Jミルク生乳需給見通し 猛暑の影響で生産下方修正 年度末脱粉在庫5万7600トン2024年7月31日
Jミルクは30日、2024年度生乳及び牛乳乳製品の需給見通しを発表し、記録的な猛暑を踏まえ北海道の生産を若干下方修正した。会見では生乳需給が最もひっ迫する9月は道外送り6万4000トンを見込み「対応可能」とした。猛暑で牛体のダメージが懸念され、今後の需給見通しも不透明感を増している。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)
都府県の減少幅拡大も
2024年度の地域別生乳見通しは、猛暑を勘案し北海道を前回(5月)に比べ下方修正したが、増産計画に転じていることもあり3年ぶりの増産基調は変わらないとした。
以下は地域別生乳見通しだ。
◇地域別生乳見通し(単位千トン、カッコ内は前年比%)
・全国 7386(100.9)
・北海道4241(101.6)
・都府県3145( 99.9)
全国生乳生産の6割近い北海道が前回の5月見通しより427万9000トンから3万8000トンほど下方修正した。前年の猛暑の後遺症を引きずりながら、分べん時期が本来の春産みから夏場に数カ月ずれ、ちょうど受胎事故が多い暑い時期の出産に当たっていることが大きい。高温だと餌の食い込みも悪くなる。
一方で都府県は前回313万4000トンから今回は314万5000トンへとやや上向きの予測をした。だが、異常高温が続く実態などを踏まえると、Jミルクでは「北海道同様に都府県も下方修正も視野に入るかもしれない。夏場の分析を行い9月の次回需給見通し時には反映させたい」とした。
飲用向け低空飛行、高米価波及も
用途別では400万トン近い生産量がある飲用向けの需要が相変わらず前年実績割れを見込む。前年8月からの飲用向け乳価キロ10円年上げで牛乳の末端小売価格が一斉に引き上がってからちょうど1年。牛乳値上げの消費への影響が一巡する段階に入った。
実際の牛乳小売りの現場では異変が起きている。同時の会見で大手乳業の1リットル250円以上の牛乳価格と系統外原料を使う同200円以下牛乳の価格二極化についての改正畜産経営安定法に伴う流通課題の質問も出た。
Jミルクは「系統、系統外の実態把握は難しい」としたうえで「一概に高価格帯製品の販売が落ちているわけでもない」とした。ただ普通牛乳が前年対比99.9%と前年割れの一方で、脂肪調整などで値段の安い加工乳は全体ボリュームが小さいものの同103.6%と伸びている。消費者が牛乳、加工乳を問わず割安感のある製品を選択する傾向が強くなっていることも裏付けている。
脱粉在庫対策は引き続き必須
生乳需給に大きな影を落とす脱粉過剰は引き続き業界挙げた対策が必要だ。
このままでは年度末の脱粉在庫は7万トン以上に積み上がる。単年度需給不均衡は2万4700トンを見込む。放置すれば、北海道を中心に再びの減産を迫られかねない。そこで、国の支援も得ながら業界挙げての資金拠出による需要拡大、輸入品の国産代替といった在庫削減対策が引き続き不可欠だ。在庫削減効果は年間約1万9000トンが見込まれる。これを考慮すると年度末在庫量は5万7600トンに圧縮されるが、全体として高水準なのに変わりはない。
バター追加輸入4000トン
会見で生乳需給緩和下の4年ぶりバター追加輸入4000トン(生乳換算約5万トンh)に伴う影響と、異例の国会閉会後の農水省公表に関連し質問が出た。
乳製品は脱脂粉乳の過剰在庫処理が問題となっている半面、バターは特に年末のクリスマス需要前後の数量確保が課題で、同省は今回、4年ぶりの追加輸入に踏み切った。7月には入札を行い95%消化し、年末の不足感は回避した形だ。Jミルクは「天候の動向なども踏まえ生乳需給全体を考えながら、場合によってはカレント数量を追加しないことが必要だろう」と、9月の需給見通し発表も念頭に慎重な対応を挙げた。
改正畜安法の不備是正を
今後の生乳需給対応でJミルクは、二股出荷、指定生乳生産者団体外の生乳取り扱いが増大し用途別需給調整が難しくなるなど改正畜安法の課題を踏まえ「出荷先の多様化が進む中で生産者・乳業者が共同して取り組む新たな仕組みの構築」と指摘した。
2025年3月には、今後10年の酪農の姿を示す新たな酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)の議論も始まる。国も含め乳製品過剰対策の基金造成など、指定団体の一元集荷廃止で生乳需給コントロールが弱体化する中で具体的な対応が必要となっている。
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