【第4回JA営農指導実践全国大会・1】先進事例に学び全国でチャレンジを2020年3月11日
JA全中は2月27日、東京都内で、特に優れた産地振興や技術普及等に取り組んだ営農指導業務を担当する職員を表彰し、その取り組みを広く紹介するため「第4回JA営農指導実践全国大会」を開催した。
8地区の代表者と審査員(後列)
JAグループは第28回JA全国大会決議で「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」への「さらなる挑戦」を重点課題として掲げた。
そのためJAの経営資源を営農・経済事業へ重点化することが求められており、JAは営農・経済部門職員のキャリア構築とレベルアップに取り組んでいる。全国大会はこうした取り組みを通じて、産地振興や技術普及などで優れた実践をした職員を表彰することで、取り組みを共有化し営農指導員のレベル向上とネットワークの構築を図ることを目的として開いている。 大会では全国8地区から代表として推薦されたJAの営農指導員8名が事例発表し、最優秀賞1名、審査員特別賞1名、優秀賞6名を決定した。
JA全中の中家徹代表理事会長は発表事例について「地域の農業者とともに考え悩みながら、消費者、実需者が求める農畜産物の安定供給と農業者の所得増大、農業生産の拡大に努める素晴しい取り組み。現場で参考となりさらにまた取り組みが生まれる好循環につなげ営農経済事業の機能強化を果たしてほしい」と期待した。
【最優秀賞】JA山形市(山形県)鈴木 公俊氏 北海道東北地区
営農事業がJA総合事業を牽引
<山形セルリー生産振興とブランド確立への取り組み~若者、バカ者、よそ者の挑戦>
山形セルリーは昭和44年に栽培を開始し平成9年には出荷額1億円を超え東北随一の産地となった。しかし、近年は高齢化と担い手不足、花きや果菜類へのシフトなどでピーク時の3分の1にまで減った。部会員も15人となり「なじぇがさんなね!(何とかしなければならない)」との声が上がり、平成26年にJA全農山形とともに新たな担い手の育成と生産振興をめざし3つの戦略を実行するプロジェクトを立ち上げた。
戦略1はレントファーム。JA山形市のアグリセンターに隣接する農地を借り上げて栽培・共同育苗ハウスや井戸、堆肥置き場などを整備した。5年間で79棟のハウスを整備、施設利用料は1棟(約100坪)年間10万円としてトラクター、農機、井戸使用料も含まれている。この事業は投資のリスクを農家が負うのではなくJAが負うかたちであり、農協の使命だと考えている。
戦略2は担い手育成。2年間、ベテラン農家が研修を担当し、技術取得後、セルリー団地で栽培を開始してもらう。これまでの団地利用者は11名で、うち7名が非農家出身となっている。
また、JGAP団体認証も取得したほか、ハウス内の環境をモニタリングする機器を導入するなど、ベテラン農家の技術をICTを活用して新規就農者が引き継ぐ実践も行っている。
戦略3は販売戦略。地理的表示(GI)と地域団体商標の両方の登録を取得した。ダブル登録は東北初で部会のモチベーションも上がった。
シェフや学識者の協力でレシピ作成や「とのセルリー」、「ひめセルリー」のブランディング、生協との値決め販売などによる所得向上にも取り組んだ。
取り組みの結果、生産者は40%増加して21人となり、年齢層も40代以下が3割以上を占めるようになった。共同育苗と団地化でコストを10%削減し、単価は14%増加した。「山形セルリー」のデザインはJA山形市の各事業のデザインに活かしている。営農事業が総合事業の牽引役になっている。
【審査員特別賞】JA兵庫みらい(兵庫県)多鹿文彰氏 近畿地区
特産品で経営の幅広げる
<ゼロから1億へ!『施設アスパラガス産地化』に向けた取り組み>
農業者の所得増大と農業生産の拡大をめざし、収益性の高い新規作物による産地づくりに平成28年から取り組んでいる。 「施設アスパラガス」を選んだのは市場価格が安定し収穫期間が長いことや、収穫物が軽く栽培管理に大きな農機が不要など、収益性と作業性のバランスがとれているためだ。JA実践型研修ハウスを設置、職員自ら土づくりから収穫まで栽培管理して試験栽培を行い、栽培方針を決定した。
試験栽培中から生産者が興味を持ってハウスにやってくることもあり、情報発信したり、営農指導、研修の場になった。 目標は5haで1億円。生産者には栽培に専念してもらい、JAに全量集まる体制をめざした。販売はJA兵庫みらい産の「みらいちゃんアスパラ」として売ることにした。 平成30年に出荷を開始し、県内卸売市場、JA直売所、レストランなどで販売、1キロ1200円の高単価を実現した。
生産者にはJA独自助成金制度の整備や、栽培説明会の開催により募集を行った。その結果、生産者は22名となり生産部会も設立し産地としての土台ができた。
JAの販売高では約600万円の純増(平成30年)となった。令和元年度は1300万円の見込みとなっている。生産者の収益の柱にはまだなっていないが、農業経営を支える農産物として評価され、農家への営農プラン提案の幅が増えた。
大規模水稲農家では労働力の有効活用や新たな収入源となるほか、兼業農家、営農組合の女性農業者たちが栽培を始めるなどの活躍も生まれ、またアスパラガスを通じた農業祭りやお弁当のおかずコンテスト、グリーンツーリズムなど地域活性化にもつながっている。 今後は「食っていける経営」に向けて出荷販売の拡大に取り組んでいきたい。そのために出荷量と品質の安定など生産部会活動を充実させる。また、JA実践型研修ハウスでの作付拡大とアスパラガス経営のモデル化、新規就農研修生の受け入れに取り組む。さらに出荷・販売体制の強化では選果設備の拡充などを行っていく。
(関連記事)
・【第4回JA営農指導実践全国大会・2】優秀賞の事例報告
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