【特別寄稿】"農協改革"の狙いと本質 加藤善正・岩手県生協連合会会長理事2014年6月12日
・協同組合への攻撃
・じゃまな相互扶助
・「家族年」をバネに
・若者の未来を奪う
安倍政権が進めようとしている"農協改革"。それも、規制改革会議では議論にもならなかった中央会の廃止に的を絞った感がある。その狙いと背景は何か。「小泉構造改革以上の劇薬」と、同じ協同組合組織として、岩手県生協連合会の加藤善正会長は、国民的大運動を起こし、阻止すべきだと主張する。
TPPと結合した
阻止運動を
◆協同組合への攻撃
安倍内閣の規制改革会議が提唱する「農業改革」は、疲弊する日本農業・農村に対する“劇薬”である。特に“農協改革”はJA中央会制度の廃止やJA全農の株式会社化、JAの信用・共済事業の分離、准組合員の利用制限など、「農協解体」とさえいえる、目を疑いたくなるような危険な内容である。ひとりJAグループの組織問題だけではなく、わが国の協同組合陣営全体への攻撃であり、食の安全・安心、農業の持続的発展を願うすべての国民の喫緊の課題として、TPP(環太平洋連携協定)参加問題以上の大運動を展開すべきであろう。
いまこの問題を考えるとき、私たちは「小泉・竹中構造改革」が日本社会と国民のくらしに何をもたらしたか、できる限り正確に深く分析しなければならないと考える。あらゆるところで進む差別と貧困の拡大、地方の衰退、社会保障制度の崩壊、一握りの巨大企業の繁栄と肥大化など、いわゆる「新自由主義」のもたらした数々の弊害を直視しなければならない。
小泉構造改革は雇用ルールの破壊をもたらし、派遣切り・ネットカフェ難民・ワーキングプアーを生み、若者の未来を奪った。毎年2200億円の社会保障費の抑制は、医療・介護・生活保護など、「福祉国家日本」の言葉さえ奪った。ある統計によると2002年から08年の7か年で国民の負担増を計算すると、実に50兆円近くになる。その一方で1998年以降の10年間に、大企業や大資本家への減税額は、累計で40兆円にもなるという。
「三位一体改革」の名による地方財政の危機は、消えゆく自治体としてクローズアップされており、平成の大合併も多くの矛盾が露呈している。農業予算の減額や自由化の推進による日本農業・農村は後継者難・耕作放棄地の拡大・生産物価格の低迷などの深刻な疲弊を続けている。今度の「農業改革」などは、その結果責任の放棄であり、日本の家族農業の破壊、食料の海外依存の一層の拡大を狙っている。
◆じゃまな相互扶助
さて今回の「農業改革」「農協改革」の本質とその狙いはなんであろうか。私は次の3点を強調したい。
第1は、小泉改革以上に日本の国の形をアメリカのような「新自由主義」の社会・経済・国家体制に変革する上で、協同組合のような相互扶助・助け合い・平等などの理念や哲学に基づく勢力を一掃して、一部の多国籍企業(投機的グローバル金融・輸出企業)の論理を貫徹する国家経済・社会づくりである。
第2は、これから国の形を変えるTPP体制による市場競争原理主義を完成させる上で、TPPに反対、もしくは抵抗する国民的運動を全国的に指導してきたJA中央会に対する脅しと取引、運動の切り崩しの材料として加えられている攻撃である。
第3は、これからの日本農業のビジョンを、小規模家族経営の排除、JAに依存しない競争原理を主張する規模拡大した自立農業経営体への支援、協同組合共済・信用事業を狙う国内外の保険・金融資本の野望、大規模好立地農地を狙う大企業の土地取得など、いずれも日本とアメリカの巨大資本の長年の願望の実現である。
◆「家族年」をバネに
2012年は国連の提唱した国際協同組合年であり、今年は同じく家族農業年である。リーマンショックに示されたグローバル金融資本の弊害、増大する人口の食料確保、地球環境の危機的破壊などに対する国連の問題意識は明確であり、協同組合こそ地球の未来を救い、築く「理念・実践・組織体」であり、希望の姿であるという。
こうした人類的・未来志向をもたず、「全ては経済成長最優先」「競争こそ最大限の宝箱」「目先の金儲けに賭ける利己主義者」などの輩(やから)が造り出した妄想と、利己主義の醜い暴挙とさえ想える。
◆若者の未来を奪う
彼らの暴挙と闘うには、わが国の全ての協同組合陣営が「わがこと」として、この本質と狙いを真正面から捉え、協同組合の理想の実現に立ちあがらなけれなならない。JA全中も自民党議員への要請に矮小化せず、自らの正しい主張と実践に確信を持ち、国民的期待に沿って、TPP参加反対運動と結合した戦いが期待される。
岩手県では、県協同組合間連携協議会が反対声明を採択し、県選出国会議員への要請、県議会からの政府への意見書提出請願を予定している。7月18日開催予定の第92回国際協同組合デー岩手県集会では、この問題を中心に学習を深める計画である。
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