JAの活動 クローズアップ詳細

2019.08.08 
【クローズアップ】JAの国際協力 小林康幸・JA全中国際企画課長一覧へ

意義あるアジアへの農業貢献
香川県の取組み事例

 JAグループは発展途上国の農業振興のための農業者の組織化などの支援をさらに進め、アジア・アフリカなどの農村発展に貢献しようとJICA(独立行政法人国際協力機構)と5月に連携協定を締結した。この連携はJAグループの途上国支援にとどまらず、JA職員などが支援の体験をもとに自らの地域の課題解決にも役立てようという目的がある。JA全中の小林康幸国際企画課長に具体例を通じて、この事業の意義を解説してもらった。

ベトナム・シェンクアン県で種ニンニクの試験栽培を行う近藤氏(写真右)ベトナム・シェンクアン県で種ニンニクの試験栽培を行う近藤氏(写真右)

 令和時代最初の営業日だった5月7日、JAグループとJICAは連携協定を締結した。JAグループは長年アジア地域の農協振興に取り組んでいるが、今回の協定締結は、JA・県域(以下、JA等)が主体となってJICAと個別の覚書を交わし、JA等が海外に飛び出し、協力に取り組みながら、自組織の課題解決を同時にはかる。そのような新しい構図を作ろうとするものだ。
 「若手職員に新しいことにチャレンジする経験を」との思いからJICAとの個別連携第1号となったJA邑楽舘林(群馬県)については、「JA経営実務」9月号「全中情報」コーナーで紹介している。本稿ではその2件目となるファーマーズ事業協同組合、アグリ事業協同組合(以下「両組合」)およびJA香川県による取り組みを紹介したい。


◆JAとの連携体制 実習生を受け入れ

 両組合は、2008年に監理団体となり県内一円で農業分野に従事する実習生の受け入れを行う一方、日本人を対象に就農支援事業等も行う事業協同組合である。現在、耕種・施設園芸・養鶏等を中心に合計64戸の農業者が実習生を受け入れており、彼らはJA組合員であると同時に出資を通じて事業協同組合の構成員となっている。両組合を立ち上げ切り盛りする近藤隆氏、木下博文氏は、代々つづく地域の篤農家であり、自らも法人経営を行う一方、組織代表としてJA香川県の要職を歴任する有力な組合員である。
 「貿易自由化がすすみ、労賃の低い国々からの輸入農産物との競争が避けられない。であれば、我が方も技能実習生制度を積極的に活用し安価な労働力を導入しよう」(近藤氏談)という発想から、県内ではわが国における制度創設直後の1994年に、旧青果連が窓口となり技能実習生の受け入れを開始。この取り組みを前身に、2008年、両組合が監理団体となり、受け入れ農家が構成する外国人受入協議会の事務局をJAが担うというJAとの連携体制がスタートした。現在、両組合は「県内の農業分野の実習生受け入れれの8割程度のシェア」(同氏談)という計365人の実習生をラオス、カンボジア、フィリピン、ベトナム、タイの5か国から受け入れている。

JAの国際貢献の地図 

◆受け入れ農家64戸 JAの販売高4割

 この取り組みの地域農業振興におけるインパクトはどれほどのものだろうか。販売高380億円のJA香川県において1億円以上のJA販売高を有する組合員が33人(販売高約91億円)、同5000万円以上の組合員が85人(同127億円)いる。上から順に受け入れ農家64戸を数え、販売高5000万円以上の組合員については1戸当たり販売高に平均値を置くと、彼らはJA販売高全体の4割弱に相当する136億円(90億円+46億円)を実現する担い手である。
 昨今の人手不足のもと、労働力確保は農業経営の存続にかかわる不可欠な要素だ。両組合は、JAとの連携のもと、外国人材の供給を通じてこれだけのボリュームの担い手をグリップしていることになる。根っからの農協人である近藤氏と木下氏は、受け入れ農家に対する共販出荷の推進も忘れておらず、中には従来完全個選の農家が、9割以上を系統出荷するようになったケースもあるという。外国人材をテコに担い手をJA事業にも取り込む。両組合によるこうした一連の挑戦は、組合員起点からのJA自己改革ど真ん中をいく取り組みといえるのではないだろうか。


◆人材の確保に向け 送出機関立ち上げ

 経済発展を遂げた韓国等近隣諸国や、日本国内の他産業との間で外国人材の争奪合戦が始まるなか、両組合は、農業分野で実習意欲のある人材を確保するため、新たな手を打っている。両組合は、各国に自ら送出機関を立ち上げるとともに、JICA事業を活用することで帰国後の実習生に対する就農支援に乗り出そうとしているのだ。
 外国人材の活用には、確かにトラブルもつきものだと聞く。賃金目的に訪日を果たすや、好待遇の他産業への就業に乗り換えるべく失踪するケースは後を絶たない。多くの実習生にとって、訪日は金銭目的で行われるものであり、せめて日本語の学習機会を確保し、帰国後、日本資本の現地企業に就職しサラリーマンとして安定的な生活を送る。こうした夢を思い描く者が多いであろうことを考えると、トラブルまでいかないとしても、農業分野にやる気のある人材を見出すことは困難にも思える。
 しかしながら、アジアの途上国において農業は依然、基幹的な産業であり、農家人口も社会の大宗を占める場合が多い。これを背景に、各地には農業高校が数多く存在し、意欲ある者には農業大学等の高等教育の機会も用意されている。こうした場所で学ぶ者の中には、日本の優れた農業技術、JAを核とする地域農業振興のシステム、これらを学びたいと考える外国人材は数多く存在するはずだ。われわれが知恵を絞る必要があるのは、どうしたらそうした人材を確保し、日本にリクルートできるのか、その方法を考えることだ。両組合が設立する送出機関は、それを実現し、実習生に過度に経済的負担とならない安価な料金で十分な教育訓練を施して、実習生を香川県に送り出している。


◆現地に職員を派遣 実習生の就農支援

 さらに、両組合は、JICA事業を活用して現地に職員を派遣し、実習生の就農支援として、現地での産地づくりに乗り出そうとしている。取り組む品目は、種ニンニクとキウィ花粉である。
 香川はニンニクの上位生産県だが、現状は中国から仕入れている種ニンニクの品質が悪く、交雑しない海外産地での優良種子生産に取り組みたい考えだ。キウィは、ニュージーランドなど海外の主要生産国におけるかいよう病流行により輸入停止がなされたことを受け、苦境に立つ産地への花粉供給に向け、交雑の生じない海外産地をつくろうとするものである。
 こうした取り組みに帰国後の実習生を充てることで、彼らの生計づくりに取り組みつつ、香川県の地域農業の課題解決をはかる。双方の利害がぶつかり合わない相互補完的な関係づくりがなされるよう知恵が絞られている。
 外国人材をテコに地域の担い手をグリップし、帰国後の就農支援により、さらに実習・就労先としての魅力を高めつつ、地域農業の課題解決に役立てる。海外との関わりを手段に、自己改革ど真ん中に挑戦するファーマーズ・アグリ両事業協同組合およびJA香川県の取り組みは、非常に魅力のある好例ではなかろうか。
 今後、JAグループとしてはさまざまな経営環境、さまざまな思いから海外への関心を有するJA等を一つでも多く掘り出し、共に汗をかくことで構想を実現していきたい。関心のある方は、ぜひJA全中国際企画課(03・6665・6071)までお問い合わせをいただきたい。

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