肥料価格 2期連続値上げ 原料の国際市況が高騰-JA全農2021年10月29日
JA全農は10月29日、令和3肥料年度春肥(11月~翌年5月)の単肥価格を公表した。肥料原料の国際市況高騰の影響で今年6月から10月までの秋肥価格に続いて2期連続の値上げとなった。
石灰窒素を除き、尿素17.7%、過りん酸石灰4.9%、塩化加里17.0%など、窒素質、りん酸質、加里質肥料のいずれも値上げとなった(表)。
穀物相場の上昇で北米、南米を中心に作付け増え肥料の需要の好調が続くなか、尿素やりん安の世界最大の輸出国である中国が国内需要を優先する政策を示したため、世界的に需給不安が高まって上昇を続けている。
前年に春肥価格は前期比で値下げだったことから、国際市況が急騰したりん安を使用する複合肥料などの品目は概ね20%を超える値上げとなる。
JA全農によると海外肥料原料は以下のような情勢となっている。
窒素質肥料の原料のアンモニアは中東の製造工場事故の影響で需給がひっ迫したことや、欧州の天然ガス価格が高騰したことから大幅に上昇しているという。国産のアンモニアも原油価格の上昇や、国際市況高騰の影響で上昇している。
尿素は穀物価格の上昇や、好調な出荷、原油価格の上昇を受けて大幅な値上がり。夏の不需要期に一時的に下落したものの、最大の輸出国である中国が国内優先の政策を打ちち出した。10月15日も中国当局は輸出貨物の検査強化を通達した。具体策は不明だが、輸出規制の強化の姿勢が市況に影響を与えてほか、原油や天然ガス市況の上昇を受けて足元ではさらに急騰しているという。
リン安は、旺盛な需要に加え、原料の硫黄やアンモニア価格の高騰などで急激に上昇している。さらに夏以降は中国の輸出停止への懸念から需給不安が高まっている。今後の堅調に推移するとみられるという。
塩化加里も北南米の旺盛な需要に加え、カナダの大規模鉱山の漏水の深刻化による稼働停止や、世界有数のベラルーシに対する欧州・米国の経済制裁などにより需給ひっ迫が懸念され、とくに北南米で市況が急騰した。
今後は、塩化加里の主要な輸入国である中国やインドが国内在庫を減少させていることから、需要の好調は続き、アジア向けの市況もさらに上昇すると見込まれている。
海上運賃は鉄鉱石需要や穀物輸送が堅調であることや、燃料油の値上がりから上昇している。コンテナについても、アジア・北米間の輸送需要が増加していることや、コロナ禍で検疫によるコンテナ船の稼働率の低下から運賃の上昇が続いている。
為替は1ドル110~113円と円安基調が続いている。
JA全農によると、最近の肥料原料の国際市況は、世界的に穀物価格が高騰した「2008年に次ぐ市況」でメーカー各社からは今回の価格決定以上の値上げ要求があったという。
日本の肥料使用量は世界の0.5%であり、海外市況の影響を免れない。JA全農は肥料の安定供給のため欧州、アジア、北米、北アフリカなどの山元から自ら輸入して「しっかり確保ししっかり届ける」(耕種資材部肥料課)ことに取り組むとともに、肥料の銘柄集約や土壌診断に基づく適正施肥など、施肥コスト抑制にも力を入れている。
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