牛のげっぷ中のメタンガスを抑制 海藻の量産培養手法を開発 鹿島2024年1月10日
鹿島は、牛のげっぷに含まれるメタンガス排出量低減に寄与する海藻「カギケノリ」の量産培養手法を開発した。メタンガスはCO2に次いで地球温暖化の原因となっている気体で、カギケノリは牛などの反すう動物の餌に混ぜることで、胃の中で発生するメタンガスを抑制する効果を持つ海藻。今回、カギケノリの形状を自然に近い状態である直立形状から球状に変えることで、人の管理のもと陸上の水槽で安定的に量産できる技術を確立した。
カギケノリ量産培養の流れ
牛や羊などは反すう動物と呼ばれ、食べた物を部分的に消化した後に、もう一度口の中に戻して咀嚼している。これらの動物は4つの胃を持つが、第1胃と呼ばれる胃にいる微生物がメタンガスを作り出し、動物のげっぷを通して大気中に放出。その量は全世界の温室効果ガスの約4%(CO2換算)を占め、さらにメタンガスの温室効果は、CO2の28倍にもなるため、地球温暖化を引き起こす原因のひとつとされている。また、反すう家畜の数は世界的に増加しており、げっぷを通して放出されるメタンガスは今後さらに増えると見込まれるため、その抑制が求められている。
近年、海産紅藻(こうそう)類のカギケノリを反すう家畜の餌に混ぜて給餌することで、げっぷ中のメタンを低減できることが研究によって明らかになったが、カギケノリの量産技術はまだ確立されておらず、多くの企業や団体が研究を進めている。
カギケノリの量産培養手法
鹿島技術研究所の葉山水域環境実験場(神奈川県三浦郡葉山町)では、これまでの海洋環境保全の研究で蓄積したノウハウを基に、カギケノリの量産培養手法を開発。同手法では、まず、自然海域で採取したカギケノリの直立藻体(自然のままの姿)から、異物を取り除いて洗浄し、次に、この直立藻体を小さく切断し、水中に浮遊させながら培養することで、量産培養に適した球状体の藻体を形成させる(特許出願済み)。
同社はその球状藻体を用いて、室内容器(2L)から屋外水槽(1000L)までの量産培養に成功。今回、カギケノリの最適な量産培養条件(水温、塩分、光量と明暗周期)と培養に必要な栄養塩配合の知見を得たことで、藻類の培養効果が高く事業化の採算に合う量産培養が可能になった。
鹿島は今後、カギケノリについて、さらに経済的合理性の高い量産培養手法を検討するとともに、様々な機関と連携することで、カギケノリの大量生産を実現し、脱炭素社会への移行につなげる。
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