【24年産米】倒伏やイネカメムシ 収量、品質に懸念 集荷に全力 東日本主産地の声2024年10月18日
農林水産省は10月11日に9月25日現在の24年産米全国作況を102の「やや良」との見込みを発表したが、産地からは「収穫が進むにつれ思ったほど穫れていない。現場の実感とは違う」との声も聞かれる。例年にない集荷対応とあわせ東日本のJA担当者に聞いた。
埼玉県の作況指数は99の「平年並み」の見込みと発表された。しかし、「そんな実感はありません。作柄は悪く自分としては90そこそこではと思う」と同県北部のJA担当者は話す。
地域の生産者からは10a当たり「5俵だった...」との声もある。理由の多くは高温によるカメムシ被害だが、今年は着色粒よりも不稔が多いという。出穂期にイネカメムシに刺されると不稔米を発生させるとして農水省も春から注意を呼びかけていた。11日の作柄発表で農水省は「大きな被害は出ていないのではないか」との見方を示したが、このJA担当者は予想以上の被害と実感している。
一方、集荷は民間業者との競合が激しい。60kg2万円以上とJAの概算金よりも高い買い取り価格を提示して生産者から米を集めている。提示価格は下がりそうになく、JAは集荷量が昨年より大幅に少なくなるのではないか、との危機感も持つ。
こうした米の価格高騰のなかで農家のなかには検査で規格外となった米を自ら引き取る人もいるという。例年は規格外となった米もJAが全農県本部に買い取り価格を問い合せ、生産者に伝えて集荷し少しでも手取りアップにつなげようとしてきた。それが今年は検査で規格外となると「返してくれ」と自ら引き取って帰る人も。今年は民間業者のなかには規格外でもそれなりの価格で買ってくれる、という背景があるようだ。
ただ、収量を減らした生産者がいる実態も踏まえ、「米の価格が多少高くなっていても、量が減れば収入は落ちる」と生産者への打撃を気遣う声がJA幹部から聞かれた。
秋田県は102の「やや良」と発表された。県南部のJAによると11日時点では集荷量は例年の43%で収穫を進めている状態で前年並みだという。1等比率は95%で品質は今のところいい。
しかし、当初は水害の被害があったものの、多くの生産者が収穫量はまずまずと思っていたが、「思ったほど穫れていないという声が大多数を占めている」と担当者は話し、収穫量がどうなるかはまだ予断を許さないという。大雨被害はあったものの、昨年のような高温と渇水はなく、かりに全体として収量減や品質低下となれば原因分析を急がなければ、話す。
一方、ほとんど民間業者の姿のなかった同JA管内にも県外の業者が米を求めて入ってきているという。農家の家にチラシが投げ込まれ、「価格はお問い合わせを」と書かれている。本業は廃品回収業のようだという。JAに出荷せず業者に売ったという話も聞こえなくもなく、担当者は「頭の痛いところです。JAは年間を通して安定的に消費者に販売する役割を果たしていかなければならないことを説明していくしかない」と話す。
岩手県は106の「良」と発表された。県北部のJA担当者によると「昨年より収量はいいが、作況指数は106まではいかず、100を少し超えるぐらい。やや良ではないか」と見る。
収量減となる懸念は「ここ何年かないほどの倒伏の多さ」だという。9月の大雨で倒伏が増えたが、8月末から倒伏しているほ場もある。未熟粒が多く、網から落ちる米が増え「最終的な収量が心配」と話す。
集荷状況は「施設集荷は変わらないが、紙袋の出荷率は低い。民間業者が強く苦労している」と話す。集荷量は全体で前年の95%前後と低下を懸念する。
県南部のJAは今週前半が組合員宅にJA広報誌を配布する訪問日。60kg2000円アップの追加の概算金をJAとして決めたことを急遽チラシにして組合員に周知を図ったという。
倒伏による収量と品質低下の懸念は宮城県のJAからも聞かれた。担当者によると倒伏により作業が遅れており、なかには穂発芽してしまった稲もあるという。
新潟県は98の「やや不良」の見込みとなった。県南部のJAによると中山間地域で8月下旬の雨の影響で倒伏が多く、刈取りが遅れているという。今年は昨年のような高温と渇水がなく、雨もあり気温の日較差もあったため作柄が期待されたが、ほ場によっては「1俵から1俵半、収量が落ちているところも」と話す。また、倒伏のせいか収穫が進むにつれ未熟粒も少なくないといい、今後、要因を調査しなければならないとしている。
集荷面では縁故米として自家保有している量がやや多いという。業者への販売目的ではなく、米不足だという都会の家族や親戚に贈っているのではないかという。
農水省の米の収穫量などの調査は、次回は10月25日現在の結果が11月中旬に公表される。
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