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協同組合間の協同へ、ネットワークを広げるチャンス 東京農大が「農協に関するシンポジウム」開催2024年11月11日

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東京農大の総合研究所(総研)農業協同組合研究部会は11月8日、「総合農協運動における農の価値発揮の新ネットワークの組織・事業・経営の展開 2025国際協同組合年・新食料・農業・農村基本法・JA全国大会・農業経営の多角化の中で」をテーマにシンポジウムを開催した。4つの基調報告と識者のコメント、全体討論で活発な議論が行われた。

活発な意見交流(シンポジウムの様子)

活発な意見交流(シンポジウムの様子)

冒頭、東京農大の江口文陽学長によるビデオメッセージが紹介された。江口学長は最近の気候変動やウクライナとロシアの戦争などによる生活者、生産者への影響に触れ「持続可能な農業に向けた議論で少しでも解決の道筋に進みたい」と開会のあいさつを述べた。

協同活動と総合事業の好循環を

シンポジウムの趣旨・狙いと第1報告を行う白石正彦総研農業協同組合研究部会長座長の白石正彦
東京農大名誉教授

続いて、シンポジウムの座長でもある白石正彦総研農業協同組合研究部会長(東京農大名誉教授)がシンポジウムの趣旨と狙いを説明した。内容は①2025年の国際協同組合年にあたり、ICA(国際協同組合同盟)の理念のもとで、これからの日本の総合農協運動の展開方向を明らかにする。②第30回JA全国大会の大会決議を踏まえ、来年からのJAと連合組織の3か年計画づくりの戦略的指針の論点と具体的な展開方向を論議するとした。

白石座長は続いて第1報告を行い、国際協同組合年の意義やFAO(国連食糧農業機関)の資料に基づく食料不足の現状、食料・農業・農村基本法の改正内容、第30回JA全国大会の課題などを解説。総合農協運動では「ICAのアイデンティティ声明」の第6原則「協同組合間の協同」について「持続可能な農業食料システムへの変革に向けての協同組合セクター戦略の指針として、国内外の協同組合組織、組合員・役職者が連帯して取り組む使命があり、チャンスでもある」と指摘。そのためには当事者意識の醸成が不可欠であり「小さな協同で自ら活動するという協同組合の本質が重要」とした。

第2報告を行う福園昭宏全国農協中央会常務理事のサムネイル画像のサムネイル画像福園昭宏全国農協中央会常務理事

第2報告は全国農業協同組合中央会の福園昭宏常務理事が「第30回JA全国大会決議をふまえたJAグループのすすむべき方向」をテーマに行った。

「2014年の改革論議から10年にあたり、3回の大会を経て自らの改革を進めてきた。3つの基本目標(農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化)は定着し、さらなる深化の時代に入った」と強調。

JAグループの存在意義として国際協同組合年に向けて「協同組合と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会を実現する」ことを提起。大会の副題にも「協同活動と総合事業の好循環」を加えた点を説明した。

JA水戸の園部優代表理事組合長JA水戸の園部優代表理事組合長

JAの取り組みを紹介

JA水戸の園部優代表理事組合長は「水戸の組織・事業・経営基盤とシステムの現状と課題 JA水戸らしい農業の価値発揮の持続的発展方向」をテーマに第3報告を行った。課題として高齢化、デジタル化、次世代との関係構築を挙げながら「安定供給できる物流システム構築を進めており、同時に生産者の匠の技の伝承が必要」と指摘。近年の台風や豪雨増加や高温対策の必要性にも触れた。また、有機農業では今年1月に研究会を立ち上げ「近い将来は部会に格上げし、ブランド化も検討している」とした。
JAいちかわの今野博之代表理事組合長は「JAいちかわの絆づくりの取り組み 新たな協同組合の景色の創造を目指して」をテーマに報告した。

都心に近接しながら営農が盛んな特性もあり、管内の自治体は「住宅地と農地の調和」を掲げた街づくりが進んでいる。そのため、JAいちかわでも「住宅ローン貸し付けを本格化し、都市農業の一番の強みを発揮」している。また、梨のアラブ首長国連邦や東南アジアへの輸出、地元企業との農商工連携による規格外農産物の有効活用による商品開発を推進している状況。さらにJAファン作りに向けた「女性大学の開校」や地元での祭り、農産物直売、PR活動など多面的な活動で「重点目標の『農業振興応援団(准組合員)』の拡大が目標の5000人を突破」している状況を示した。

政局流動化で政策転換も

JAいちかわの今野博之代表理事組合長JAいちかわの今野博之代表理事組合長

4つの報告を受け、3人の識者がコメントを述べた。谷口信和東京大学名誉教授は気候危機や世界各地での戦争を背景にした食料安全保障や食料自給率を巡って「基本法改正の本来的な最重要政策目標は食料自給率の大幅な向上」と指摘。総選挙後の政局の流動化から「直接所得補償導入への政策転換の可能性がある」とした。

日本協同組合連携機構(JCA)の阿高あや基礎研究部主任研究員は、農業協同組合と生活協同組合との違いも紹介しながら、「国際協同組合年では形式的なイベントや(都合のいい部分だけをとった)チェリーピッキングではなく、業種や地域を超えた連携が現場で実際に展開されることが求められる」と指摘。そのためには多様な人材育成や組合員の教育が不可欠であることを解説した。

東京農大地域環境科学部森林総合科学科の佐藤孝吉教授は専門の森林組合の歴史を紹介し「地域づくりは地域内のあらゆるセクターが連携し、森林や農地・農業あるいは畜産・漁業を土地利用という側面や自然循環の視点で強い連携が必要になる」とし、森林組合や農協、生協などの協同組織の相互連携に期待する考えが示された。

報告とコメント、一般参加者による討論が行われ、白石座長は「中期3か年計画作りやJAの現実からネットワークを広げるヒントや、あるいは政権の変化の中にもヒントがあることが示された」とまとめた。

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