農協の役割 重要 日韓農業・農村研が韓国でシンポ2015年9月18日
6次産業化で日韓交流
NPO法人日韓農業・農村文化研究所はこのほど、韓国全羅南道靈巖郡の西靈巖農協で農業の6次産業化についてシンポジウムを開いた。同研究所は30年前から、ローカルフードと6次産業化を推進してきた日本の事例を紹介しながら、韓国農業の6次産業化の発展の方向を集中的に模索しており、出席者は高い関心を示した。テーマは「身土不二と地産地消」。第1部が「高齢化と農協の役割」、第2部が「農業の6次産業化とローカルフードの課題」、そして第3部で総合討論した。(郭重燮・韓国名誉特派員)
第1部では小田政治NPO法人日韓農業・農村文化研究所理事長(JA広島県農協中央会常務理事)が、「超高齢社会での農協の役割」、高崎義行広島修道大学教授が「日本農村社会の変動と農業・農村関連政策の展開」について主題発表した。
小田理事長は、「日本の農協(JA)は、全国1万8000か所を拠点に3万人の営業担当者と1万5000人余りの営農指導員を通じて販売・購買・営農指導事業を展開して地域社会に貢献している」と紹介した。
また「日本の農協は、行政や企業にはない多数の地域事務所と、総合事業・組合員組織の活動という強みを活かし、農業者の営農と生活を支援し、地域住民が必要とする生活サービスを提供している」と報告。
しかし、人口の減少・超高齢社会・農業従事者の高齢化などについて、「地域社会での相互扶助を軸とした地域安全網の機能を発揮して食と農、地域と農協を一つにまとめる活動を展開している」と述べた。
高崎教授は、日本政府の地方創生戰略と自治体の定住促進策などは過疎農村の振興に貢献しているが、一方で「日本の一部地域の農村は消滅が懸念されるまで疲弊した側面がある」としながら、戦後日本の社会変動と農業・農村に関する政策を分析・紹介して関心を集めた。
第2部では、李錦東国際福祉医療大学福岡保健医療学部教授が「日本の農業6次産業化の議論および関連政策に関する再考」、玄義宋NPO法人韓日農業・農村文化研究所韓国代表(前農民新聞社社長)が「農業の6次産業化と課題」、李在植韓国西靈巖農協組合長が「農業の6次産業化のためのローカルフード運営方向」について主題発表をした。
李教授は、農業の6次産業化は、1990年代日本の農業経済学者によって新たに作られた用語で、現在の日本農政のキーワードであり、農業・農村の活性化に希望を与える論理として紹介。特にアジア型農業で注目を集めていることを強調した。
玄義宋代表は、「日本で6次産業化に成功した地域200か所の共通点を挙げ、「愛郷心の強い指導者があった」と指摘。「その指導者は、自治体公職者が約80%を占めて、残りの20%は、地域農協職員と農業者、ホテル経営者などだった」と紹介。
続いて、農業の6次産業化と農産物直売場が農業・農村の重要な課題であることは間違いないとしながら、「長い間の慣習に馴れた韓国では容易ではない」と指摘。「6次産業化成功のためには、優れた指導者と一緒に農業者の自立意志と自発的な参加、明確な目的、営農指導などの調和がなければならない」と強調した。
李組合長は主題発表を通じて「ローカルフードは、地域で十分な量の確保が1年中できるか。食べ物の安全性確保と小規模農家など農村住民の実質的な所得の確保が可能かなどの基本的な問題の解決が満たさなければならない」とした。
また、「消費者との強固な信頼の構築をベースに、作目班単位の共同生産システムの構築、共同加工施設の設置などが必要だ」と述べた。
総合討論では、熱心な質疑応答が交わされた。参加者は、今日の農業は、単に食べ物を生産する産業から観光・生命・新素材などすべての産業が融合された6次産業へと進化しながら、農業の価値がさらに強調されているということに共感した。
◇ ◇ ◇
2日目は全羅南道靈巖郡一帯で6次産業の現場を見学した。見学を通じ、農業者と地域住民たちから、農協は農業者と一緒に同じ夢を持ち、実現するよう、農家の心強いパートナーにならなければならないということを教えられた。
また、農協は時代の要請に積極的に応えることはもちろん、農業者と国民が農業・農村の価値を共有することで、より大きな幸せを享受できるよう、懸け橋の役割を果たさなければならないとの認識を共有した。
なお今回のシンポジウムは、主題発表者のほか、広島テレビ 靈巖郡守、靈巖郡議会副議長、韓国農協中央会靈巖郡支部長、靈巖郡地域の前・現農協組合長と組合員、社会的協同組合の関係者、それに地域住民など200人余りが参加し、韓国と日本の農業・農村情報交換が活発に行われた。
(写真)日韓の農業情報交換の場となった6次産業シンポジウム(8月28日、韓国全羅南道・西靈巖農協で)
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