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【JA全中・中家会長インタビュー】基本法見直しへ「多様な経営体」強調 適正価格は「再生産確保が大前提」2023年5月24日

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政府の食料・農業・農村基本法の見直し論議が大詰めを迎える中で、JA全中の中家徹会長が独自インタビューに応じた。焦点の現行基本法の担い手条項に関連し「多様な経営体」位置づけを強調、自民党の提言案を評価した。適正な価格形成では「あくまで再生産確保が大前提」と指摘した。さらに、8月に会長任期を迎えるが、自ら命名、提案した「国消国産」に確かな手ごたえを述べた。(聞き手は農政ジャーナリスト・伊本克宜)

JA全中の中家徹会長JA全中の中家徹会長

G7でも食料危機共有、担保する予算確保が必要

――ウクライナ戦争に伴い食料安全保障論議が再燃し主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)でも地球規模での食料危機がテーマの一つとなり「食料安保行動声明」も出ました。

野村哲郎農相の下で先のG7農相会合でも議論が深まった。気候変動に加えウクライナ問題も大きな契機に、基本法見直しと絡み国内農業の生産増大を大前提とした食料安保構築が問われている。G7広島サミット議長の岸田文雄首相自らも食料安保、食料自給率の重要性を強調している。国際的な食料需給混乱、肥料、飼料をはじめ生産資材価格の高止まりなど、国内農業者にとっては厳しい経営環境が続く。「ピンチをチャンス」にとらえ方を変え、農政見直しと軌を一にして生産基盤確立、国内農業支援強化、自給率向上に結び付けていくことが欠かせない。

その際、特に重要なのは生産基盤強化を中心に食料安保を担保する予算の確保だ。大綱に沿って毎年予算化されるが、基本は補正などではなく当初予算案から十分な額を盛り込むべきだ。

「多様な経営体」が地域守る

――基本法見直しが大詰めです。担い手の位置づけが大きな焦点ですが、JA全中と全国農政連主催の先日の全国大会でも、与党農林幹部からJAグループ要求に賛同する声が上がりました。「担い手条項」である現行基本法21、22条の是正が問われますね。

担い手論議は、農業の持続的発展を柱に「地域をどう守るのか」という視点こそが大切だ。いわゆる「担い手条項」の具体的書きぶりがどうなるかは分からないが、今のような大規模経営、認定農業者偏重だけで地域は守れない。現実を直視すべきだ。大規模担い手育成の産業政策と、「半農半X」なども含む幅広い中小・家族経営を包み込む「多様な経営体」といった地域政策を車の両輪にすべきだ。自民党提言の「多様な農業人材の育成・確保」はこうした考えに沿ったものと理解している。

効率一辺倒農政は限界

――全国大会で自民党内の食料安保再構築を主導する森山裕元農相は「新自由主義からの転換」を強調しました。これまでの担い手偏重、貿易自由化が先行した農政の反省と、生産現場に立脚した政策確立を求めたものです。

あまりに競争力重視、効率化を優先してきた側面がある。効率一辺倒はすでに限界にきている。産業政策と地域政策の均衡が重要だ。そのことが、少子高齢化が進む中で地域の振興、国土のバランスある発展につながるのではないか。野村農相も「農政のターニングポイント」を唱えている、過度の輸入依存からの脱却、自給率向上へ効率一辺倒からの切り替えが問われる。まさに新自由主義的な農業政策からの転換だ。農地利用を通じ地域農業の将来を話し合う「地域計画」にも「多様な経営体」は位置づけられている。

農業団体の社会的役割も強化

――一方で基本法見直し論議は国民レベルでは盛り上がりに欠けているのが実態です。経済格差、貧困が深刻となる中で、社会問題に対応した農業団体による食と農の役割をもっと国民にアピールすべきではないですか。全国大会で稲津久公明党農林水産業活性化調査会長からフードバンク支援も指摘されました。

食と農で農業団体の社会的役割は大きい。各JA段階でもさまざまな取り組みを実施している。JAグループ政策提案ではフードバンクや子ども食堂支援強化、新たな食料支援策、円滑な食品アクセス確保などを盛り込んだ。国内農業への国民理解促進のためにも内外にさらにアピールしたい。学校給食などの国産食材など国産農畜産物の消費拡大も欠かせない。

地域振興に欠かせないJA

――2015年前後の「官邸農政」による急進的な「農協改革」の根拠の一つとなった現行基本法による農業団体などの位置づけも問われます。

現行基本法では団体の再編整備のみ記載されている。だが実際は、関連団体と連携し地域農業振興に向けJAが中心的役割を担っている。基本法見直しでは、農業団体が食料・農業・農村振興に果たしている役割明記が必要だ。

持続的生産が大前提「誰にとって適正なのか」

――コスト増加などを反映した農畜産物の適正な価格形成で自民党提言も踏み込んだ表現となっています。ただ実現には、スーパーなどの価格支配力が強く品目などで曲折も想定されます。

適正な価格形成論議の背景には、農畜産物がコスト増を反映できていない現実がある。関係者で価格形成の協議の場を作ることは極めて重要だ。一方で産地実態などもあり、品目は一定数に限られる可能性がある。

問題は価格水準が誰にとって「適正」なのかということだ。生産者、消費者、あるいは処理業者、販売店などで立場は異なる。指摘のように、販促を目的にスーパーなどの値下げ圧力も強い。半面で、川上の生産者にとっては再生産可能な価格水準確保が必要だ。それが担保されなければ持続可能な地域農業は成り立たない。そこで、再生産に配慮した新たな価格形成の場創設とともに、肥料高騰などコスト高リスクを補う経営安定対策の強化を組み合わせた対策が欠かせない。

「みどり戦略」と環境ポイント制

――基本法見直し論議は、国の進める「みどりの食料システム戦略」との関連がはっきりしません。農水省が「農政グリーン化」と言うなら環境重視と直接支払い拡充などのリンクが欠かせないはずです。

確かに、今回の基本法見直しと環境調和型農業の関連は分かりにくい。ただ今後、国の「みどり戦略」に沿って環境負荷軽減の取り組みが生産現場で広がってくるのは間違いない。現状で有機農業がなかなか広がらないのは収益性が低いからだ。消費者に納得してもらいながら、品代+環境負荷軽減の二つの価値を販売価格にどう反映していくのか。一案だが環境ポイント還元などで消費者の購買行動変容を促していく工夫も必要となるだろう。

米備蓄水準は「安保の根幹」

――食料安保は国内生産に加え、備蓄、輸入の適正な組み合わせが必要です。財政面から政府米備蓄100万トンの見直しも浮上しています。食料安保構築に逆行しませんか。

食料安保強化の観点から、備蓄米の現行水準を維持すべきだ。保管コスト、飼料向け経費などにかかる財政負担を軽減すべきと指摘する向きもあるが、主食である米の備蓄は食料安保の根幹でもある。

酪農家間の不公平感ない制度運用

――地域農業の重要な担い手である酪農は、セーフティーネットが脆弱で離農が加速しています。改正畜産経営安定法施行に伴い生乳需給機能も弱体化し見直しが急務です。

酪農は離農が加速して大変懸念している。生乳需給緩和を受け組織を上げ牛乳消費拡大を応援している。乳価交渉での価格転嫁も欠かせない。また、指定生乳生産者団体傘下の酪農家と、そうでない酪農家との不公平感が生じないようにしなければならない。

国レベルの自給率向上へ「国消国産」

――逆風が吹き荒れた萬歳章会長時代に全中副会長を務め、8月18日の全中総会で2期6年におよぶ全中会長を退任します。会長自ら提案した「国消国産」は全国運動に発展しました。

広く浸透している「地産地消」の言葉から、国レベルに置き換えた「国産国消」とされることもあるが、造語である「国消国産」は意味合いが全く違う。それは食料自給率向上にポイントを置き、国民運動を呼び掛けた点だ。
国民が消費する食料、農畜産物をできるだけ国産で賄う。そんな「国消国産」の輪が広がれば、自給率アップにつながる。むろん、同時に国民に食料供給を実現する国内農業の体制強化も必要だ。担い手育成、優良農地確保など食料自給力の維持・強化とも表裏一体だ。「国消国産」は、JAグループ挙げた全国運動として着実に実践、浸透してきたのではないか。

「農協運動者たれ」宮脇会長の薫陶胸に

――最後に、全中中興の祖であり、中家会長の師・宮脇朝男元全中会長生誕から111年となります。全中の一般社団化から間もなく4年。薫陶は今の活動・運動に脈々と受け継がれていますか。

中央協同組合学園1期生として当時の宮脇全中会長から強い感銘を受け、現在の自分もある。宮脇語録の中で「全中は戦場にはためく戦旗であれ」も頭に浮かぶ。中組学園卒業時に全中で仕事をしたらどうかと言われたことを思い出す。結局、少しの期間全中にいて、地元・和歌山に戻った。やはり「農協運動は単協から」との思いが強かった。宮脇さんの常に言った「農協運動者たれ」の実践の場でもあるからだ。

以前の「農協改革」の過程で全中は農協法から外れ2019年秋に一般社団化した。だが、やる根幹は変わらない。組合員、JAの声を聞き、それに対応していくことだ。組織の意向を代弁しJAグループの先頭に立つ。全中の役割はさらに大きくならなければならない。

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