現時点で特に不安になるような支障が生じていないから」が53.9%ともっとも多く、次いで「スマート農業など技術革新の進展」32.5%、「企業など農業の新たな担い手の増加」27.5%となった。
生産者に対しては「何らかの課題に直面しているか」を聞いたところ、「直面している」との答えが65.2%に上った。
課題の内容は「生産コストの上昇」が61.7%でもっとも多く、次いで「後継者不足」59.8%、「販売価格の安さ」53.6%と続いている。
消費者への調査では人手不足、後継者不足が回答率が高かったが、生産者では後継者不足に加えて、生産コストの上昇や販売価格の安さが上位となっている。
調査では生産品目によって課題が異なることも示された。
「野菜」では、「販売価格の安さ」61.6%、「出荷価格の変動」43.2%、「販路の拡大」23.0%でこれらの項目が他の品目より高く、野菜では販売面で課題を感じていること思われた。
一方、「畜産」では「労働環境改善の必要性」31.2%、「従業員の教育・人事制度」20.5%で他の品目より高く、生産現場に課題があることがうかがえた。
その他、「米」は「後継者不足」が67.9%、「花き」では「物流コストの高騰」が53.0%と他の品目より高く品目による違いが明らかとなった。
こうした課題を解決するために必要だと生産者が考えていることは「農業労働力の派遣や人材確保の支援」が41.3%でもっとも多く、次いで「農業機械や設備のレンタルサービスや、これらの導入に向けた助成など金融支援」が41.2%、「農業技術やノウハウの研修・情報提供」が26.9%となった。
品目別に見ると「野菜」では「農畜産物の加工・販売支援や流通ルートの提供」が30.5%、「直売所やオンライン販売のプラットフォーム」が27.7%と他の品目より高かった。
「花き」では「営農状況や収支を品目ごとに管理できる仕組み」が他の品目よりも高く、「畜産」では「設備導入や運転資金確保のための低金利の借入資金」が求められていることが示された。
子ども世代に農業を勧めたいかを聞いたところ、「勧めたい」との回答は消費者15.9%、生産者20.8%と2割にとどまった。
その理由として生産者は「所得水準が低い」がもっとも多く75.3%となり、次いで「収入が安定しない」72.8%、「天候や災害の影響を受けやすい」が69.0%となった。
一方、消費者は「収入が安定しない」が71.3%、「天候や災害の影響を受けやすい」が69.0%で、「所得水準が低い」は34.3%にとどまり、生産者の認識とギャップがあることが示された。
「農業の職業」としての魅力を高めるために求められるのは生産者・消費者とも「賃金を上げる」がもっとも多かった(生産者63.1%、消費者54.2%)。
消費者に日本農業に期待することを聞いたところ「食料の安定的な供給」が70.3%ともっとも多かった。一方、生産者には日本農業が果たすべき役割を聞いたところ、同じく「安定供給」が70.3%ともっとも多く、消費者と生産者で重視していることは同じであること明らかになった。
ただ、農業の所得水準や農産物価格の安さについての意識の違いが明らかになるなど、生産現場の実態に関する理解醸成が重要なことも示された調査結果だといえる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(149)-改正食料・農業・農村基本法(35)-2025年7月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(66)【防除学習帖】第305回2025年7月5日
-
農薬の正しい使い方(39)【今さら聞けない営農情報】第305回2025年7月5日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日