新潟一般コシの仮渡金1500円増 資材高騰など配慮で産地は評価 「マーケット直視すべき」との指摘も2022年8月29日
JA全農にいがたが、今月、新潟県内の各JAに示した2022年産米のJA仮渡金(概算金)は、一般コシヒカリで60キロ当たり1万3700円と21年産米当初額と比べて1500円増額された。米価低迷や資材高騰で厳しい経営に直面する農家への配慮など総合的に判断した措置といい、産地や生産者からは評価する声が上がっている。全国最大の米どころの動きが今後、各地にどう影響するか注目される一方、「店頭での新米価格は上がっておらず、マーケットを直視すべきだ」との指摘もある。
判断の背景に資材高騰や米価低迷も
JA全農にいがたが各JAに示した22年産米の仮渡金は、新潟一般コシが13700円(21年産より1500円増)、岩船産コシが14000円(同1400円増)、佐渡産コシが14000円(同1400円増)、魚沼産コシが17500円(同1000円増)。新潟一般コシヒカリは、20年産のときの14000円にまでは戻らなかったが、3年ぶりの増額となった。
JA全農にいがたの関係者によると、燃料や肥料など生産資材の高騰に加えて昨年産の米価低迷で農家のモチベーションが下がっており、各地のJAから価格を上げてほしいとの強い声があったという。こうした生産者への配慮に加えて、昨年の新潟県産米が不作だったことで在庫が若干薄くなっていることも含めて総合的に判断したという。
産地からは一定の評価 「肥料代高騰などカバー」
仮渡金のアップについて、産地からは評価する声が上がっている。JA全農にいがたからの通知を受けて、JA佐渡は先週、農家への仮渡金を同じく14000円にすることを決めた。JA全農にいがたの判断は評価できるとしており、担当者は「肥料価格などの高騰に加えて、離農する農家をこれ以上増やさないためにも、JAサイドとして多少無理をしても再生産を頑張ってほしいという農家へのメッセージを込めた」と話す。一方で、「佐渡は離島であり、運搬などの経費もかさむことを考えると他の地域よりもう少し配慮してほしかった気持ちもある」と複雑な胸の内を語る。
年間約5000俵の魚沼産コシを生産する同県魚沼市の農家、関隆さんも、資材価格の高騰に悩まされる中、増額の判断を肯定的に受け止めている。関さんは大部分の米をJA以外の業者と取り引きしているが、取引額は仮渡金の金額をベースに算定しており、一定の収入増が見込まれるという。「様々な経営努力はしているが、肥料代だけで年間約350万円の負担増になっており、カバーできることは助かる」と話す。しかし、「かつて魚沼産コシは2万5000円位の価格で取り引きされていた。資材高騰の中でこの価格でも厳しいと受け止める農家も多いと思う」と付け加えた。
「決めるのは消費者 マーケットを直視すべき」
今回の仮渡金の増額について、長年、米の流通を取材し、当サイトのコラム「米マーケット情報」を担当する熊野孝文さんに聞いた。熊野さんは「プライスリーダーの新潟県の判断のインパクトは大きく、ほかの産地にも影響すると思うが、過去に同じ対応をした結果、米が売れ残ったことが何度もあった。生産者や卸業者は賛成するだろうが、本当にいいかどうかは冷静に考えるべきだ」と指摘する。
「全農系統が価格を上げても市中相場が上がるわけではなく、赤字になることもあり得る。価格を決めるのは市場であり、現実としてスーパー店頭の新米価格は上がっていない。過去には、産地が県の税金を使ってブランド化した結果、売れ残るというケースもある。マーケットを直視して価格もオープンにしたきちんとした市場をつくっていくべきだ」と強調した。
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