国際市場のない肥料 懸念される為替動向 JA全農 安定調達に力2022年8月1日
政府は7月29日に肥料価格高騰対策を決め、今年の秋肥と来年の春肥を対象に価格高騰分の7割を支援する仕組みを近く具体化する。肥料原料の国際市況のうち尿素は一時の高騰から調整局面に入っているものの、いつ反転するか不透明な状態であり、わが国にとっては円安の進行による価格高騰も懸念される。こうしたなか、国際的な肥料原料の情勢やわが国農業の課題などについてJA全農の日比健耕種資材部長が農政ジャーナリスト会で講演した。肥料の安定確保に力を入れるとともに、国内資源の利用も進める必要などを指摘した。
商品市場がない肥料
最近肥料原料の市況は3つの局面を経て上昇してきたという。2020年末から2021年にかけては、南米の不作を受けての増産意欲の高まりに加えコロナ禍による物流の混乱、さらに中国の電力不足による肥料供給不足の懸念などで高騰した。
その後、2021年秋から年末にかけては中国の輸出規制によって尿素の価格が高騰。一旦は下がったものの、今年2月のロシアのウクライナ侵略で急騰した。2017年を基準とすると現在は3~4倍となっている。
価格が変動する要因のひとつは供給国が偏在していることに加え、国際的な商品市場がないことだという。米国や欧州は肥料の自給率が高いが、一部輸入は必要としており、輸出で国際市場の主役にはなれないという。
戦略物資として位置づけ
一方、塩化カリをはじめ世界最大の肥料原料の輸出国はロシアだが、世界からの信頼がないため、結局。商品取引市場はできない。むしろ戦略物資として自国との関係性が強い域内での流通が重視されているのが実態だ。
途上国では農業農村対策として国が管理しており、インドは国が配給価格をコントロールしている。こうした状況のなかで肥料原料の確保は資源国との友好関係と長期間の安定的な取引が重要になる。
また、現在は、べラルーシから世界市場に出回る塩化カリ1000万tが経済制裁によってストップしているために価格が高騰しているが原料として不足はしておらず取引できる環境になれば、市況が落ち着く見込みもある。ただ、今後の価格は「為替がいちばんの懸念」と円安の影響を指摘する。
こうしたなか秋肥と来年の春肥の価格高騰の影響をまず緩和する対策が急務で、同時に堆肥の利用促進など「地域で自給できる成分の活用を地域で進めていきたい」と話すとともに、日本にとっては農地を守っていく担い手の確保が「待ったなし」の状況だと強調した。
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