広島版スマート農業をめざして 新技術の実証を開始 JA全農ひろしま2019年8月9日
JA全農ひろしまは8月8日、広島県三原市の全農チャレンジファーム広島・三原農場で、完全自動飛行ドローンや人工衛星を利用した水稲の生育診断など新技術に関する説明会と実演をJAや県内の担い手農家など約50人を対象に行った。

ヤンマーアグリジャパンとDJIが連携して作った狭い水田や中山間でも空から防除できる
農薬散布用ドローン「MG1,SA」
全国的に就農者の高齢化とそれに続く人手不足が大きな問題となっているが、とりわけ広島県はその危機感が強い。同県内の農地は急傾斜地など農作業に手間がかかるところが多く、耕作を放棄する農家が年々増加。熟練農家のリタイアが他県に比べても多く、長年の勘と経験で養われた高い技術が急速に失われつつある。
JA全農ひろしま園芸・資材部の山田実部長は、説明会で「スマート農業により、勘と経験をデータ化し、数値化して担い手がいつでも就農できるような形を作り、新規就農者を育成することが優先事項。そのなかで省力化、労働力支援と合わせ生産振興をすすめていく」と語った。
JA全農ひろしまは、「ICT」「IoT」などスマート農業に関する新技術のなかから、中山間地で対応できるもの、現場で使いやすいもの、費用対効果が見込めるものは何か多角的に検証するため、昨年から県内各地の担い手農家をモデル経営体として選定。ほ場管理や環境センシングなどの普及に向けた実証を通して「広島版スマート農業」の模索を始めた。
JA全農ひろしまは、スマート農業を活用した生産振興として、2021年度までの3か年計画を4段階で進めており、現在は「センシング・無人化・自動化技術の試験導入・実証」の第2段階にある。次の段階で、収量・品質を向上させるためのセンシング技術や無人化・自動化技術を実証し、広島の条件に適した収益性の上がるモデルを構築。生産から販売につながる技術を含めたパッケージ化し、最終的にはこれを県域で水平展開していくことにしている。
8日に完全自動飛行型農業用ドローンによる農薬散布や、ラジコン式草刈り機の実演などの実証を行った全農チャレンジファーム広島・三原農場は、この取り組みに賛同した地元の農家が、新規就農者に将来、貸し出すための農地として提供した水田。地元農家とJA全農ひろしまが協力し、今年度は水田センサーを中心に8地区39経営体でモデル実証を行っており、最終的にはブランド米や特色ある野菜作りなど生産振興により農家の収益を上げることをめざす。
山田部長は、「最終的に販売から購買事業も含めたパッケージを県域で推進していくには人手、労力、経費もかかるが、生産指導や資材の提供、販売をつかさどるJAグループならではの取り組みとして広島県全体の農業貢献に務めたい」と語った。

(写真)現在の具体的な取り組みとして行われたドローンによる農薬散布の実演。写真はナイルワークスの完全自動飛行型農業用ドローン「Nile-T18」。農薬散布と生育診断を同時進行で行う
(写真)炎天下での草刈りの負担を軽減するラジコン草刈り機の実演。ドイツブリックス社製の「アグリア9600」は、最大傾斜角50度、1.2m幅で約6時間草を刈れる
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