JAの活動:IDACAの海外研修生に聞く
第2回・キューバ農業省農業生産組合振興部上席専門員 ペレス・マルティン・マリエンさん(24)2016年7月27日
キューバの変革を農業者の組織化で後押し
農業生産組合を振興する部署で働いています。
組合を運営するにしても事務所を整備するにしても農業者はあまり知識を持っていません。たとえば、事務所に電話を入れるというときも業者との間に立つというように民間と協同組合をつなぐことも含めたコンサルティングをしています。
月に1回は各地域を回って農家の声を直接聞きながら、何が必要か、何が問題になっているかを聞いていますが、この仕事をすることによってキューバ全体を把握できるようになると思います。
--なぜ農業省に勤務したのですか?
キューバでは大卒者は卒業後3年間、社会奉仕のため政府が決めた勤務先で仕事をしなければなりません。大学での専攻はエンジニアリングで、今の仕事につくまではまったく農業には関わっていませんでした。
2年前に卒業して初めて農業の世界に入ったのですが、農家は非常に優しい人たちが多く、農業は国にとって非常に重要な産業であることが分かりました。
--農業の現状は?
輸出で外貨を稼げるタバコとサトウキビの生産を重視し、それから米です。キューバ人はパンより米。毎日、米を食べています。日本人と同じですが、米の種類と調理が全然違います。日本は水だけで炊きますが、キューバでは油や塩を入れます。ほとんどの農家が米を作っていて耕作面積は平均2ha程度です。
--米国との歴史的な関係改善が注目されています。農業にどんな影響が出そうですか?
米国との関係は改善される方向ですが、経済封鎖はまだ続いています。だから、農業への投資もまだありませんし、経済的取引も再開していませんから生産資材を米国から買えません。
それでブラジル、ベネズエラから買っているのですが、輸送コストが非常にかかって、結果として肥料価格などに跳ね返って非常に高くなっています。
農業機械はおもに中国から輸入しています。しかし、いざ買ってみると取扱説明書が中国語のままですから、故障が起きたときに業者もなかなか処理できないということになります。結局、新しい機械を輸入しなければならず、そうなると故障した農機がどんどん増えて農機具の墓場というものもできてしまう。
もうひとつは社会主義というシステムが残っていて、いくら良い農産物を作っても値段は同じという不合理さがあることです。
一方、輸入農産物は確かに非常に品質はいいですが、これも価格が非常に高く、ごく普通の国民は買えないということになります。そうなるとキューバ産をみんなが買ってしまうので輸入はしているけれども品不足という状況が起きてしまう。 そういう状況のなかで政策としては国内生産の拡大を図るということになります。
--日本の研修で印象に残ったことは?
日本はどこに行っても小さな農地でも一生懸命農作物をつくっていました。キューバは政府が土地を提供しても農地を使いたがらないです。意欲が湧かない土地だということもありますが、若い人はどちらかといえば観光業に就きたいと考えています。
日本では農家に情報が行き届き政策を理解をしていると感じました。キューバも政策を示していますが、まだまだそれを農家が知らないということが大きな違いだと感じました。
それから女性部の重要な役割です。キューバの女性は子どもを含めて全員が加入しなければならない連合会がありますが、社会活動のための組織でした。これからはそれぞれの特定の目的、農業なら女性農業者のグループをつくることが大事ではないかと考えるきっかけになりました。
出荷用の箱にJA名が書かれていましたが、この作物はどこでつくったのかということが非常に分かりやすい。キューバではそういうことがありません。自分のものがどこに出荷されているかが分かるということは農家のモチベーションが上がるのではないかと思います。これはぜひキューバでも実現したいことです。
--将来の夢を聞かせてください。
キューバは政府が変革のときを迎えています。そういう状況のなかでこの研修を受けたことになりますが、変革のときの政策に影響を与えるような提案をしていきたいと思います。農業部門における女性グループの組織化は提案していきたい。生産から流通まで女性の役割は非常に大きく、女性が組織化されることが非常に重要なことだと思いました。
3年経てば仕事を選ぶことができますが、このまま続けて働き、農業を自分の専門分野にしていきたいと思っています。政府のなかで働くことによって自分も政策を変えていく力になっていきたいと思います。
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