第3回Z-GIS・ザルビオWEBミーティング GAPや防除に役立つ活用を提案 JA全農2021年9月29日
JA全農スマート農業推進課は9月17日、「第3回Z-GIS・ザルビオWEBミーティングin あぐラボ」を東京・大手町のAgVentureLabで開催した。今回は、「Z-GIS・ザルビオを使い倒す!」をテーマに前半はZ-GISのGAP(農業生産工程管理)での活用事例や生産緑地問題への対応を紹介。後半は、ザルビオの便利な機能を活かした活用方法を全農の担当者が提案し、90分の拡大版にパワーアップ。緊急事態宣言を受け、主催者と参加者がオンライン形式で意見交換ができる参加型のZOOMと視聴型のYouTubeで同時配信を行い、150名近くの参加申込があった。
イベント冒頭、JA全農スマート農業推進課の平野課長は「コロナ禍は我々の生活に大きな影響を及ぼしているが悪いことばかりではないと考えている。ここ1年でWebを通じた情報発信が一般化し、こうしてZ-GIS・ザルビオの最新情報をお届けできることには価値があり、参加者の方からご意見をいただけることはありがたい。今回は全農の担当者から活用方法をご提案し、来年の作付けに向けて営農に役立つヒントをお届けしたい。」と挨拶した。
挨拶をする全農スマート農業推進課平野課長
WEBミーティングの内容は下記のとおり。
前半は、全農スマート農業推進課大武調査役の進行のもと、GAPでの活用方法を全農耕種総合対策部GAP推進課の室谷課長代理が説明した。
○GAP管理の課題をZ-GISで解決-膨大な資料をZ-GISで一元化-
「GAP管理は、生産に使用する全ての圃場や施設を明確にするだけではなく、リスク評価や管理手順を作成し記録として残す特徴があり、Z-GISでは圃場の場所や施設の情報を総合的に管理するためGAPとの相性がとても良い」と大武調査役。
「GAPはヨーロッパで環境汚染の問題意識から始まっている取り組み。そのため汚染の対象となる土地や施設を明確にして考えることが基本となっている。これと圃場を見える化したZ-GISはマッチしている」と室谷課長代理は言う。
また、GAPでは資料や帳簿類の作成と同時にその管理も重要で、Z-GISではExcelでハイパーリンクを使用できるため、圃場管理に関する作業日誌や危険個所の地図のデータを紐づけて表示が可能であることも紹介。
使用者もWordやExcel以外の紙の資料など様々な方法で管理しており、一番現実的な管理方法としてフォルダの中に電子データを入れるのが妥当だと話す。
Z-GISを活用しGAP認証を取得した全農群馬県本部では、GAP認証の審査の際にフォルダに整理した資料をスクリーンに映し出して説明できるので紙を出し入れする手間もなく効率よく審査ができたという。詳細の内容については弊紙HPで読むことができる。
<全国初、Z-GISの活用でGAP認証取得 JA全農ぐんま>
その他にZ-GISの色分けや補助図形、写真格納の機能をリスクマップや経路図、作業指示など幅広い目途で利用が可能なことも紹介した。
○生産緑地2022年問題-都市型農業でもZ-GISを有効活用-
Z-GISは、営農管理以外の分野でも力を発揮すると大武調査役は続ける。
そこで提案されたのが「生産緑地の2022年問題」への対応だ。この問題は1992年に生産緑地法が改正された際に指定を受けた生産緑地が、都市計画決定から30年経過すると農家や土地の所有者が申請しなければ生産緑地の指定が解除され税制優遇が受けられなくなるもの。2017年に再度改正され、「特定生産緑地」に指定された場合は10年ごとに申請し、農地利用の延長が可能となっている。
JAや生産者は生産緑地所有者情報を把握・管理することが重要だといい、実際にJAあさか野(埼玉県)はZ-GISを導入して地図上に生産緑地所有者情報を「見える化」し、データで管理を行っているという。10年後に再度申請する際に、JAがデータ上で管理をおこなっていれば、更新時にも組合員向けに対応ができることをメリットとして挙げた。そのほか、施主代行の組合員物件やJAにて管理している賃貸住宅・駐車場、組合員の居住場所など担当者の異動によるノウハウや情報消失を防止することで顧客管理の強化にも繋がることを強調した。
個人ユーザーでも地域の圃場を筆ポリゴンで作成、生産者の年齢を圃場に当てはめて管理することで地域営農の継承者問題にも対応ができると力を込めた。
全農スマート農業推進課大武調査役
○ザルビオの基本機能と活用法
後半は、ザルビオの主な機能と活用方法を全農スマート農業推進課の池町氏と小宮山課長代理が参加者へ向け説明した。
・防除適期を逃さない!水稲生育、病害予測機能の活用
まず、水稲病害虫防除の課題として大規模化と気象変動の影響により適期防除は難しいのが現状であると全農スマート農業推進課の池町氏。
そこで活用できるのがザルビオの生育予測機能だ。
ザルビオはメッシュ気象データに基づいて、圃場ごとに生育ステージを予測し、栽培期間を通じて表示される。生育ステージ欄に表示される数字から出穂期前後が明確になるという。実際のザルビオの生育予測と圃場のある県普及センターの出穂期の予測がほぼ同時期であったことが確認できており、高精度で予測ができ、信頼性は高いと説明した。
また、病害予測機能は、先ほどのメッシュ気象データをもとに、圃場ごとに病害リスクを予測し、4日先まで表示する。対象病害はいもち病や紋枯れ病、稲こうじ病、白菜枯れ病で、低リスク(緑)・中リスク(黄色)・高リスク(赤)と色分けされ補完防除に活かせると話す。
こうした情報をもとに圃場ごとに防除日程、薬剤名、使用量、作業担当者を計画し、適宜防除をスケジュール化することで出穂期前後の病害虫の基幹防除を効率的かつ正確に進める一助となると期待を寄せた。
・難防除雑草をやっつける!大豆雑草プログラムの活用
大豆雑草防除では、大規模経営や多数の圃場管理、発生期間が長い難防除雑草の発生により生産者に求められる判断が困難になっていることが課題とされており、難防除雑草のアサガオが発生した圃場では10aあたり140㎏減収の例も挙げ、ザルビオの雑草管理プログラムの活用を提案した。
衛星画像から播種前の雑草発生状況を視覚的に把握可能で、生育ステージに合わせて除草剤の散布アラートが通知されるという。
同プログラムの活用例として防除暦をベースに昨年アサガオが発生して大変だった圃場や家から遠く目が行き届かない圃場での利用を挙げた。
・バイオマスマップの活用で生育をモニタリング、スマート農機との連携も可能
ザルビオは、NDVI※1、LAI※2の指標を用いて植生をマップ化。
NDVI、LAIの指標を参考に、追肥量を調整する等の対策が可能となる。その際に、ドローンによる局所追肥でNDVIの低い地点を狙って追肥し生育ムラを補正することで全面施肥に比べ減肥につながる事を紹介した。
また、圃場の大区画化、担い手農家への農地集約に伴い圃場ごとや圃場内での生育差(収量差)が生じている場合、生育差に応じた資材の投入量を変える必要性がある。しかし、可変散布は人の手でやるのは大変なため、ザルビオのバイオマスマップに基づいて作成した散布マップをスマート農機等とつなげ負担軽減を目指す取り組みを提案した。
※1...NDVI:正規化植生指数。人の視力では測れない波長を解析し、植物の活性を示す。
※2...LAI:葉面積指数。圃場内のムラを把握できる。
質問する参加者(右)
参加者からは、農協から出荷する際にGAP認証は必要だが、農協以外の販路で売り出す場合は必要なのか、ザルビオでの対応品種やスマート農機が必須なのか、また生育予測でも生産が少ない品種での精度について質問が寄せられた。活発な意見交換が交わされイベントは盛況のうちに終了した。
次回は11月26日金曜日16時開催予定。
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