寄り添う社会が鍵 横浜・福祉クラブ生協でJA経営ビジョンセミナー2023年8月18日
地域に開かれた活動ワーカーズコレクティブに学ぶ
組合長などJAトップ層の役員を対象にしたJA経営ビジョンセミナーを開催しているJA全中は、今年度最初のフィールドワークによるセミナーを、7月12、13日に横浜市を拠点に活動する福祉クラブ生協で開いた。同生協は共同購入と福祉を一体化した組織で、地域の課題解決のため活動する100を超えるワーカーズコレクティブ(労働者協同組合)がその基盤になっているところに特徴がある。特に少子高齢化、人口の減少が進む中で、協同組合は地域の課題やニーズをどのようにしてつかみ、解決するかが議論になった。
員外含め役割に目を

福祉クラブ生協の介護実演(横浜市で)
住民とともに地域の未来像を 【菅野孝志・JA全中副会長】
セミナーでJA全中の菅野孝志副会長は、農業・JAの変化をもたらす要因として、①人口の減少と高齢化②DX(デジタルトランスフォーメーション)社会の深化③地球環境問題への対応――を挙げる。これに伴い、農村回帰、半農半X、さらに世界的な人口増やウクライナ戦争に伴う食料危機など、農業・JAにとって〝追い風"もみられるなか、「これからJAと地域の将来像が作れるかが問われる。まちうち(街内)と一緒に地域の農業の未来像を模索するときがきている」と、組合員以外の住民を交えた地域づくりの重要性を指摘した。
また、ワーカーズコレクティブについては、労働者協同組合法の目的を紹介し、「重く感じる。農協も生協なども、かつてそうではなかったのか」という。労協法の第1条には「多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」とうたっていることを紹介した。
他人任せにせず自分たちの手で【大場英美・福祉クラブ生協理事長】
福祉クラブ生協は、この労協法の趣旨にそった活動を展開してきた。1989(平成元)年、団塊の世代が後期高齢期を迎える2025年問題を見据え、全国初の福祉専門生協としてスタートした。「少子高齢社会、公共サービスの限界、地域コミュニティーの崩壊などの問題に対し、他人任せにせず、自分たちの手で、協同の力で解決しようという願いで設立した」と、同生協の大場英美理事長は設立の動機を説明する。
具体的には、高齢になっても、障がいがあっても住み慣れた地域で暮らし続けることをめざし、同じ地域に住む組合員同士が困ったときはお互いさまとして、みんなが参加する助け合い活動を行う。同生協では、これを「みんなでつくる地域最適(コミュニティーオプティマム)福祉」として展開する。
そのため、①宅配による共同購入②健康医療ネットワーク③施設ネットワークの三つの事業を柱に行う。つまり福祉クラブ生協は宅配による共同購入と、在宅を基本とする高齢者福祉をドッキングさせた生協だ。
週1回の配達(個配)は組合員が行うが、これが高齢者や独り住まいの人の安否確認の機会になる。同生協では、定期的な見守りを約束する配達こそ福祉と位置付けている。こうした活動はほとんどが自主的参加のワーカーズが担っており、求められれば家事介護や通院の送迎なども行う。
こうした活動をするワーカーズコレクティブは16業種118団体におよぶ。共同購入をはじめ、福祉施設、利用サービスなどに約3100人のワーカーズが働いている。また、現在、同生協は27自治体行政区、組合員数約1 万6500世帯で、総事業高約43億4500万円。うち共同購入が27億4000万円で6割強を占める。
JAのコミュニティー活動さらに【グループワーキング】

熱がこもったグループワーキング
グループワーキングでは、福祉クラブで生協の実践を参考に、「なぜ福祉クラブ生協は地域の課題、組合員のニーズを把握できるのか」「JAで出来ることと出来ないことは何か」「広域化が進むなかで、自らがやるべきことは何か。そのために具体的にどのような点に着手していくべきか」などをテーマに意見交換した。
参加者からは、ワーカーズの自主的な参加と活動の範囲の広さに関心が集まった。個配とあわせた見守り(安否確認)は、JA版の「対話運動」に類似するものだが、「対話運動は訪問の目的がはっきりしない」との指摘があり、個配という目的をもった福祉クラブ生協の強みが明らかになった。
また地域づくりに関しては、福祉クラブ生協のコミュニティー活動を評価する声が聞かれ「組合員だけでなく、福祉など、員外も含めた活動が必要」との意見があった。
コーディネーターを務めた静岡県立大学情報学部の落合康裕教授は、「JAのステークホルダーは組合員だけではない。JAが中心になって、ワーカーズコレクティブのような活動を、どのようにつくっていくかが課題だ」と、ボランティアを含めた自主的参加によるコミュニティーづくりの必要性を強調した。
またセミナーの基調講演でJAのビジョンづくりの重要性を指摘した慶應義塾大学の奥村昭博名誉教授は、地域生活支援を重要な役割としてとらえる。「社会をよくすると地域がよくなる、地域がよくなるとJAがよくなる」と、JAの範囲にとどまらず、グローバルな視点によるビジョンづくりを訴えた。
なお、この「JA経営ビジョンセミナー」は令和5年度5回予定しており、今回はその第1セッションとして開いた。
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