JAの活動:JA 人と事業2015
【JA 人と事業2015】三角 修・JA菊池代表理事組合長 自ら考え行動する職員育成2016年3月22日
小集団活動で意思疎通
・専門の常勤講師で
・小集団活動で活気
・優れた提案は採用
・「やらされる」でなく
・多様な農家に対応
・畜産は10年先見て
JA菊池は平成元年の広域合併以来、職員教育、〝人づくり〟に努め、組合員の高い信頼を得ている。特に自律創造型の人材の育成をモットーに小集団活動や提案活動を通じて、自ら考え行動する職員の育成に力を入れ、他のJAの範となっている。同JAの三角修・代表理事組合長に人材育成の取り組みを聞いた。
小集団活動で意思疎通
◆専門の常勤講師で
――JA菊池の職員教育には定評があります。どのように進めていますか。
「菊池は一つ」を合言葉として平成元年に合併して以来、将来のJAを担う〝人づくり〟に取り組んできました。合併の3年後には、職員教育専門の常勤講師として熊本県農協中央会のOBだった川崎盤通氏を招へいし、内部研修や統一理念の策定、経営方針、職員行動基準づくりなどを行ってきました。その功績から、同氏は平成22年に「農協人文化賞」を受賞しています。
いまJA菊池には50歳を少し超える世代に優れた人材の層がありますが、彼らはそのころ川崎氏に育てられた世代です。いま考えてみると、当時の先人たちは、先のことを考え、本当によくやってこられたと、つくづく感じています。
しっかり教育して鍛えると、その組織は10年は大丈夫だということでしょうか。JAの役員は長くても3期9年ほどですが、職員は30年以上、そこで働き、組合員から給料をもらっているのです。従って組合員農家が頼りにするのは役員ではなく職員です。それだけに職員の教育が大事で、きちんとした理念を持っていなければ、組合員の信頼を得られません。
われわれは先人たちが育て、築いてきた人材や教育基盤を将来に引き継がなくてはなりません。それも先人たちに鍛えられた世代の職員がいるうちに若い職員を教育するのが、今のわれわれの役割だと思っています。私自身、農業の傍ら青少年育成アドバイザーの経験があり、教育が重要なことは常々感じていました。
◆小集団活動で活気
平成20年にJA菊池の副組合長に就任して感じたことは、さまざまな部署・部門が縦割り組織になっているため意思の疎通が十分に行われず、同じ部署にいても隣の席の職員がどんな仕事をしているのかわからず、またプライベートなことは言わないし聞かない、というような状況がしばしば見られました。
つまり、職場内のコミュニケーションができていなかったということです。そこで、こうした縦割り組織に横軸を通し、意思疎通を図ろうと思って始めたのが小集団活動です。それも早急な成果(結果)を求めずプロセスを重視する、従って完遂しなくてもよく、次年度持ち越しもOKという「JA菊池型小集団活動」です。
職員5~10人の任意のグループをつくり、どんなことでもいいからテーマを決めて自由に話し合い、その結果の報告を求めました。JA熊本県教育センターに依頼し、50を超える小集団の中から、優れた報告10点を選抜し、さらにそのなかから優秀賞6点を選び、全職員コンプライアンス研修会で発表するようにしました。
それも発表時間は6分です。いかにうまくまとめてわかりやすく発表するかも学習の一つです。始めてから5年目になり、確実な成果が見えてきました。自分たちがやってきたことが表彰され、充実感・連帯感が得られたこと、また提案が単なる思い付きでなく効果的か、効率的かを考えるようになるなど、テーマのレベルアップがみられるようになりました。
◆優れた提案は採用
こうした成果から、ある程度テーマを決めてもいいかなと考えているところです。いまJAには地域密着の事業・活動が求められています。JAと地域のライオンズクラブや学校、公民館活動とのコラボレーションの進め方などのテーマが、いまふさわしいのではないかとも思っています。
ここで出された優れた提案は関係部署へフィードバックして実現可能か検討します。また、同じように昇格試験でも、4等級から5等級、6等級から7等級へ昇格するときには提案書(レポート)の提出を求め、優秀なものは企画会議で検討します。
JA職員によるこうした提案は貴重です。畜産農家の担い手を対象にした「きくちのまんま経営塾」を昨年スタートさせましたが、 これはJA熊本教育センターの「未来塾」で最優秀だった職員の提案で実現したものです。18人の参加者がありましたが、軌道に乗せて海外研修もやりたいと思っています。
また青壮年部でも『チャレンジ事業コンペティション大会」を今年度から始めました。8支部の代表が自分の経営や活動を通じて新しい事業を提案する大会です。この最優秀の提案は、肥育効率を高めるため、普通28~30か月かかる肥育期間を22か月で出荷するというものでした。賞金はそれを実証するために役立ててもらおうというものです。
◆「やらされる」でなく
――これからどのような職員が求められるでしょうか。
JA菊池が未来永劫発展する組織となるには、職員一人ひとりの資質の向上が最重要課題と考えています。そのためには、「やらされる」のではなく、自ら考え、実行する力をつけてほしいと思っています。つまり〝自律創造型〟人材を育てることです。
その取り組みの一つとして、平成10年から実施している「さわやか窓口コンテスト」があります。職員の窓口対応によってJA菊池のイメージをつくることが目的で、職員一人ひとりが、JAの看板を背負っていることを肝に銘じ、明るく、さわやかな窓口づくりを心掛けようというものです。
単に対応だけでなく、店舗内・事務所周辺の清掃、トイレの清掃、机・カウンター等の整理整頓などもチェックします。17年を経過し、職場風土として根付いてきたと自負しています。
◆多様な農家に対応
――JA菊池は平成26年度の農畜産物の販売高約257億円。畜産を中心とする全国でも有数の農業地帯です。どのような地域農業のビジョンを描いていますか。
最近注目されている畜産クラスター事業には早くから取り組み、全国のモデルとして注目されています。いま全国的に繁殖雌牛の不足が問題になっていますが、管内では増えています。これは、将来の子牛不足を見通して、10年以上前から手当てをしてきた成果です。
一貫繁殖牛部会をつくり、年間4200頭の確保を目的に推進しました。部会員は95戸なので、1戸あたりでは45頭前後の規模になります。これは全国平均の4倍以上の規模です。現在はすでに4000頭を超え、いまは5000頭を目指しています。
これも先人たちが阿蘇の放牧で労力軽減するなどで、経営基盤を確立していたおかげです。われわれは畜産クラスターの取り組みをさらに強め、10年後にみんなが、あのときやっておいてよかったと、笑って言えるような畜産基盤をつくっておかなければなりません。
10年後ということでは、大事なのは担い手となる後継者の確保です。管内は、畜産農家約350戸で40歳以下の経営者が42%を占めます。耕種園芸農家では13%います。従って管内の農家は後継者に恵まれていると思います。新たな後継者を育てることは大きな労力が必要ですが、担い手にしっかり教育させて支援することも重要だと思っています。
◆畜産は10年先見て
JA菊池は明確に経済事業型のJAです。これからも農業振興を事業の中心に据え、農業所得の増大を図るのがJAの役割だと思っています。それには畜産を中心とする大型経営者のニーズに応えるとともに、自給的農家にも対応していかなければなりません。
これをいっしょにして事業を進めるのではなく、組合員の条件に応じたきめ細かい対応が必要です。それがJA菊池のとるべき地域密着型の事業運営だと思っています。
(写真)職場の空気を変えた小集団活動の発表会
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