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2015.07.21 
直売所事業で「自己改革」 人づくり研究会一覧へ

第23回研究会

 全国のJA常勤役員らで組織するJA人づくり研究会(代表=今村奈良臣東京大学名誉教授)は7月10日、東京・大手町のJAビルで、「JAの自己改革を成し遂げるために、今なすべきこと」をテーマに第23回研究会を開いた。JAえちご上越、JAおうみ冨士、JA横浜の改革への取り組み報告をもとに意見交換した。

◆地域農業は「地産地消」で


JAの自己改革で意見交換する参加者 安倍政権によって「農協改革」が推し進められているが、全国には地域に根差し、地道かつ着実に協同組合活動を展開しているJAが少なくない。こうした事例を踏まえ、研究会は地域と組合員のために協同組合として存続するには今、何が必要なのかを探った。


◆雪国のハンディ克服


 JAえちご上越は、園芸を定着させるため、直売所を拠点に、雪国というハンディーを克服し、地域農業の基盤づくりを軌道に乗せた。雪国における直売所運営の課題は、冬場の商品確保どうするかにある。
 これを同JAは「雪下野菜」で乗り切った。野菜は雪の下にあると糖度が増すという特徴がある。キャベツ、ダイコン、ハクサイ、ネギ、ニンジンの5品目を選定して栽培を奨励。3年間で、売上げを320万円から1000万円超まで伸ばした。「雪下畑の仲間たち」の名称で商標登録し、雪国のブランド野菜確立を目指している。
 販売の核となる直売所は「旬菜交流館 あるるん畑」。平成18年に開店したが、品不足→来店客の減少→売上げの減少→出荷量の減少→品不足の悪循環が続いた。
 これを断ち切るため始めたのが直売所らしいイベント。つまり客を呼ぶことで売上げを増やし、出荷量を増やそうという作戦だった。山菜フェア、夏野菜フェスタ、お盆フェアなど、毎月何らかのイベントを仕組み、25年度のイベント数は大小合わせて56回に達する。
 これによって、直売所の年間売上げは3億円、5億円と順調に伸び、回転8年目の25年度は6億円を超え、県内のJA直売所でトップクラスになった。その間、園芸生産部会など生産組織の代表、行政の指導機関などによる「エッサ会議」を立ち上げ、園芸振興計画を立てるなど、関係者の意思統一をはかった。
 報告した同JA園芸畜産課の岩崎健二課長は「直売所やJAが取り組んできた有利販売の実績を農家に示して農家のやる気を引き出し、生産物をJAがしっかり売り切り、農家手取りを増やす。この積み重ねが地域農業の発展と地域の地域活性化につながる。これがいま問われているJAの自己改革だ」と、販売力強化の必要性を力説した。


◆食と農の一大拠点に


 JAおうみ冨士の改革も直売所を拠点とした地産地消の取り組みだ。ファーマーズマーケット「おうみんち」は2008年にスタートした。その特徴は「マルチ機能店舗」にある。産地形成促進施設、農産物直売所、地域食材加工施設、バイキングレストラン、交流施設などの機能をあわせ持つ。
 報告したJAおうみ冨士食育園芸部の川端均部長は、地産地消費のあり方として、「つくる」「食べる」「つなぐ」をキーワードに、食農・食育・農育、作る・造る・創る場として位置付け、ITC(情報・通信技術)を活用した人のつながりが重要だと指摘。
 この考えで、消費者交流の一環として「青空フィットネスクラブ」を開催。登録者は農業体験やイベント、郷土料理の試食会、料理教室などに参加できる。
 まただれでも参加できる「畑の直売所」の開設、地元の野菜を出張販売する専用自動車「KOKOUMA」(ここうま)の運行など、地産地消に関係するあらゆる事業を展開する。
 生産サイドもさまざまで、通いの農業者や「アグリ同窓会」など、個人、グループや多様な「担い手」が参加。川端部長は「農の、農村の、農業が、農業者で」による『が・で・の』での『農』を軸にした地域農業のビジョンを描いている。


◆370万人の市民味方に


 JA横浜市は、大都市の中で総合農協の特質を生かして都市農業の振興や協同組合活動に力を入れている。特に身近にいる消費者である市民約370万人を味方に、独自の販路開拓に取り組む。
 その主なものは、1、生産農家なら誰でも参加できる一括販売、2、JA直営拠点「ハマッコ」直売所の展開、3、市内量販店と提携した直販事業・インショップの展開などである。
 一括販売は、農家の生産したものは量目を問わず扱う。また「ハマッコ」直売所は50~100平方メートルの小規模な直売所を地域全体にくまなく配置。多様な販路を確保して消費者との接点を増やし、規模の大小にかかわらず、経営の自在性を発揮させようとするもの。
 従って同JAの「担い手」は、年齢、性別、経営形態にこだわらず、地域の実態に合った経営モデルをつくり、それぞれの特性に応じた支援を行う。またその支援は営農指導、組織相談、販売・購買、信用・共済と、JAの関係するすべての事業を挙げて行う。
 またアグリサポート事業も展開。農業従事者の高齢化等による不耕作地の拡大を防ぐための営農ヘルパー、営農ボランティアによる営農支援で、主に市内の准組合員に参加を促す。こうした取組みを「准組合員を担い手とした新しい協同活動」として位置付けている。
 従って、准組合員の利用制限はまさに農協の死活問題となる。報告した同JAの波多野優常務は「都市農業を准組合員自身にも理解してもらうことが重要。そのために方策を実施したい」と言う。


◆准組合員区別は疑問


 石原健二・立教大学元教授の「JAは自己改革できるのか」の問題提起の後、参加者が意見交換した。石原氏は農協の発足と戦後の経過に触れ、「政府の農協改革は、国の下請け機関としての農協は不要になったからだと指摘し、「その認識をしっかり持って対応しなければならない」と話した。
 意見交換では、准組合員への対応が焦点になった。農協法を農地とリンクさせて正・准組合員を分けたことが問題だとして、「区別をなくすか共益権を与えるべきだ」という意見の一方で、共益権を准組合員に認めると「農協組織が崩壊する」との指摘もあった。
 集落営農を設立したところでは、農業をやめたので准組合員になりたいという人が出ており、利用制限されると組合員でなくなり、「元からの組合員が減る恐れがある」と心配する意見も。また「組合員は出荷者であり、利用者でもある。同じ仲間だ」として線引きすることに疑問を投げかける声もあった。
 また「政府は農業のことしか考えていないが、JAは地域を守る役割がある。このことを組織あげて主張すべきだ」「このまま手をこまねいていると農協は潰される。政府の農協改革にどう対応するのか、議論が必要だ」などの意見があった。


(写真)JAの自己改革で意見交換する参加者

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