黒字転換も通期純利益見通しは据え置き 農林中金25年度半期決算2025年11月20日
農林中金が11月19日に発表した2025年度半期決算は、連結経常利益が862億円(前年同期は8588億円の経常損失)、連結純利益が846億円(同8939億円の純損失)となり、大幅に黒字転換した。低利回り資産売却損の剥落や外貨調達コストの改善に加え、市場環境の好転で有価証券評価損も縮小し、財務の健全性を維持した。一方、市場環境の不透明感は強く、通期の連結純利益見通しは年度当初の300〜700億円を据え置いた。
農林中金の北林太郎理事長
2025年度半期は、安定的な黒字と強固な収益基盤の確立に向けた取り組みを進めるなか、投融資ポートフォリオの改善と市場環境の回復が収益を押し上げた。前年に計上した低利回り資産の売却損がなくなったことに加え、海外金利低下を受けた外貨調達コストの減少が利益改善に寄与した。
有価証券評価損益は前年度末比で3668億円改善し、含み損は1832億円に縮小した。世界的な株高やクレジット市場の改善など、市場全体の好転が評価損益の改善につながった。市場運用資産は債券・株式・クレジットなどへの分散投資を進め、9月末時点で43兆7000億円(前年度末40兆3000億円)となった。
市場運用資産の残高推移と有価証券評価損益の推移
連結総資産は83兆2000億円で、前年度末(3月末)の83兆4000億円からほぼ横ばいとなった。連結純資産は有価証券評価損益の改善に伴い5兆1000億円(前年同期4兆7000億円)に増加した。貸出金残高は国内向けを中心に拡大し、9月末で18兆9000億円(同17兆4000億円)となった。
JA貯金は107兆2000億円(前年度末107兆3000億円)と漸減傾向にあるが、全体としては安定的に推移した。資金調達基盤は維持された。
自己資本の健全性も確保されており、普通出資等Tier1比率は18.22%、Tier1比率は20.05%、自己資本比率は22.47%と、バーゼルⅢ最終化ベースの規制水準を大きく上回った。
収益と自己資本比率
持分法適用会社であるJA三井リースの引当金問題については、同社の発表内容も踏まえ、監査法人と協議のうえ、連結決算に与える影響を実務上可能な範囲で反映した。
北林理事長は、物価上昇や円安による資材価格の高止まり、異常気象や自然災害など、農林水産業にとって厳しい環境が続いたと振り返った。その一方で、米価高騰を背景とした食料安全保障への関心の高まりにより、「農林水産業の持続性への注目が一段と増した」と述べた。黒字転換については「資産構成の見直しや収益源の分散化が着実に進んだ結果」と説明し、今後も金融・非金融の両面から食農バリューチェーン全体を支える取り組みを強化する考えを示した。
また、理事長就任時に掲げた「稼ぐ力の再構築」「農林水産業の持続的発展への貢献」「ステークホルダーからの信頼回復」の三点について、多年度にわたり着実に取り組む姿勢を示し、「将来にわたる安定的な黒字と強固な収益基盤を確立していく」と述べた。
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