JAの活動 解説・提言詳細

2015.02.26 
【農業・農協改革 現場からの発信】運動再建し、農業と地域に全力 組合員目線で運動と改革を一覧へ

【座談会出席者】
熊谷健一・農事組合法人となん 組合長(岩手県、JAいわて中央理事)
小内敏晴・JA佐波伊勢崎 統括常務理事(群馬県)
宮永均・JAはだの参事(神奈川県)
司会=田代洋一(大妻女子大学教授)

 「農協改革」の骨格を政府は決めた。全中の一般社団法人化と農協への公認会計士監査の義務づけや県中央会の連合会への移行などのほか、単協については非営利規定の見直し、理事の構成などの改正も行われる。改正法案は国会で審議されるがそこで問うべきことも多い。一方で自己改革を基本に、各地のJA自らが農業と地域のための信頼と支持を強固にする実践に踏み出すことが期待される。現場はどう考え行動すべきか。緊急に話し合ってもらった。

運動を総括して地域から再生へ
現場のトップがもっと発信を

熊谷健一氏 田代 「農協改革の法制度の骨格」については2月9日にJA全中も受け入れ、政府・与党で合意しました。最初に今回の「農協改革」についての受け止め方をそれぞれお聞かせください。
 小内 政府は当初、全中そのものの廃止などという高いハードルをちらつかせて、最終段階では農協にとっていちばん痛い話、つまり、准組合員の利用制限を持ち出し、これと全中の監査権を秤にかけて二者択一を迫る構図にした。本当なら両方ともまかりならんという話が結局、全中がいわば犠牲になるかたちで准組合員の利用制限は現時点では導入しないとなった。
 ただし、考えてみると全中の代表機能は農協組織の根幹に関わる話で、これを失うとジェット戦闘機の舵を壊されたのと同じで前に飛ぶことはできるかもしれないが、どこに行くか分からない、糸の切れた凧になってしまいかねない可能性がある。私はどんなかたちであれ代表機能を一日も早く復帰する、あるいは温存する道を考えなければいけないと思っています。
 宮永 全国一枚岩になって活動し運動するためのコントロールセンターがなくなっていくというのはまったく同感です。こういう状況のなかでどうしていくか。
 佐賀県の県知事選ではJAの行動によって結果を勝ち得たということもありました。今風の百姓一揆で評価すべきことではなかったかと思っています。あれに習ってもう一度、地域JAの役職員が意思統一し組合員と准組合員も巻き込みつつ経営努力、地域貢献をしていくことがやはり大事だと思っています。
 熊谷 全国中央会の後ろには県中央会と単協がある。現場にとって羅針盤を失うということに黙っているわけにはいかない。それに代わる新たな組織の方向づけを県も単協も急ぐべきだと思います。 
 それから言われるまでもなく、やはりこれを契機にもう一度農業協同組合の原則について役職員が勉強すべきだと思う。今度こそ自立して農協を運営していかなければならないわけで、役員と職員の勉強が大事です。
 田代 改革の方向は、県中は連合会とし農協として残し中央会と名乗ってもいいということです。しかし、それならなぜ全中はいけないのかという問題は強調したいと思います。しかし、ご指摘のように羅針盤、司令塔を失うような方向ですから、やはりナショナルセンターとして結集できる組織を自ら作っていかなければということですね。
 小内 第一ラウンドの結論は出されたわけですから、まずはきちんと総括すべきだという声も聞かれます。そうしないとJAグループのリーダーとしての新生組織づくりに向けた取り組みも始めることができないと思います。

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熊谷健一氏

◆農協は農家が集まった組織

 田代 自己改革に取り組むにしても、運動の経過も含めきちんと総括すべきだという指摘もあると。
 宮永 同感です。昨年末の総選挙での対応も考えなくてはなりませんし、総選挙後にどうなったかもしっかり検証しなければなりません。そこからどんな動きが出てくるか、今回決まったことと合わせて精査する必要があると思います。今後は3年、5年というスパンで問題が設定されているわけですから、地域のJAとしてどう戦い、どう生きていくか、これにかなり力を集中すべきではないかと考えています。
 熊谷 今回の農協改革をめぐる運動は全部、上層部だけで末端まで浸透していなかった感じがします。地方の市町村からの声を活かすことができなかった。しかし、市町村会、県議会の声が実は単協の声になるわけですから、今後はこういうかたちでの意思反映も運動のなかでもっと考えるべきだと思います。
 田代 4月の統一地方選を控え政局もやはりだんだん地方に移っていきますから、地域農政としても農協改革を問題にしていく必要があるということですね。もっと市町村レベルでの連携が大切だということでしょうか。
 宮永 農協改革とはいったい何なのか?、との質問を受けましたが、実際、地方議会議員は農政や農協を分かっていないと感じる現実もあります。ですから私も専門家の手による解説書やいろいろな資料を使ってしっかり説明する努力をしています。こういう働きかけをもっと大事にすべきだと思います。
 小内 私たちも農協改革の問題点を解説した資料を地元の全県会議員・市会議員に配りました。今のお話のようにまるで人ごとみたいに思われている面がありますからね。

◆准組合員もっと巻き込んで

小内敏晴氏 田代 自民党の国会議員にしても官邸が農協改革で何をやろうとしているのかまったく理解していない。この改革が農業所得向上にどうつながるのか分からない、というのはまさに常識的な実感なのに、そこを政治も問題にできないままでした。
 では、改めて全中・県中にどのような体制や機能を望みますか。
 熊谷 いちばん期待しているのは農業協同組合の原点である教育機能です。言い換えれば、今こそ役職員への教育機能をもっと強化する時期になったのだと考えたいです。
 それから農協の販売機能の強化です。今のように全農頼みではなく、単協として自ら販売、あるいは輸出する機能を発揮するため、全農と役割分担をして農協を強化していく必要があると思います。それを単協にいかに指導するか、全中、県中が相当に力を入れる部門だと思います。
 宮永 私たちには地域JAがさらに力をつけなければいけないという状況を突きつけられているわけです。これには自己改革としてJAが地域営農ビジョンを立案するということになっていますが、これにしっかり取り組める体制づくりを全中なり県中が中心となって指導してもらいたいです。それには最低限の財務基盤の確立と、正組合員、准組合員を含めた新たなJA経営を構築できる取り組みを進めていくことが最優先課題ではないかと思っています。そのためにも中央会の力が必要になってくる。
 私たちのJAでは准組合員が新たな担い手だという位置づけもしています。市とJAが一体となって都市農業支援センターを設置していますが、実際に60人ほどの新規就農者が定着しています。こういう新たな担い手を巻き込んだ営農、販売体制の確立ができればと考えています。

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小内敏晴氏

◆総合事業が基盤 営農と生活支え

 小内 今回の農協改革ではどうも農家と農協は違うものだという論調で考えられてしまったと思います。農協は農家のためになっていないなどと非難されています。
 しかし、農家のかたまりが農協であって、農協が農業振興に役に立っていないという論調がまかり通っているのはおかしい。
 本来、全中にしても全農にしても、それから県中、県連その他の組織も最高責任者は単協の組合長ですね。農協改革といいながら、そうした組合長さんたちの顔があまり見えなかったように思います。
 萬歳全中会長が先頭に立たれていることはもちろん見えていますが、それ以外にもいろいろな場面で多くの組合長さんにもっともっと表に出てもらい、農協は農業者のかたまりであるということをアピールすべきだと思います。 その意味でこれからも事あるごとに組合長のみなさんには、全国レベルで、あるいは各ブロックで集まってもらい意思疎通を図り世の中に発信していくという手づくり的な会議ももっとやっていく必要があると思います。
 田代 今回の改革では、中央会監査から公認会計士監査に移行することになりました。これにはどう対応していきますか。
 宮永 やはり懸念されるのは費用の捻出です。全中の試算では全国監査機構監査では55億円ですが公認会計士監査に移行すると86億円になるといいます。この費用が課題になると思います。
 それから公認会計士監査になると、現在の部門別配賦基準について、恣意的な基準だとして否認されるのではないかと懸念します。部門別配賦のなかでとくに営農経済事業については多くのJAが苦戦しているところだと思いますが、ここにどう的確に対応できるか。ただ、全国監査機構が新たな監査法人になっても業務監査と会計監査の両方を行うことができるということですから、いい方向は残ったと思います。
 田代 JAは総合事業体ですから、部門別損益計算といってもやはり客観的な基準があるわけでなく、それぞれのJAでさまざまな要素を勘案して行われていると思います。
 むしろそれこそ農水省が部門別損益計算についてのやり方を示すことも考えるべきだと思いますが、これは単協の自主性に任せるということになっている。しかし、あるべき姿を考えることも課題です。
 熊谷 公認会計士監査と農協の事業の考え方は全然違う。農協は組合員への奉仕が目的であって利益を追求しないという組織で、監査も指導的立場から行われてきました。一方で公認会計士監査は利益を追求する組織のための監査です。現状のままでは全く相反するわけですが、それを切り替えていけるのかと思います。農協に対する監査基準をどうするのか、それによっては農協が農協でなくなるという問題もあります。
 小内 私はやはり今の全国監査機構を一日も早く正式な公認会計士事務所に成長させていくことが大事だと思います。今は公認会計士が30人ほどいるということですがこれを10倍程度に増やしていく。 一方でそれまでの間、JAは暫定的に一般の公認会計士事務所の監査を受けることもあるでしょうから、そのためにも公認会計士会側と全中や県中が協議をして農協監査はこうあるべきだというすり合わせをし、一定の合意に基づき公認会計士監査を実施するようにする。
 そして1日も早く全国監査機構から新しい監査法人を立ち上げ育成を急ぐことだと思います。
 田代 具体的に問題になりそうなことは、やはり部門別損益計算ですね。信用・共済は黒字、しかし、農業関連事業は赤字、だからこれは切り捨てたほうがいい、という話になってしまいかねない。
 小内 そう指摘されたときには、では、企業の研究所は黒字ですか? と問い返したい。企業の研究所は、その企業のアンテナ的な役割を果たして先鋭的な技術を取得し、企業が成長していくためのなくてはならない部署として位置づけられているはずです。
 しかし研究自体は利益を生まないから赤字ですよね。それと同じように農業関連事業が仮に赤字になったとしても、農協の総合事業を健全に育成していくためには、これは必要なコストだということをきちんと主張していく。この経費を負担できなければそもそも総合農協は成り立たないということを理論的にもしっかりさせておく必要があると思います。

◆今こそ協同組合教育の強化を

農業関連事業の赤字が問題にされますが、農業参入した企業の農業経営体1500ほどを対象にした調査ではほとんどが赤字だということです。こっちが問題にされないで農協事業のなかの一部門の赤字が問題になるというのもおかしな話です。
 田代 これから問題になるのが准組合員の利用制限の問題です。これについてはどうお考えですか。
 小内 そもそも現在の農協法では准組合員の利用を認めているわけですから、権利があるということです。その権利には短期的なものばかりではなくJA共済のように終身といった長期の権利もある。これに制限をかけるのはおかしくないか。権利の侵害ではないか。准組合員は共益権がないけれども農協事業を利用して豊かになりたいと思って参加してきた方々です。この方々の権利を奪う権限が国にあるのでしょうか。
 宮永 私たちのJA管内でも准組合員の利用制限がされると貯金難民となる人が出る地域もあります。農協しか金融機関がないという地域の実態もあるわけです。
 小内 農協は職能組合か、地域協同組合かという話があります。農水省は職能組合に徹しろといいますが、しかし、どう考えても実態をみれば農業者を主たる構成員とする地域協同組合に近い。
 宮永 それぞれ置かれた環境が違っても、JAが行う地域づくりはかなり進んでいると思います。地域住民全体を対象にした活動のなかから准組合員にも加わってきます。さらに営農活動を積極的に行うと場合によっては正組合員にもなる。
 准組合員の利用制限問題では、農協は本業の農業振興をおろそかにして信用事業に特化しているとの指摘があります。それを跳ね返す取り組みをこの3年、5年の間に中央会を中心にして進めていくべきだと思います。
 小内 たとえば、私たちのJAでは直売所の売上げの0・1%を学校図書の購入支援として26校に寄贈しています。なぜ図書の支援なのかですが、子どもたちが好きなだけ本が読めるようにと考え、それならお母さんたちに直売所での購入を呼びかけお子さんたちに還元しようということです。直売所の売上げは年13億円を超えていますから、0・1%は130万円ほどになります。
 今、格差社会が問題になっていますが、子どもに本を買ってあげることに苦労している家庭もあります。そこに貢献することも地域活動だと思います。

宮永均氏

(写真)
宮永均氏

◆自らの組織の意思 参加・参画で決定

 熊谷 われわれの地域では20年も前から集落活動には参加したくない、まして役員などやりたくないといいながら、組合員としての権利は主張するという問題が起きてきて、これでは農協は潰れるということから全集落にJAの職員を支援役、JAとのパイプ役として張り付けました。
 そこで組合員の声を吸い上げて考えたのが営農活動プラス生活活動が大事だということです。たとえば高齢化して農業はもうできないからと周囲に任せても、集落での生活は続くわけです。それがいやだと東京に出ていくわけにはいかない。それならばと集落で幸せに暮らす生活活動を強化してきたわけです。生活活動とは協同活動、教育活動です。健康管理活動や子どもたちを対象にした学童農園、高齢者の野菜づくりと直売所の運営など、こういう活動を全部集落のなかに位置づけた。農地は担い手に貸してはいるが准組合員として集落活動に参加しJAとのつながりを保って、それが集落も維持することなっているわけです。
 地方創生というが、准組合員の利用制限など安倍総理の進める農協改革は地方創生と矛盾します。農協が地域づくりを進めているから、過疎地域も限界集落もまだまだがんばっている。逆にいえば農協は地域に、集落に、徹底して入っていってはじめて評価される組織だと思います。集落、支所を最重点にした農協事業、運動が重要です。
 田代 准組合員問題についてJAグループは、准組合員の共益権をどう与えるかという問題を考えていこうということのようです。これについて現場ではどう対応していますか。
 宮永 JAはだのは正組合員も准組合員も同じ組合員であるとして隔たりなく対応しています。農協の基盤組織である生産組合の核となる人は当然、正組合員の農家の方々ですが、そこに結集する准組合員の方もいて生産組合には准組合員も加わっています。具体的には研修会などに参加して地域に関わりを持ってもらい、地域協同活動をさらに発展させて農地を守り農業生産もしてもらおうということです。仲間が仲間を呼ぶような組織づくりですね。
 それからJAは総会を開くことにしているほか、地区での座談会も開催していますが、そこに准組合員も参加してもらっています。総会には1600人ほど出席しますが半分は准組合員です。議決権はありませんが発言はできます。
 こういう状況のなかで准組合員の共益権については、まずは理事に加わってもらうかたちはどうかと考えています。地域からもそういう声が出ています。理事や総代、あるいは経営管理委員会制度なら委員の何人かを准組合員とし、その方たちに議決権を与える方法が当面は望ましいのではないかと考えいます。
 田代 准組合員自体に共益権を与えるのではなくて、理事を選出しその人は議決権を持つということですね。
 宮永 正組合員数3000人に対して准組合員数は1万人ですから、こうした工夫によって准組合員の結集力が高まるという期待があります。一方で今回の法改正では理事に認定農業者や販売のプロを、という規定も入る方向ですから、なおのことバランスのとれた理事構成を考えていく必要もあると思います。
 小内 私たちのJAではさまざまな研修旅行や文化イベントを企画し、准組合員にJA事業に参加してもらうことをまず考えてきました。
 それから女性組織としては女性協議会があります。この協議会のもとに女性部、助け合いの会、フレッシュミズ、文化サークルなどが参加しているという構成です。そしてこの協議会からは推薦で理事2名、参与1名を出してもらうことになっています。組合長が指名するわけでなく女性協議会傘下の団体で調整して選出しています。
 田代 そうするとサークルなどには非農家の女性も参加しているわけでしょうから、そうした女性も理事になる可能性があるということですか。
 小内 当然そうです。かつては理事就任時には員外という女性もいました。
 田代 こうした事例を聞くと組合員が自主的、民主的に理事を選んでいるのに法律で構成員を決めるというのは問題があると思いますね。
 小内 恣意的に専業農家の意見が反映するような仕組みをつくるということは組織論からすればおかしいと思います。正組合員のほとんどが兼業農家だったら最大公約数の兼業農家の意見を吸い上げるのが民主的な組織ではありませんか。
 田代 しかし、政府は、それがけしからん、だから農業の成長産業化ができないんだというわけですよ。
 小内 ただ組織論から考えると何のために一人一票制があるのか、となる。ここにしか私たち組織の正当性はない。やはり国から何と批判されようと組合員の最大公約数の意見を反映していく役員構成を考えないと、われわれの立ち位置はないと思います。
 田代 もちろん兼業農家の意見だけでいいというわけではないにしても、やはりバランスのとれた意思決定をする必要があるということですね。 小内 そうです。それから准組合員の共益権問題でも准組合員組織を理事会に意見具申できるような機関として位置づけていくという考え方もあると思います。そんな仕組みをつくれば意見を聞くだけの段階から一歩進むと思います。
 田代 議決権はともかくとして、実際に意見を述べることはできるということですね。 宮永 JAに運営参画してもらうということになりますね。
 小内 それを実現するためにも、組合長と今話し合っているのは理事会傍聴です。広報誌などで理事会傍聴を呼びかける。
 宮永 私もまったく同じで青年部に傍聴を呼びかけています。

◆「奉仕」こそ農協 目的を見失うな

 田代 もうひとつの問題は農協法8条の非営利規定の見直しです。
 農協は的確な事業活動で利益を上げて、投資に当てたり利用高配当をしなさいということです。そうなると出資配当はだめということなのかと思いますが、この問題はどうお考えですか。
 小内 出資配当は赤字でない限り必ず実施しています。やはり出資をしてくれた人に最低限のお返しとして貯金利息相当までの出資配当は必要だろうと。ただ、それ以外の余剰は利用高配当に回していくという考えで、販売と購買事業を中心に事業ごとに利用高配当をしています。
 それと同時に旅行や演劇など、文化的な事業面で費用の一部負担というかたちで還元もしています。やはり組合員さんの生きがい、やり甲斐を考えるということも大事で、単なる配当金を戻すのではなく組合員の家族のみなさんにも何かしら還元する方法を考えているということです。
 宮永 農協法8条に規定されている組合員への“奉仕”ということが削除されてしまえば協同組合はおしまいということになると思います。現状ではJAはだのは出資配当は3%、利用高配当は定期貯金に対して0・1%で実施しています。ただ、協同組合ですから利益という言葉を使わずに剰余と言ってきたわけです。剰余ですから最終的に組合員に還元をするということです。
 しかし、今回の改正では事業をやっているのだから利益を追求するんだ、というわけです。そこはそもそもの考えが農協の事業と違う。農協も利益を上げそれを還元するということですが、これは本当に新しい協同組合になるのかという不信を持っています。
 田代 昨年の雪害時には、JA佐波伊勢崎はかなりの補助金を出してハウス復旧の支援をしましたが、期末に利益を上げ、それを配当しなければならないということが目的になればあのようなことは絶対にやりませんね。
 小内 もしものときに備えて積立もしていたから10aあたり10万円という支援もできたのだと思います。
 それが利益を上げること自体が目的になると、どうしてもハイリスク・ハイリターンという考えも出てくる。たとえば、思惑を持って組合員から買い取り、端境期を待ってそれを売るというように。それこそリスクを抱えることになる。これで協同組合として果たしていいのだろうかということです。


◆どんな農協に? 現場から理念を実践

 田代 それでは、最後にこれからの農業振興と地域づくり、そして農協のあり方を考えるために熊谷さんから「となん」の取り組みや今後の方向をお聞かせください。
 熊谷 農事組合法人「となん」は、地区の水田面積の9割を占める約1000戸が出資して法人化しました。その理由は農家への意向調査で10年後に自分の農地を自分で管理する人は1割しかいなかったからです。そこで担い手に任せるといっても農地をまとめる必要があるし、その農地も基盤整備が必要なところもまだありました。さらに集落が協同して水管理、雑草管理などを行って行く組織化も必要があることから一戸1万円の出資で法人化しました。
 今後は将来に向けてこれを管理する農作業受託会社(農地管理会社)を順次つくっていこうと考えています。
 同時に一部の担い手による農作業受託会社だけでは地域は維持できませんから、野菜づくりや学童農園、直売所運営など地域住民を巻き込んで農地も維持していこうと、地域事業会社といった組織もつくろうと思っています。高齢者、女性、子どもたちまで活動できる場で農産物を作るしそれを利用するといった循環型の事業です。さらにこの組織は農地・水管理の直接支払金の受け皿でもありますから、これを使って集落の草刈り、水管理も行っていこうと考えています。
 この会社組織の出資は農地の出し手です。農地の受け手農家が負担するのではなく、地域に暮らす農地の出し手が負担して地域を維持していくということです。
 小内 農地の出し手にも出資してもらえば参加意識も出るわけですね。自分の会社でもあるわけですから。
 熊谷 私は将来の農協のあるべき姿も地域と市民を巻き込んだ農業振興と地域づくりだと考えています。
 宮永 准組合員の事業利用制限は再び問題になると思いますが、准組合員の意思反映、あるいは参画というかたちで農協運営にしっかり取り組む必要があると思います。JA自体がどんな組織をつくるのか、どんな理念をめざして取り組むのか、やはり組合員との話し合いだと思います。地域を巻き込んで組合員目線で事業の総点検を行って改革対応していくということが求められていると思っています。
 小内 こういう時期にあるからこそ協同組合の原則を語る協同組合人をつくっていく意識をわれわれも中央会も持つことも大事だと思います。
 田代 ありがとうございました。

【座談会を終えて】

 単協の役職者に急きょお集まりいただいての座談会の冒頭、ここに至る経過、運動の総括の必要性が訴えられた。中央で空回りしていなかったか。陳情に終わっていなかったか。今後5年間の戦いに欠かせないことである。
 県中は連合会だが全中は社団法人というのは全中を切るだけの話で、全く整合性がない。全国的統一運動をしていく羅針盤、司令塔の早急な再構築が訴えられた。
 各地で准組合員向けの事業展開、運営への実質参加がなされている。いきなり共益権を云々するより准組合員の理事登用から手をつけるべきことも指摘された。
 農事組合法人「となん」は、昭和合併村・旧農協の範囲で営農と生活の両面にわたる協同を組織化し、農協運動を下から支えていく動きとして注目される。
(田代)

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