【協同組合懇話会講演から】国際金融資本を討つ 日本の植民地化防げ 吉原毅・元城南信用金庫理事長2021年12月16日
協同組合組織のOBなどでつくる協同組合懇話会は12月13日、都内で2021年度「納めの会・記念講演」を開いた。城南信用金庫元理事長の吉原毅氏が「これからの協同組合の役割」について話した。同理事長は、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに「原発ゼロ」の取り組みを始めるなど、環境問題と協同組合の精神を踏まえた独自の経営哲学を唱えていることで知られる。講演の要旨をまとめた。
吉原毅 元城南信用金庫理事長
公共的な仕事がしたいと思い信用金庫に就職しました。当時、信用金庫のドンと言われた城南信用金庫のトップ、小原鐵五郎に仕えました。そこで「銀行に成り下がるな、信用組合や協同組合には公共的な使命がある。利益を目的とする組織ではない」という経営の哲学を学びました。年末には31日の夜遅くまで集金するという仕事でしたが、最後に「ありがとう。今年もお世話になったね」という感謝の声を聞き、信用金庫の仕事に誇りを持っていました。
ある時、小原鐵五郎が古いレコードを持ってきて、この歌を聞くようにと言われました。それは産業組合の歌でした。西城八十作詞ですが、若いころは歌の意味がよく分かりませんでした。しかし後になって、とても素晴らしい内容だと分かりました。
農林漁業や商工業という産業の枠を超えて共存同栄という理想のもとに集まり、相互扶助よって時代の荒波を乗り越え、愛の力で理想郷を築こうという内容でした。
当時、信用金庫の役員には目的意識のない人が多くいました。小原鐵五郎の精神が生きていなかったのです。その理由は、銀行の真似して堕落してしまったからだと考えました。そこで、2010年の理事会で緊急動議を出して役員の退陣を求め、私が理事長をやらせていただきました。その後、社会貢献のために信用組合はあるのだということを前面に出して経営してきました。
ところでお金とは何でしょうか。私は麻薬と同じようなものだと考えています。お金は「貸すも親切、貸さぬも親切」と言われてきました。特に遊興費などの無駄な借金はするべきではありません。従ってクレジットカードはだめです。人はお金に弱いものです。
お金と農産物は同等
かつてお金は米などの農産物でした。お金は、(1)モノの流通・交換手段(2)価値保存(3)価値尺度機能の三つの機能があります。お金は「せこい考え」の時、生まれるものだと私は考えています。
狩りや漁で得た獲物は、コミュニティーのみんなで平等に分けたのが原始社会です。そこへ珍しい品物を持った〝商人〟来て、交換を求めると、獲物を持った人は、みんなに分ける前に交換してしまいます。それが広がって交換を媒体する貨幣が生まれ、それをため込むことができます。その結果、コミュニティーは壊れてしまいます。
三つ目の価値尺度は、数字で損得が計算するようになることです。数字で人の価値を判断するようになると、人を、自分の利益のための道具として見るようになります。エゴイズムの台頭です。それを助長したのが貨幣です
文明は発達したものの、一方で戦争、犯罪の増加などエゴイズムが拡大しました。いわば貨幣は文明の宿痾(しゅくあ)のようなものです。それを何とか抑えようとしたのが法律や宗教です。仏教は自意識を捨てるようにと言い、人は一人で生きているのではない。全て関係性の中で生きているとしました。ソクラテスは「善とは何か」を問い。孔子は「仁」を説きました。
悪魔的な資本主義
中世を経て、貨幣は文明をリードしましたが、一方で対立をあおりました。そして悪魔的な資本主義経済に突入したのが産業革命以後の株式会社の時代です。株式会社は金を集め、国策会社として世界に乗り出したのです。英国は紅茶貿易からアヘン貿易に乗り出し、マーケットを拡大しました。
日本もターゲットでした。戊辰戦争で英国は薩摩藩、長州藩に肩入れし、留学生を受け入れて幕府を倒しました。このやり方はエリート層を受け入れてその国を支配させたローマ帝国と同じやり方です。そうした英国の背後にいたのがロスチャイルド家などの国際金融資本です。日露戦争で一番もうけたのは、日本の戦債を引き受けた国際資本です。
明治維新見直すとき
幕末・明治の戊辰戦争でも暗躍しました。徳川慶喜はそのことを知っており、国内で争うことがいかに危険かを知っていたのです。城南信用金庫創業者である加納久宜は、元上総一宮藩の藩主だったので幕府系の信用金庫だともいえますが、いま新しい視点で、薩長史観の明治維新を見直す必要があると思っています。
その資本が現在も国際金融を牛耳っており、日本に対しても貿易の自由化や農地法、水道法の改正などによって農地や水に対する支配を強めています。先の種子法改正もその一つです。油断していると日本の植民地化が一層進みます。
そうしたなかで、まともな暮らしをするために協同組合は欠かせません。エゴイズムを助長する資本主義は自分のことだけ考える思想です。そうではなく、大事なことはみんなで話し合って共通点を探し、みんなが幸せに暮らせる世の中をつくることです。協同組合にはその使命があります。
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