【現地レポート】JAの水田農業戦略 「東川米」の国際ブランド化めざす JAひがしかわ(2)2024年3月19日
主食用米の国内需要が継続して減少していくなかで、地域の水田を維持し農業を持続させるため生産から販売までのJAの戦略が期待されている。今回は米の輸出事業に取り組んでいる北海道東川町のJAひがしかわを取材した。
【現地レポート】JAの水田農業戦略 「東川米」の国際ブランド化めざす JAひがしかわ(1) より
一方で将来の水稲生産者の減少は避けられない見通しもある。現在の水稲生産者131人は2030年には90人となると想定している。
約2100haの水田を維持していくには1人当たりの耕作面積が25ha以上になると見込まれ、省力化が課題となる。
こうしたさらなる大規模化を見越して国の事業を活用して取り組んでいるのが水田の大区画化だ。現在の小区画(30a)のほ場を7枚合わせて1区画、約2・2haとする国営事業の工事が2017年から開始されており、現在まで約4割のほ場が完了した。同時に畔の幅を農業機械が走れるよう約5mに造成し、水路は畔の下にパイプラインとして通す構造にしている。これによって田植えから収穫まで作業時間は30%減少したという。今後はドローン防除や自動コンバイン機の導入などスマート農業の導入も検討していく。
もみで荷受け農家の負担減
もうひとつ、生産者の負担軽減とJAの販売力強化につながると期待されているのが「ひがしかわライスターミナル」だ。これまでは個々の生産者が米の乾燥を行い玄米にしてJAに出荷していたが、このターミナルではほ場で収穫したもみを荷受けする施設を備える。さらに乾燥、もみ摺り、そして精米まで行う。
6月稼働予定の「ひがしかわライスターミナル」。写真は精米棟
ターミナルは6月稼働の予定で今年は3600tの精米販売を予定している。
同JA営農販売部の髙橋賢部長は「JAが精米事業を取り組むことにより新たな商流が生まれ、組合員の収益増につながる。持続可能な農業が実践できる環境を整えていきたい」と話す。現在は海外と地元を中心に商談を進め、精米施設の稼働能力をフルに生かせられる販売数量が確保できたという。
髙橋賢部長
このターミナルは輸出強化への拠点ともなる。精米での輸出には輸送中の品質維持が課題となるが、ここには高温の蒸気で殺虫、殺菌する高度衛生良質米製法を導入する。これによって害虫の殺虫、殺菌、さらに精米の鮮度低下を抑制することになるという。そのほか米の栄養価を残す精米製法も導入する。
同JAは2022年に持続可能な東川農業の実現をめざす「ひがしかわアグリ2050宣言」を発信し、組合員が積極的に脱炭素化や有機農業に取り組むことなどを表明した。
こうしたグリーン農業の実現に向けて今年度は堆肥利用計画の策定や堆肥供給施設の建設などに着手する。25年度は米や野菜の主要品目について新生産基準や栽培基準、統一GAPリストの作成などを行い、26年には化学農薬使用量50%低減、化学肥料使用量20%低減をめざす。
牧組合長は「ライスターミナルの稼働は玄米供給ではなく、JAが米を食品として販売すること。付加価値を付け、その利益を組合員に還元していく。それが生産基盤の強化につながる」と話すとともに、今後について「持続可能な農業をどう実現していくか、組合員としっかり対話し職員も認識を共有し連携していくことが大事だ」と意気込みを語っている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日