「この国になくてはならない協同組合」 国民理解が重要 協同組合基本法めぐりシンポ JCA2025年2月4日
「協同組合はよりよい世界を築きます」をスローガンとした2025年国際協同組合年(IYC)の今年、IYC全国実行委員会は協同組合の振興を図る国会決議の採択を求めて要請活動を行っている。同時に日本協同組合連携機構(JCA)が設置した協同組合法制度研究会は昨年3月、「新たに協同組合基本法を制定する必要がある」との提言をまとめた。その実現をめざしJCAは1月28日に「協同組合法制度に関するシンポジウム」を東京都内で開いた。シンポジウムでは基本法制定のためには「協同組合はこの国になくてはならないものとの国民の理解が重要」と強調された。
協同組合法制度に関するシンポジウム
シンポジウムでは研究会座長の増田佳昭滋賀県立大名誉教授が提言の内容などを報告した。
増田氏は経済的格差と貧困、社会の分断など深刻化する社会問題の解決のために、地域住民、市民が自主的に参加し協同の力で課題を解決する必要性が高まっていると指摘。「提言」ではそのために協同組合の現代社会における役割を宣言し、協同組合の発達を促進するために、新たな協同組合基本法が必要だと提起した。
日本は主要国のなかで統一協同組合法が存在しない例外的な国だが、新たに発生するさまざまな問題に弾力的に対応するために自由に協同組合を設立できる制度的な仕組みを整えるためにも基本法が必要になる。
韓国では2011年に協同組合基本法が成立して以来、2500を超える新たな協同組合が生まれているという。
増田氏は日本には約55の基本法があり、その性格は「理念法」で「理念、考え方を基本法に書くことによって意識の変化と行政の方向性を決める有効性がある」などと指摘し、例として都市農業振興基本法を挙げ、「かつては農地は都市発展を阻害すると考えられたが、180度変わった」と述べた。
元農水事務次官で農林中金総研の皆川芳嗣理事長は格差や社会の分断、トランプ政権によるパリ協定の脱退など、国際的な視野からも「対抗軸をどう作っていくか」が問われており、協同組合基本法の必要性は増していると指摘。
そのうえで「JAや生協は地域に最後まで留まる基礎インフラと言っていい。地域の守り手としての協同組合と、その連携の必要性を基本法に書き入れるべき」などと述べたほか、法制化をめざすには超党派の議員連盟(協同組合振興研究議員連盟)がすでに結成されていることから議員立法も視野に働きかけるべきことも指摘した。
元厚生労働事務次官の鈴木俊彦日本赤十字社副社長は人口減少社会で自治体の力も弱まるなか、「地域の結びつきをどう再構築するか。それにいちばん力を持つのは協同組合」と指摘しながらも、基本法は「協同組合の視点からでは実現しない。国民全体に、この国に協同組合はなくてはならないものだ、と理解してもらうことが重要だ」と強調した。
こうした理解を広げるには「地域での実践を見せること」と指摘した。
協同組合には食と農はもちろん、再生可能エネルギー、雇用の創出、社会福祉など多様な課題が期待されている。その一方で現在の法制度では生協への員外利用規制など存在し、たとえば、地域の買い物弱者解決のための生協を中心とした協同活動などの壁となっている。
増田氏は「協同組合は問題解決のための仕組みであり、問題が変われば仕組みも変わる時代の子」と指摘し、民主的で弱者も参加できる協同組合の価値の重要性を改めて指摘した。
比嘉政浩JCA専務理事は「協同組合関係者以外から基本法が必要だという声が出てくることが大事だ」として運動を広げる方針を示した。そのために地域での協同の実践を地域住民に「見える化」することも国際協同組合年に期待されている。
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