下水再生りんの肥料利用で全農が東京都と連携 全国展開を視野 全国初2023年12月15日
JA全農は12月15日、国内肥料資源の積極的な活用に向け、東京都と下水再生りんの広域での肥料利用に向けた連携協定を締結した。全国供給を視野に入れた取り組みは全国初。今後、東京都と全農は肥料の国産化と農業者への安定供給をめざす。
わが国の肥料原料の多くを輸入に頼っているが、最近では世界的な穀物需要の増加に加え、ロシアのウクライナ侵攻によるカリの輸出停止や中国によるりん安の輸出規制などで価格が高騰し、世界的に肥料資源の調達が不安定になった。
こうしたなか昨年末に政府が決定した食料安全保障強化政策大綱では、輸入依存を減らすため2030年までに堆肥と下水汚泥資源の使用量を倍増し、国内資源の利用率を40%まで拡大させる目標を掲げた。
一方、東京都は全国の下水処理量の約1割を占め、りんを含む多量の下水汚泥が発生している。これが東京湾の赤潮発生要因となることから都下水道局はりんを除去する施設の導入を計画、2022年度に国交省の実証事業に採択され、24年1月末に砂町水再生センターでりん回収・肥料化プラントが稼働する予定となっており、年間70t程度のりん回収物を得る見込みだという。
小池知事(右)と野口理事長
東京都の取り組みをふまえて両者は再生りんの肥料利用を検討、今回の連携協定によってプラントによって回収した再生りんなどの肥料利用に向けた技術開発、製品開発、栽培試験、市場調査などを進めていく。
東京都はプラントで回収した再生りんを分析し、りん酸肥料の原料として登録取得をめざす。一方、全農は関連肥料メーカーとともに、この再生りんを使った複合肥料の製品開発を行う。全農によれば現行の複合肥料のうち、輸入に頼っているりん酸アンモニア一部を再生りんに置き換えるイメージだという。
24年度は再生りんの品質、成分等の評価や肥料メーカーとの連携を検討し、その後、25年度にかけて試作品による栽培試験に取り組む見込み。
JAグループでは福岡、神戸、岐阜、横浜で行政と連携して再生りんの肥料利用を進めているが、それらは市内・県内での循環利用となっている。今回の東京都との連携は量が多いため、初となる全国的な供給も検討していく。そのため農業者など関係者への理解醸成を図ることも連携事項となっている。
連携協定書に署名した東京都の小池百合子知事は「原料をどう確保できるかは経済安全保障上の問題とも言える。東京都は全国の下水処理量の1割を占め、りん資源のポテンシャルは極めて高い。全農と連携して取り組むことによって、わが国の農業に不可欠なりんが全国的に活用され肥料の国産化と安定確保につながっていく。連携して農業を支え、日本の経済や農業が担っている緑の確保、治水など支える意味もある」などと述べた。
全農の野口栄代表理事理事長は「東京都は良好な水環境と環境負荷の少ない都市の実現をめざして下水からの再生りん回収プロジェクトに取り組んでいる。連携は国内資源の有効活用と、食料安全保障、環境に優しい農業の観点からも意義がある。わが国の持続可能な農業と消費者への食の安定供給の一助となることを祈念する」と述べた。

◯連携して取り組む事項
(1)下水汚泥に含まれる肥料資源の調査・技術開発に関すること
(2)肥料の製品開発、試験栽培に関すること
(3)肥料の市場・流通調査に関すること
(4)下水汚泥に含まれる肥料資源 に係る関係者 の理解醸成 及び利用促進に関すること
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