収量アップのカギは 全農耕種総合対策部長が関西農業Weekで講演2019年5月29日
農業総合展「関西農業Week」が大阪インテックスで5月22~23日の3日間にわたって開催。最終日の24日には、JA全農耕種総合対策部の永島聡部長が「JA全農がめざす農業ICTの取り組み~営農管理からドローン活用まで」をテーマに講演し、約400人の農業関係者が耳を傾けた。
講演する永島部長
国内および海外から252社が出展した商談展示会には、西日本を中心に全国から約2万人が来場。ICT化やスマート農業など新時代へ向かう農業にビジネスチャンスを求め、農業法人や農協に加え、農業への新規参入を検討する企業が集まった。
永島部長は講演で、日本の農業において重要な役割を担う全農が今後、取り組んでゆく、新技術を活用した営農支援の方策やめざす方向を説明した。
農業の生産現場では担い手や労働力が不足し、耕作放棄地の拡大など山積する課題への対応策として農業ICTへの期待が高まっている。こうした中、全農では、今年度から新たな中期計画に向けて取り組んでいるが、そのひとつが農業ICTの取り組みだ。
永島部長は、「生産現場とともに最新の生産技術やICTをうまく活用して生産性と農家所得を上げることが全農の基本戦略」とし、具体的な取り組みとして、営農管理システム「Z-GIS」と営農計画策定支援システム「Z-BFM」、インターネットでさまざまな営農情報を提供する「アピネス/アグリインフォ」の3つを挙げた。
◆Z-GISとZ-BFMを組合わせ経営改善
「Z-GIS」は、圃(ほ)場の情報をインターネットの電子地図と関連付けることで、効率的な営農管理を実現する営農管理システム。昨年4月からサービスの提供を始め、現在全国で230の会員が使っている。利用者の80%が法人で、JAは13%だが今後、導入数が増えると見込んでいる。
Z-GISは、エクセルによる管理をベースとしているため、作業、生育、気象、土壌、収量などのデータを無限に紐付けていくことができる。クラウドで保管するため、管理者と作業者が同時に同じデータを見ながら使え、利用料が比較的安いこと特長だという。
「法人や営農組合では紙ベースの地図で作付け計画や作業の受委託計画を立てている。しかし、紙ベースでは書き込めるスペースが限られているため、限界があった。Z-GISはエクセルなので無限に紐付けていくことができ、好きな項目を選んで画面上に表示することもできる」と永島部長。これを基にして担い手が経営改善を行ったり、JAの地域振興策を考えたりということに使っていければと述べた。
また、営農計画策定支援システムの「Z-BFM」は全農が農研機構と共同開発した経営システム。雇用人数や作付け面積などの経営概況や労働条件を入力し、作付け作目を経営指標から選択し、農業所得が最大になる営農計画案を作成するシステムだ。
「年間の雇用労働力を平準化したシミュレーションを繰り返すことで最適な経営モデルを作っていこうという考え。Z-GISとZ-BFMを組み合わせて農業経営のPDCAを回していくということができる」と永島部長。また「営農活動におけるデータをZ-GISに蓄積してそれをZ-BFMで実際にシミュレーションすることで最適な営農計画を作ることができれば経営改善につなげていくことができる」と期待を込めた。
◆営農活動を支援するアピネス/アグリインフォ
一方、「アピネス/アグリインフォ」は、インターネットでJAや生産者の営農活動を支援する会員制サービス。農薬登録情報、1キロメッシュ気象情報、病害虫雑草図鑑、技術・営農情報の4つのサービスを提供している。もともとは農薬の登録情報のデータベースからはじまり1998年に配信をはじめた。
「農薬登録情報は3200件程度で、データ数は10万弱。農薬の登録有効期間は3年間ですが、登録期間内でも項目が変更になることがあるのでそういう情報をタイムリーに更新しており、利用者は常に最新の農薬登録情報をご覧になれる」と永島部長は説明する。
また、今年から農家がリスク管理に使えるよう新たにアラート機能を追加。気温、降水量、風速、降雪、霜、積算気温の基準値を事前に登録しておくと、それを超える予測が出た場合、メールでアラートを飛ばすという。
◆生産基盤を確立し所得向上へ
このほか、全農は完全自動飛行型ドローンを開発するナイルワークスに出資しており、6月に販売開始の新ドローンを指導するためのインストラクターや、実際に使う農家へのオペレーター研修といった準備を進めているという。
こうした取り組みを通して、「生産基盤をしっかりと確立し、農家の所得を向上させていきます」と永島部長。個人的に気になっていることとして、ここ10年と30年前の10年と比較して集中豪雨の回数が約2倍に増えていることを挙げ、「温暖化も着実に進んでおり環境変動も経営のリスクを圧迫している。こうしたリスクを回避しながら生産性を上げていくことを考えると手元にあるICTを農業に積極的に活用していくことが収量を上げるためにも、今後のカギになるのは間違いないと考えている」と締めくくった。
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