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【農業・農協改革、その狙いと背景】設立過程から見た中央会と農協「改革」 北出俊昭・明治大学元教授2014年12月12日

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・全指連が抱えた財政問題
・中央会の役割に期待
・設立時の理念を忘れず

 現在、農協「改革」は中央会問題を突破口として進められている。ここでは中央会設立の経過を明らかにし、この問題への対応を検討したい。

全指連の改革で誕生
総合指導の機能を明記

 

 昭和23年、全国指導農協連(以下「全指連」)が農協の組織指導、生産指導、農政活動の三つの事業を基本に発足したが、26年には農地改革が一段落したこともあり農地委員会、農業調整委員会、農業改良委員会を統合した農業委員会が発足した。この農業委員会の事業に農業改良事業や農政活動があり農協・全指連と競合したため、もともと帝国農会系と産業組合系の意見対立があったこともあり農業団体再編成が発生したのである。
 この団体再編成問題を解決すべく農業委員会法と農業協同組合法の一部改正案が第15国会(昭和28年3月)に提出されたが審議未了となり、さらに自由党、改進党、日本自由党の3党の有志議員よる修正案が議員立法で第16国会に提出された。これも審議未了となり、結局、議員提出の両法案は第19国会(昭和29年)でようやく成立した。それに基づき農業委員会では都道府県農業会議―全国農業会議所、農協組織では都道府県農協中央会―全国農協中央会がそれぞれ発足したことは衆知の通りである。
 この農業団体再編成が発生した背景にはサンフランシスコ条約後のわが国の政治的、経済的および社会的変化があったが、直接的には食糧需給がまだ不安定で農業生産の増大が強く望まれているにもかかわらず農協、農業委員会、農業改良普及制度など関係組織の指導が不統一で、その役割が十分に発揮されていないためであった。

 

◆全指連が抱えた財政問題

 農業団体再編成問題が生じた要因の一つに農協制度問題があったが、その中心は全指連問題であった。それは農協には食糧増産などの国家的、国民経済的で公益的役割があり農協の経営改善と組織整備が極めて重要な課題になっていたにもかかわらず、全指連は農協の総合指導機関として本来果たすべき役割を果たしていなかったからである。
 その要因に、全指連は法律的には他の連合会と同列とされていたが実際の地位は相対的に低位で、会員組織からの賦課金・負担金や補助金に依存していたものの財政的基盤は極めて脆弱であった。このため農政運動では実行委員会をつくり賦課金とは別に運動経費を徴収したり、経営・事業運営指導も特別の経営対策中央協議会で行い、また名目の如何にかかわらず事業推進費用を各事業連から特別会計で調達したりする例も見られたのである。職員も「出張は往きの切符だけで帰りの切符は未収金を回収してあてた」のが実態であった。

 

◆中央会の役割に期待

 こうした全指連を改革するため発足したのが中央会で、とくに次の特徴を指摘したい。

○全農協の上位に位置づけ

 中央会の最も重要な特徴は、全農協の総合的指導機関として全国連を含めた全農協の上位に立って指導を行う組織と位置づけられたことである。中央会が会員であるか会員でないかにかかわらず全組合に対する指導を行うこととされ、公共的性格を有する非営利法人といわれるところにある。農協法上中央会がこのように位置づけされたのは、全指連の改革を目指した結果なのはいうまでもない。
 現在進められている中央会改革については全指連構想の意見もあるが、農協法に規定されていたとはいえ全指連が辿った歴史をしっかりと認識しておく必要がある。

 

○公共的機能で農協法上に

 こうした位置づけから、当然、中央会は協同組合として農協法上の組織とされた。法案審議では経営監査指導を徹底するためには新たな指導機関(監査連合会)の設置などの意見もみられた。しかし現実の農協は生産、金融、販売、購買などの事業を通じて直接農業と農家経済に関係しているので、総合的指導事業によって公共的役割を果たせるような農協育成を目指すには、中央会も別組織ではなく協同組合として他と事業連との一体的な推進が不可欠で、農協法上の組織とされたのである。
 現在、中央会を農協法上の法人ではなく一般社団法人とする意見もみられるが、他の事業連と別の組織では総合指導機能が発揮できず、中央会「不要論」にまで進む危険性がある意見といえる。

 

○他の機関と共に3つの事業

 中央会の行う事業は法律で規定されているが、発足に際しては全指連問題とも関連し、とくに生産・技術指導、組合の組織・事業・経営指導、教育情報と農政活動が強調された。もちろんこの三つの事業は中央会だけでなく全農協の、しかも他の関係機関と協力して取り組むべき課題であるが、この強調は総合指導組織として当然なことであった。
 さらに農政活動では中央会の建議について法律上では組合として形式的な制限があるとはいえ、協同組合が広範な事業を行っていることから、政府も「狭い意味の農業だけでなく農村生活や農村社会など非常に広く理解できる」と答弁しており、併せて中央会には各事業及び事業連との総合調整機能が重要とされたのである。
 なお、現在の中央会問題では監査問題が焦点とされているが、発足時でも不振組合が多くその改善が重要な課題でありながら三つの事業が強調されたことは、総合的な事業実施にこそ中央会の存在意義があったからで、監査機能だけで中央会を論ずべきでないのはいうまでもない。

 

○自主性と自治法律で保証

 設立に際し中央会は協同組合として自主的な組織であるが、一面では国家的公共的性格もあるとされたことは前述した。これは国が自ら行うべきだが直接行いえない事業を中央会が代わって行うことを意味するので、一部事業費の国庫負担は中央会の自主性とは矛盾しないとされた。農協法でも中央会について国庫補助規定があるのはそのためである。ただ、発足から60年が過ぎた現在、協同組合原則からみてその改善が望まれているのはいうまでもない。
 また制度問題では都道府県中は全中に当然加入であるが、単協の都道府県中への加入は自由になっていることが審議された。これについて都道府県中の全中への当然加入は中央会組織として一体的な取り組みが重要であり、単協の都道府県中への加入が自由なのは単協は地域によって多様でその実態に応じ自主的に加入を判断すべきであるからであった。
 これは都道府県中を全中の支会・支所としなかったことと併せ考えると、中央会の設立過程では組織の自主性と自治が重視されたことを示している。現在中央会が単協や農家の自主性を阻害しているとの批判があるが、これは設立経過と同時に実態にも反する意見なのはいうまでもない。

 

◆設立時の理念を忘れず

 これまでの検討から中央会は、会員であるかどうかにかかわらず全農協を対象とした総合指導組織であり、その機能の発揮には各事業連と同じ農協法上の組織として設立されたことが明らかである。もちろん現在の状況は当時と大きく変化しており改革すべきところも多いが、設立時のこの理念は疎かにすべきではない。そしてこの理念を基本に現在示されている新自由主義理念による「解体」ともいえる農協「改革」に対応することが必要であろう。


【付記】 本文では「国会議事録」、「農業協同組合制度史」、「全指連史」、「全国農業協同組合中央会史」を参考にしたが煩雑なためその都度の引用表示はしなかった。

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