野鳥からの侵入視野に検証 熊本の鳥インフル2014年4月24日
農林水産省は4月13日に熊本県で発生した高病原性鳥インフルエンザの侵入ルートなどを検討するため疫学調査チームの第1回検討会を23日に開いた。
今回発生した高病原性鳥インフルエンザは「H5N8亜型」で、動物衛生研究所の遺伝子解析の結果、今年韓国で発生しているウイルスと同一由来であることが22日に判明した。また、このウイルスのアミノ酸特性から、これが直接人に感染する可能性は極めて低いことも明らかになった。
この日の検討会では、熊本県へのウイルスの侵入ルートや、発生農場への侵入ルートを明らかにするため、ウイルスの遺伝子性状や現地調査結果、周辺国の発生状況などをもとに議論された。
発生当初から渡り鳥による侵入の可能性が指摘されてきたが、今回は渡り鳥が大量に飛来する季節は過ぎていることから、カモを中心とする冬の渡り鳥以外の野鳥からの感染の可能性も検討された。 気候変動などで突発的に日本に移動する野鳥が存在するとの想定だが、現在のところそのような科学的な報告は見当たらず、今後、情報収集することとされた。
◆5月には感染リスク低下
もうひとつの可能性として検討されたのが、早い時期に渡り鳥がウイルスを持ち込み、それが他の野鳥などに受け継がれて4月はじめまで存在したのではないかという見方だ。
カモなど水鳥はインフルエンザウイルスに感受性が高く、感染した鳥から排出されたウイルスが水を介して他の鳥にうつっていくが、春になれば中国大陸などに帰っていくため、感染が広がるリスクは低くなる。しかし、今回は4月に発生していることから、渡り鳥から他の野鳥に感染、それが発生農場周辺にウイルスをもたらしたのではないかという想定だ。ただ、水鳥とは異なり、陸鳥の間で感染が広がることは起きにくいという。
いずれも今後検証していくが、ウイルスが韓国発生のものと相同性が高いことから、韓国での発生状況や、渡り鳥を含めた野鳥の動向などについて韓国に情報や知見の提供を求めていくも検討する。
一方、農場への侵入ルートは、現地調査で鶏舎の防鳥ネットに穴があったことから感染した野鳥やねずみなど動物の侵入による感染の可能性もあるという。ただ、それらの侵入の形跡は発見されていないため特定は難しいというが、車両や人によるウイルスの伝播の可能性は低いという。
調査チーム長の伊藤壽啓鳥取大学教授(家きん疾病小委員会委員長)は「引き続き疫学データを集めて検討していかなければならない」と話す。
農場は引き続き警戒が必要だが、伊藤委員長は「5月になれば渡り鳥は帰っていくため感染リスクは低下する」という。
(関連記事)
・熊本の鳥インフル 韓国のウィルスと同一 (14.04.23)
・県内養鶏場に異常見られず 鳥インフル(2014.04.14)
・熊本県で鳥インフル 国内で3年ぶり発生(2014.04.14)
・千葉県で鳥インフル2例目を確認(2011.03.17)
・愛知、静岡で搬出制限解除 鳥インフル(2011.03.04)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































