事業改革は人材から 営農指導員に夢を 地域あっての法人 JA人づくり研究会2016年2月16日
全国のJAの常勤役職員の自主的な学習の場である「JA人づくり研究会」は、2月10日、東京・大手町のJAビルで第25回研究会を開いた。JAが組合員の参加による事業改革を進めるために必要な人材をどう育成するかについて、熊本県JAやつしろ、富山県の農事組合法人・サカタニ農産の報告をもとに、その方策を探った。
JAやつしろは、農産物販売高が約240億円。うち丸トマト、ミニトマトが124億円で54%を占める。特にブランドの「はちべえトマト」は、391戸が280haで栽培し、124億円の売り上げを誇る。
もともと熊本県の八代地方は日本一のイ草産地であり、イ草の価格下落の度に何度も新規作物の導入が検討されてきたが、平成9年の価格暴落を機に、キャベツやソラマメ、ブロッコリー、カリフラワーなどの導入が始まった。
これら露地野菜は基幹であるイ草の転換作物で、平成17年度の広域合併を機に本格化。キャベツ、ブロッコリー、レタス、アスパラガスを露地野菜の重点推進普及拡大品目に指定し、拡大に取り組んだ。後発産地であることを踏まえ、業務・加工向けの産地化を目指した。
ここで重要な役割を果たすのは営農指導員だが、当初は、生産者も含め、契約栽培・販売の経験も知識もなく、青果販売との違いも十分に認識されていなかった。
そこで営農指導員には、(1)作物を観ること(状況把握によって作物の葉色と樹勢バランスを観察して追肥の要不要・量の判断をする)(2)売ること(ユーザーを知り、高い評価の品質からクレームの出る限界の品質を知ることで、収穫・調整の指導をタイムリーに実施する)(3)聞くこと(生産者の感蝕や不具合・不満などを知る)を徹底するよう指導した。
そして、職員のやる気を促す取り組みの一つに営農指導員33人を対象とした「マイプラン発表会」を行った。毎年、何か1つの課題を決めて試験研究し、発表する。販売担当者にも「Myチャレンジ発表会」という同じような発表の機会を設けている。野菜輸送の鉄コンテナ利用は販売担当者の発表がきっかけで実現したものだ。
同JAの経済事業本部・平山義男本部長は「八代港には16万t級の客船が年間11隻入港するので、これへの農産物供給と観光をプラスした事業を検討したい」と話した。
また、職員教育については、「夢のある職員は希望を、希望のある職員は目標を、目標のある職員は計画を持っている。計画のある職員は結果をみる、結果をみる職員は進歩する」と、職員に産地づくりの方向性を示し、夢を与えることが必要だと強調した。
農事組合法人サカタニ農産は26戸が出資する水田の借地型大規模経営で、旧福野町(現在南砺市)を拠点に、隣接する砺波市、小矢部市に2つの分社を持ち、サカタニグループとして事業展開している。
減農薬・減化学肥料のブレンド米「ワールドエース」の販売や、米以外の各種農産物についても「サカタニブランド」として周年販売し、年間4億円余りの販売額を挙げている。特に地域社会との共生を基本とする経営に徹しているところに特徴があり、報告した奥村一則代表理事は同法人の2代目。創立者の故・酒谷実さんのモットーは「自分だけの利益を求めず、地域にとって有用なサカタニ」で、この理念を守ってきたと言う。
米と転作の大豆だけでは先の見通しが立たないと考え、リンゴ栽培を軌道に乗せ、さらに、野菜栽培に挑戦している。「先行して一人勝ちして満足していては駄目。子どもや孫の代も継続できるようにしておかなければならない」と、持続させることの重要さを強調する。
奥村さんは、法人経営の将来について、労働力の不足を心配する。このためには地域の非農家の力も借りて、事業を継続できる環境づくりが必要だと感じている。
最近、奥村さんを喜ばせることがあった。サカタニ農産に農地を貸している農家の孫がサカタニで働きたいといって応募してきたことだ。地域に密着した事業が、地元できちんと評価されていたということを示している。
全体討議では、労働力の不足について、「外国人労働力でなく、農業専門の人材が欲しい」、また「地域の人の労働力を借りるには、スーパーなどのような時間刻みのパート体制はとれないか」、「大型農機とオペレーターをセットにしたコントラクターでコスト削減ができないか」などの意見があった。
また農協の正組合員の減少について、「法人化が進むと准組合員になる農家が増える。世代交代の時、後継者確保の対策が必要」という指摘も出た。農協の営農指導の強化を求める意見の中では、「新採用職員は営農からスタートさせるべきだ」「技術や経営指導の面で、営農指導員の専門性を高める必要がある」などの提案があった。
(写真)JA事業の人材育成方策を探ったJA人づくり研究会
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