動物のアフリカ・トリパノソーマ症撲滅へ パートナーシップ締結2023年9月19日
ビル&メリンダ・ゲイツ財団、英国政府外務・英連邦・開発省、ベーリンガーインゲルハイム、およびGALVmed(グローバル・アライアンス・フォア・ライブストック・ベトナリー・メディシン、ライブストック医薬品のためのグローバルアライアンス)は9月5日、動物のアフリカ・トリパノソーマ症(AAT)の撲滅に向けたソリューションを探索する新たなパートナーシップを締結したことを発表した。
AATは、脊椎動物の疾病で、牛、水牛、馬、羊、山羊、豚、犬などに影響を及ぼす。AATは、寄生原虫類のTrypanosoma congolense、Trypanosoma vivax、また、発生率は低いもののTrypanosoma brucei bruceiによって引き起こされる病気で、主にツェツェバエ(Glossina spp.)によって伝播し、アフリカでは大きな問題となっている。Trypanosoma vivaxによる感染は南米の北部でも見られ、サシバエ(Stomoxys)やアブ(Tabanid)などの刺咬性ハエによって伝播。さらに最近では、中東でも報告されている。
感染すると、感染性寄生虫が宿主動物の血液中で増殖し、発熱、虚弱、倦怠感、貧血などを引き起こす。体重減少、繁殖能力や乳量の低下につながり、死に至る場合もある。
「ナガナ」とも呼ばれるAATは、アフリカでツェツェバエの分布が確認されている地域(ツェツェベルト地帯)の5000万頭以上の牛が感染の脅威にさらされている。牛の行動や移牧、および刺咬性ハエによるT. Vivaxの伝播リスクなどからツェツェベルト地帯以外の牛への影響も考慮すると、その影響は9000万頭にも上ると推定される。また、AATによる牛の死亡は、年間300万頭と考えられている。
肉・乳生産量の減少などAAIに直接的に起因する損害と、治療やツェツェバエの防除にかかる費用は合計で年間10億米ドルを超えると推定され、農業関連の国内総生産(GDP)における損害は、アフリカの感染地域全体において年間45億米ドルにも上ると考えられる。
世界保健機関(WHO)が撲滅の対象に挙げているヒト・アフリカ・トリパノソーマ症に関しては、官民の連携関係により大きな進展が見られているが、対照的に、AATに対するコントロールは限定的なものにとどまっている。AATは、宿主となる畜種の多様性、寄生虫と媒介するハエの関係性、感染源が野生動物であることなど、多くの理由からヒト・アフリカ・トリパノソーマ症よりも複雑で管理しにくい疾病。ワクチンが存在せず、費用効果の高い診断ツールもなく、現在使われているAAT治療薬は偽造や薬物耐性の課題を抱えているなど、既存の疾病管理方法では不十分であると考えられている。さらに、AAT発生国のほとんどが発展途上国で、家畜の風土病を監視・管理するリソースが限られている。
今回、新たに発表された4者の提携は、AATに対処する新しいソリューションを見出し、提供することを目的としたもので、他の学術・国際プロジェクトと協力して研究し、AATに対処するソリューションの開発を進める。このパートナーシップでは、AATに対する新たなソリューションを2030年までに上市することを目指している。
重要な記事
最新の記事
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日
-
JA愛知信連と高機能バイオ炭「宙炭」活用に関する協定締結 TOWING2025年5月2日
-
5月の野菜生育状況と価格見通し だいこん、はくさい、キャベツなど平年並み 農水省2025年5月2日
-
「ウェザーニュースPro」霜予測とひょう予測を追加 農業向け機能を強化2025年5月2日
-
新品種から商品開発まで 米の新規需要広げる挑戦 農研機構とグリコ栄養食品2025年5月1日
-
米の販売数量 前年比で86.3%で減少傾向 価格高騰の影響か 3月末2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(1)耕種的防除を併用【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(2)農薬の残効顧慮も【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
備蓄米 小売業へ2592t販売 3月末の6倍 農水省2025年5月1日
-
イモ掘り、イモ拾いモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第338回2025年5月1日
-
地元木材で「香りの授業」、広島県府中明郷学園で開催 セントマティック2025年5月1日
-
大分ハウスみかんの出荷が始まる 大分県柑橘販売強化対策協議会2025年5月1日
-
Webマガジン『街角のクリエイティブ』で尾道特集 尾道と、おのみち鮮魚店「尾道産 天然真鯛の炊き込みご飯」の魅力を発信 街クリ2025年5月1日
-
5月1日「新茶の日」に狭山茶の新芽を食べる「新茶ミルクカルボナーラ」 温泉道場2025年5月1日