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【インタビュー】家の光協会・河地尚之代表理事専務 文化の力で協会の価値向上を2021年7月19日

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(一社)家の光協会は6月の通常総会で役員改選を行い理事会で代表理事専務に河地尚之氏(前常務理事)を選任した。就任にあたっての抱負と当面の取り組み課題などを聞いた。

家の光協会・河地尚之代表理事専務家の光協会・河地尚之代表理事専務

--コロナ禍の収束が見えないなかでの就任、改めて抱負を聞かせてください。

4年後の2025年に『家の光』創刊100周年を迎えます。読者やJAのみなさん、その他関係者の方々の長い間のご支援でここまで続いてきたということになります。これからも110年、120年と『家の光』の発行を中心として当協会を持続可能性の高い団体にしていかなくてはいけないというのがいちばんの思いです。

そこで私なりに考えたのは3つの「カ」です。1つ目は「稼ぎ」の「カ」です。やはり経営体としてどう収入・収益を上げるかが課題であり、経営環境が厳しくなっているなか『家の光』を中心にした媒体の部数をどう確保していくのかは、経営者として最優先に考えなければなりません。

2つ目の「カ」は「価値」です。JAグループ内部はもちろん、社会全体のなかで家の光協会の存在価値をこれまで以上にどう高めていくのかということが重要だと考えています。

そして3つ目の「カ」は当協会で働く職員の「活力」です。当然、稼ぎが増え、価値も高まれば職員にやりがいが出て活力も高まるでしょうし、逆に職員の活力が高まれば稼ぎも増えるといった相乗効果もあると思います。

この3つの「カ」を意識して、コロナ後を見据えた持続可能な経営をどう確立するかということが大前提になると思います。

--「価値」を高めるという点では家の光協会の重要なJA支援の取り組みであるJA教育文化活動が期待されます。

協同組合への理解を深め、JA運動を発展させるための教育文化活動を進めていくのが、われわれの大きな使命の1つです。そのやり方や具体策のレベルをどう上げていくかが課題になると思います。

JAグループでは現在、経済事業、信用事業などで多くの課題があると思いますが、やはり多様化する組合員にどう対応するかが重要な課題だと思います。組合員の高齢化が進み年齢層が多様になっていますし、正組合員にも担い手経営体から自給的農業者までいたり、一方で准組合員といってもJAに対して意識の高い人もいます。

こういう状況のなかでより多くの組合員との関係をどう築くかということが大切になりますが、そのためにJA教育文化活動が大事になっているということだと思います。

実は平成28年度に有識者やJA関係者にも参加してもらって教育文化活動についての検討委員会を設置し、今日的な教育文化活動のあり方について議論してもらいましたが、やはり多様化する組合員にどう対応するかがテーマとなりました。

結論は、組合員のJAとの関係性の濃淡による段階に応じた教育文化活動が肝要で、その取り組みのなかで次第に関係が強固になればいいのではないかということでした。その段階のキーワードは「認知」(JAのことを知る)「利用」(JA事業を利用する)「参加」(JAの諸活動に参加する)、そして「参画」(JAの運営に参画する)です。

また、JA教育文化活動には「教育・学習活動」、「情報・広報活動」、「生活文化活動」、「組合員組織活動の育成活動」の4つの領域があり、それぞれに家の光事業がどう関われるかが課題です。とくに自己改革の取り組みのなかで対話運動を展開してきましたから、その観点からすれば「教育・学習活動」の「学習」、つまり、学び合うということが大切になると思います。

組合員がJAや協同組合のことを学ぶということはもちろん大事ですが、JA職員も組合員とともに農業や地域のことを学び合う、あるいは教え合うということが必要ではないかと思います。「情報・広報活動」でもJAから伝えるだけでなく、組合員からの情報をJAに伝えるということでもあります。組合員と職員がお互いに教え合う、学び合う、伝え合うというように「○○し合う」という関係が対話につながっていくのではないか。「生活文化活動」の中には女性部活動の料理教室などもありますが、これは学び合うだけでなく楽しみ合うという要素もあります。そういう取り組みで組合員力も職員力も高まる。そうした場面、場面に『家の光』等を活用していただければと思います。

--3か年計画の最終年度の今年度はJAの自己改革の取り組みを媒体の特性を生かした情報発信で支援することなどが重点事項となっていますが、具体的にはどんな取り組みですか。

これまでは『家の光』で「自己改革 白熱講義」を連載し、昨年の12月号からは名称を変えて「自己改革 現場からの風」として現場のJA関係者の思いを伝えてもらうページもつくっています。それから、JAのことを理解してもらうため「JAビギナーズガイド」も連載が始まりました。付録も時には2分冊化してそのうちの1冊はこれまでどおり実用情報などを取り上げますが、もう1冊はJAや協同組合に関する内容にすることもあります。9月号はまさにJA全国大会を10月に迎えるわけですから、全国大会に関連する付録を作っています。このように本紙の連載企画や別冊付録などで的確な情報発信に努めているということです。

一方でJA教育文化活動に活発に取り組んでいるJAの事例集をこれまでに何冊も作ってきましたが、昨年の春からはウェブサイトでも見られるようにしており、少しでも多くの事例を収集しているところです。

--都市部の女性を対象にした食と農の情報を発信する「あたらしい日日(にちにち)」を6月に立ち上げました。この狙いは何でしょうか。

これはJAグループが進めている食や農への国民理解の醸成の一翼を担うということと、収益を生み出すウェブ事業に本格参入しようということです。具体的にはさまざまなニュースサイトなどいろいろな外部配信先に毎日、食や農、環境などに関する記事を配信していこうと考えています。おもなターゲットは都市部の20代から40代の女性を意識し、とくにコロナ禍で注目されてきた新しい暮らしに関する情報も出していこうということです。

今後の課題になりますが既存の媒体もデジタル情報の発信で相乗効果を発揮することができればいいと考えています。将来的にデジタル分野での事業展開は避けて通れず、今回の「あたらしい日日」はその第一歩です。

--改めて家の光事業がめざすことをどう考えますか。

かつて家の光協会はキャッチフレーズで「文化と協同の力」を掲げていました。とくに「文化」という言葉は、協会の事業と切っても切れない関係にあります。

もちろん文化とは何かということへの答えは人によって違っていいと思いますが、やはりこの文化の力をたいせつにしたいと思います。文化にはもちろんこれまで積み重ねられた歴史という要素もあるでしょうし、今日的な若い人たちの考え方や行動様式も文化だと思います。経済活動はもちろん重要ですが、文化の力によって人を幸せにするということが大事だと思います。

私自身、学生時代から文化という言葉をずっと意識してきたのかなと思います。文化とは何か、答えは簡単ではありませんが、われわれに関係するものでは、農村文化、食文化、出版文化が身近にあり、その正しい理解や次代への継承が重要なことだと思います。

最近の農政の方向でも新たな農村政策や、みどりの食料システム戦略、女性の農業での活躍推進なども打ち出されています。われわれとしてもこうした動きやJA全国大会組織協議案を横目で睨みながら、地域、女性、さらに健康という視点も大事にしながら情報発信をしていかなくてならないと考えています。それがわれわれの存在価値を高めることにもなると思います。

(かわち・たかゆき)1959(昭和34)年10月生まれ。青森県出身。筑波大学比較文化学類卒。1983(昭和58)年入会。総務本部総務部長、総務本部長などを経て2015(平成27)年常務理事。

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