【第30回JA全国大会】協同活動と総合事業で食と農を支える協同の力 組織協議案概要2024年6月7日
今年10月に開かれる第30回JA全国大会に向けた大会議案の組織協議案をJA全中は6月6日の理事会で決め8月中旬までJAグループ各段階で議論する。議案の全体像を紹介する。
JAグループの存在意義示すとき
食料安全保障の確立を目的とした改正食料・農業・農村基本法が今国会で成立、公布されたが、世界的な物価高騰による生産資材価格の高止まりが続き、議案では「多くの地域で営農が継続できるか危機的な状況にある」との認識を示す。
また、農村部で基幹的農業者が今後、激減する可能性があり、JAの組合員総数も2019年度をピークに減少に転じ、JAを取り巻く環境は厳しさが増している。
こうした状況をふまえて議案では「人の確保・育成を含めたJAの組織基盤・経営基盤の対応強化は、待ったなしの状況」と危機感を示す。「人」とは基幹的農業者はもちろん、多様な農業者の役割発揮であり、JAとっては職員の確保・育成でもある。
JAを取り巻く環境が厳しいなか、一方では国連が2025年を2回目の国際協同組合年に定めており、今大会決議の実践初年度は、国連が協同組合の価値を改めて表明する年ともなる。
そのためJA全国大会を機に「協同組合の素晴らしさ」を組織内外にアピールする絶好の機会だと捉え、JAグループの存在意義を「協同活動と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会を実現する」と整理し、内外に理解と共感を広げていく。
3つの重点目標を設定
大会議案では、JAグループの存在意義の発揮と「JAグループのめざす姿」(※)の実現に向けて3つの「基本的考え方」を整理している。
1つ目はJAグループの提供する価値である食料・農業への貢献、組合員のくらし・地域社会への貢献の最大化、2つ目は「活動と事業の好循環」を通じて組合員との関係強化・仲間づくりと持続性のある経営の実現とした。
3つ目は社会的な潮流や要請への対応で、具体的には国際協同組合年をふまえ協同組合の役割や価値に対する理解醸成を図ることと、社会的潮流をふまえデジタル技術の活用と持続可能性に資する取り組み。
この3つの基本的考えのもとにJAグループの重点目標として「農業所得の増大」、「組合員数の維持・拡大」、「事業収益性」を設定する。
この目標を実現し、JAグループの存在意義を発揮するため各JAに取り組みを提起するのが「5つの戦略」である。
【食料・農業戦略】
ポイントは、国内農業生産の増大に向けた地域農業振興計画の策定と実践、次世代の担い手の確保と多様な農業者の農業参加、環境に配慮したよりよい営農への取り組みなどである。
これらの取り組みをJA営農経済事業を中心に総合事業によって支え、農業所得の増大と国内農畜産物の安定供給に貢献する。
【くらし・地域活性化戦略】
ポイントは、組合員のライフステージに最適な活動と事業を提供する「組合員のくらしを軸とした事業・活動」の実践だ。組合員ごとのニーズを把握するための訪問活動などのほか、デジタル技術を活用した非対面による「くらしに寄り添う接点創出」の実践を提起している。縦割りでの事業対応ではなく、事業・部門の垣根を超えた事業間連携による組合員対応を今回は提起している。「組合員の困り事など情報を共有化しニーズに応えること」(全中)でもある。
また、JAくらしの活動や教育文化活動、食農教育など、協同組合の特色である協同活動の実践と総合事業の好循環を図り、JAが提供する価値の最大化をはかる。
【組織基盤強化戦略(JA仲間づくり戦略)】
ポイントは、組合員との対話やアンケートに基づく組合員の類型化・対応の重点化を行い、組織基盤強化方針の策定など、組合員との関係強化に取り組むこと。
また、29回大会で提起された次世代総点検運動をふまえ、新規就農者の育成・定着支援などを通じた次世代の正組合員の確保と「農業振興の応援団」の拡大に向けて准組合員の加入促進や地域住民との関係づくりに取り組む。
【経営基盤強化戦略】
価値提供の土台となるJAの組織基盤と経営基盤を強化していくためには「原動力となる役職員の力が重要」と議案は協調する。戦略のポイントは中長期的な目線で「JA経営がどうあるべきか」を検討し、場所別部門別損益管理等のPDCA管理に取り組むなど経営戦略の高度化を図る。
また、協同組合らしい人づくりに向け、JAらしいインターンシップや広報部門とも連携した採用活動や、多様な職員が「働きやすい」「働きたい」と感じる職場づくりもポイントとなる。
【広報戦略】
戦略のポイントは「国消国産JAグループ統一運動」などの取り組みを通じて、子育て層、若年層に対して食料安全保障の確保の重要性について理解醸成とともに、行動変容を図る。また、国際協同組合年をきっかけに協同組合の社会への貢献など理解も広げる。
JAでは、それぞれの実情に応じて各戦略の取り組みを選択し実践する。5つの戦略が有機的に連携し、好循環を生み出すことで「JAグループの存在意義の発揮」をめざす。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(161)-食料・農業・農村基本計画(3)-2025年9月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(78)【防除学習帖】第317回2025年9月27日
-
農薬の正しい使い方(51)【今さら聞けない営農情報】第317回2025年9月27日
-
【特殊報】タケ類にシナチクノメイガ 府内で初めて確認 大阪府2025年9月26日
-
【特殊報】タケ類にキモンホソバノメイガ 府内で初めて確認 大阪府2025年9月26日
-
乾田直は栽培に対応したサービス・技術開発を加速 環境対策やデジタル領域で BASFジャパン2025年9月26日
-
石破総理「世界のおにぎり屋を10倍に」日本産食材をニューヨークでアピール 農水省2025年9月26日
-
【全中教育部・オンラインJAアカデミー】高齢者支援から広がる地域課題の解決ビジネス ヤマト運輸「ネコサポ」に学ぶ2025年9月26日
-
(454)名前と番号【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月26日
-
「岡山県産マスカット・オブ・アレキサンドリア」原料のフレグランス FERNANDA JAPANが販売開始 小川香料、JA全農おかやま、農林中金岡山支店2025年9月26日
-
不二家と共同開発 山梨県産すもも使用「ニッポンエールパレッティエ」新発売 JA全農2025年9月26日
-
岩手県産純情りんご「紅いわてフェア」26日から開催 JA全農2025年9月26日
-
「WTTスマッシュ中国」開幕 卓球日本代表選手を「ニッポンの食」でサポート JA全農2025年9月26日
-
「JA共済マルシェ」を開催 全国の農産物・加工品を販売 防災特設ブースも設置 JA共済連2025年9月26日
-
茨城県水戸市、静岡県浜松市における蓄電所事業へ参画 JA三井リース2025年9月26日
-
吉野梨「新高」台湾へ JAやつしろ2025年9月26日
-
企業型確定拠出年金の全国普及へ 岡三証券グループと合弁会社設立 農林中金2025年9月26日
-
協同組合の存在価値を考える 日本協同組合学会の杉本貴志会長が講演 日本共済協会2025年9月26日
-
農業の従業員給与「上昇」6割超 稲作、酪農で増加 日本公庫調査2025年9月26日
-
アジアイネとアフリカイネの雑種障壁を克服 稔性雑種の育成手法を確立 国際農研2025年9月26日