農地を守り国土を守り日本を元気に 第68回JA全国女性大会2023年1月25日
JA全国女性組織協議会は1月24日に第68回JA全国女性大会を東京都内で開き、JA女性組織活動体験発表やフレッシュミズ作文発表などを行い、25日に大会宣言を採択した。
女性の力 JAに不可欠
3年ぶりの実開催となった会場には約400人が集まりオンラインと合わせて約700人が参加した。大会は「JA女性 想いをひとつに かなえよう」をメインスローガンに掲げ、サブスローガンを「世代間交流をすすめ次世代リーダーを育成しよう」、「地域とともに「食」と「農」をまもろう」、「国消国産を推進し食料安全保障を考え実現しよう」とした。
洞口ひろみ会長
洞口ひろみ会長は長引くコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻、生産資材高騰と物価高で「日本は不安な状態。何をすべきか仲間とともに知恵を出し合い、国土を守り農地を守り日本を元気にしていきましょう」と呼びかけた。
来賓としてあいさつしたJA全中の中家徹会長は「JAの活性化には女性の目線、感性が必要。意見を出し合いながら解決策を見出していくのは女性組織が得意とするところ。積極的な参加がきわめて大事」と期待した。
野中厚農林水産副大臣は野村哲郎農相のあいさつを代読し「農業と地域社会の持続的な発展を実現するには、多彩な能力を持つ女性の力を発揮することが不可欠。農協経営にとっても貴重。役員就任なども期待したい」と述べた。
日本生協連の土屋敏夫会長は「安全で新鮮な農産物を食べ続けたいという消費者の願いには元気な農がもっとも重要。生産者と消費者がつながっていくことで地域の期待に応えていきたい」などとあいさつした。
地域づくりに力
JA女性組織活動体験は地区代表に選出された6人が発表した。
JA秋田やまもと 近藤きぬ子さん
秋田県のJA秋田やまもと女性部山本支部の近藤きぬ子さんは「私たちが支える『おらほの農協』」と題して発表した。JAの「自己改革」を考えるなかで女性部としてJAや地域のためになる活動に取り組みようになった。小学校での食農教育や支店でのコーヒーサロン開催に活動を広げ「小さな活動でもおらほの農協を支えているという思いが女性部員を耀かせ、地域を元気にする」と話した。
JA南アルプス市 中込恵子さん
山梨県のJA南アルプス市女性部の中込恵子さんは「JA女性部活動でSDGsに貢献しよう!」と題して発表した。食品ロス問題の学習会をきっかけにフードバンクへの食品寄付活動が始まったほか、果樹栽培講座で「4パーミル・イニシアチブ」を学び実践している。土壌中の炭素量を増やすことで大気中のCО2を減らすことができるという考え方で、果樹の剪定枝を炭にして園地に投入している。「次世代につなぐため大勢の仲間を巻き込んで実践していきたい」と決意を語った。
JA福井県 和中由紀子さん
福井県のJA福井県女性部福井支部の和中由紀子さんは「あなたと出会えたこの喜び」と題して発表した。民踊クラブを立ち上げオリジナルの踊りで施設訪問を行うなどの活動や、仲間と特産品づくりをめざし仲間と安納芋や、赤大豆の栽培に取り組んだ。組合員から提供された畑には大勢が集まり、コロナ禍のなかでコミュニケーションの場となった。赤大豆は日本固有の在来種であり、「明治生まれの祖父が何種類もの在来種を守って次世代に引き継いだように、私が守り子どもたちに引き継いでいく」と話した。
JAグリーン近江 松井美子さん
滋賀県のJAグリーン近江女性部の松井美子さんは「食を通じて地域とつながる」と題して発表した。コロナ禍の学校給食停止で大量の味噌在庫を抱えた一方、地域の大学生がアルバイト収入減で生活が苦しいということから、手作り味噌と野菜を提供するという活動に結びつけた。また、「もったいないをありがとうに」をテーマに掲げフードドライブを実施した。女性部員で寄付を募ったところレトルト食品など400点以上と300㎏の米などが集まった。「寄付された食品の数の多さもさることながら、必要とされている家庭の多さにも驚いた」。「今後も食を通じて人と地域の絆を深めていきたい」と話した。
JA三次 平律香さん
広島県のJA三次女性部八次支部の平律香さんは「地域コミュニティづくりは世代間のマッチングで」と題して発表した。支部は多彩なグループ活動が特徴で料理、洋裁、手作りパンなどのグループがあり、パングループは地域の「馬洗川祭り」に毎年参加し「米粉ピザ」が好評を得て、それをきっかけに小学校でのパン作り教室へと学校とのつながりでき、田植え体験などに広がった。親子クッキング教室なども企画。「女性部の活動を通して世代間の交流を深め安心して暮らせる町づくりのけん引役となれるよう活動したい」と話した。
JAにじ 江嶋京子さん
福岡県のJAにじ女性部の江嶋京子さんは「未来をつむぐ"にじ"」と題して発表した。女性部役員を退任後に理事に就任。女性部活動を盛り上げるために子どもたちをフラダンスチームに参加させる活動に力を入れた。見学会を開くとメンバーが増え、支店祭りで初舞台を迎えた。「ステージに上がるなら女性部員になること」と部費を徴収、15名の子どもたちが女性部員となった。平均年齢一ケタのグループとして活動し家族総出で応援するように。「願いはJAを身近に感じてもらうこと、JAのファンになってもらうこと」と話した。
作家・保護司 大沼えり子さん
【記念講演】
子どもたちを救う活動に期待
大会では作家で保護司の大沼えり子さんが記念講演した。
大沼さんは宮城県在住で北海道・東北地方にある3つの少年院に向けてDJとしてリクエスト曲などをかけ子どもたちに語りかける院内放送を月1回制作してきた。保護司になったのは23年前。身近な子どもが非行に走ったことがきっかけだった。以来、非行に走ってしまう子どもたちの背景と現状についての講演や電話相談などを行っている。
更生をめざしながらも親がいないなど帰る家のない少年たちの自立を支援するNPО法人も運営している。
大沼さんは少年院の子どもたちの7割が食品の窃盗が原因だという。4日間何も食べられず、コンビニでおにぎりをポケットに突っ込み、あんぱんを頬張りながら店から出てきたところを補導された少年もいた。
親から虐待を受け、食事もろくに与えられず、誕生日には祝うどころか「あんたを生んだからこんな苦労する」と蠅叩きで叩かれつづけ、誕生日は「一年でいちばん嫌いな日」となったという少年は、少年院の壁に「こたつの上の100円玉が悲しかった」と書いていた。それでも「みんな親のことが大好き」なのだという。
そんな少年たちについて大沼さんは「非行は、生きていくための手段だと思う。命をつなぐのは食」と話す。東北に大きな被害をもたらした東日本大震災だが、復興には大沼さんが開設したハウスから、少年院から出て立ち直ろうと懸命な少年たちが早朝から現場仕事に向かった。帰ってくると「オレ、役にやっている? 生きてていい?」と聞いたという。
大沼さんは「親がだめでも誰かが助けてやればいい。大変な子どもたちがみなさんのすぐそばにいるかもしれない。やさしいおせっかいをしてほしい」と参加者に呼びかけた。
大会ではフレミズ活動「わたしの一歩」作文コンクールの表彰と最優秀賞の発表も行われた。
右から北島さん、池田さん、橘内さん、谷口さん、小笠原さん
【令和4年度フレミズ活動「わたしの一歩」作文コンクール入賞作品】
最優秀賞
JAいしのまき
及川沙織さん
<最優秀賞>
「食でつながる笑顔の輪」宮城県JAいしのまき女性部矢本地区笑菜会 及川沙織
<優秀賞>
「わたしとフレミズと未来と」佐賀県JAさが中部地区女性部本庄フレッシュミズ部会 北島久美子
「好きこそ最強のエネルギー~私を変えた農業とフレッシュミズ」熊本県JAあまくさ女性部大矢野総支部フレッシュミズ 池田真由美
<優良賞>
「ふくしまで生きる」福島県JAふくしま未来福島地区フレッシュミズ部会 橘内望
「No Rain! No Rainbow!~光り耀く今のために~」岐阜県JAひだフレッシュミズの会宮支部 谷口裕美
「フレッシュ16との出会いを通じて」愛媛県JA越智今治女性部フレッシュ16支部 檜垣佳奈美
「フレミズ活動で私が変わったこと」高知県JA高知女性部れいほく地区フレッシュミズ部会 小笠原美幸
「親子で学ぶフレミズ活動」福岡県JA福岡市金武支店フレッシュミズ 青栁香織
【大会宣言】
JA全国女性協は昨年の創立70周年記念大会で3カ年計画「JA女性 想いをひとつに かなえよう」を決定し取り組みを始めました。コロナ禍であってもフードドライブや防災活動などSDGsの視点からさまざまな活動が展開されています。徐々に対面の活動が再開され、私たちは、コロナの中で蓄えた思いをエネルギーに、明るい未来に期待を込めてさらなる一歩をふみ出す時です。
燃料や生産資材の高騰により、農業者にとっては依然として厳しい状況が続いていますが、消費者の「食」や「農」、食料安全保障に関する関心が高まっており、今こそ、農業者と消費者をつなぐJA女性組織の活動が重要となっています。
このため、私たちは、全国の仲間と想いをひとつにし、次の取り組みを通じてJA女性組織の力を発揮することを宣言します。
一:「食」と「農」に根ざした活動を通じて、地域住民や他団体とつながり「国消国産」の意義や重要性を発信していきます。
一:JAの活動や事業に積極的に関わり、JA運営に参画し、JAと共に地域と農業に貢献していきます。
一:JA女性が培ってきた、食と農、くらしに関する知恵や工夫、地域とのつながり、仲間との絆を次代につなぐため、フレッシュミズの育成に取り組みます。
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【第68回JA全国女性大会によせて】"閉塞の時代"こそ旗幟鮮明に 文芸アナリスト 大金義昭氏
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