JAの活動:IDACAの海外研修生に聞く
第5回 一般財団法人アジア農業協同組合振興機関 今野正弘常務理事2016年9月8日
JAグループの人と事業世界の農協づくりに貢献
アジアをはじめとした途上国の農協組織づくりを支援しようとJAグループが設立したIDACA。事業の意義と今後の方針などについて、改めて今野正弘常務理事に聞いた。
--IDACAの設立は1963年。この53年間で受け入れた研修員は6200人あまり、アジアだけではなく世界各国から来ていますね。
アジア農協振興機関という名前で出発したわけですが、今やアフリカ、中南米、東欧、中近東の国々まで、これまでに121か国から研修に来ているのが実態です。
世界全体でみれば小規模農家が主流ですから、小規模農家の生活向上に果たす協同組合の役割が必要だという認識が世界的にも広まっていると思います。2012年の国際協同組合年の影響もあるでしょう。
今回の5月中旬からの研修はJICA(国際協力機構)からの受託研修コースで、IDACA設立当初から続いているものです。日本の農協に学ぶこのコースは、昨年までは年1回の研修でしたが、国によって発展段階が異なるため、今年からはアジア・アフリカ・中南米を対象とした研修と、東欧を対象にした研修の2つに分けて実施することになりました。
多くの途上国では、技術や情報不足から生産性が低く、販売促進や資材購入が効率的に進められないという課題を抱えていて、それを克服するために農協づくりの必要性が叫ばれていますが、組織が未発達で機能が十分に発揮されていません。
そのためにIDACAの研修で協同組合の組織化や効率的運営の手法を学んでもらい、協同組合活動による資材購入や販売促進を通じて農家所得の向上に寄与することが基本的な目的です。
--研修員へのインタビューでは、日本の総合農協に非常に関心と評価が高いと感じました。
今回の研修員は全員が行政機関の職員です。行政としてどう協同組合を育成していくかという観点での研修です。
研修それぞれに単元目標を設定し、今回は以下の目標を掲げて実施しました。
(1)参加国における農協振興の課題が明確にされること。
(2)農協の組織化に必要な基本的要件と組織運営の仕組みの理解。
(3)農協組合員・役職員の能力向上のための教育活動の重要性の理解。
(4)農協の経営計画作成の手法の理解。
(5)農協の生産・生活資材供給の仕組みと農産物マーケティングの手法の理解。
(6)農協振興やアグリビジネスの振興における行政と農協の役割への理解。
そして、(7)日本での学びをもとに農協の組織化推進と事業運営改善のための方策が検討されること、です。
1か月半の研修期間中に1週間程度の現地研修を2回実施します。最初の現地研修は総合農協について理解を深めるもので今年はJAしまねで研修しました。2回目は北海道で実施し、農業振興と行政の役割を中心に研修しました。
インタビューに登場したキューバ、ジャマイカの女性と、それからベリーズの3カ国は53年の歴史のなかで初めて研修員を送ってきました。
こうした研修が貴重だと思うのは講義を受けるだけでなく現地に行って実際に自分の目で見るということができるからです。それから各国それぞれ事情が違うようでいて、実は抱えている問題はそんなに違わないと思います。その意味ではお互いの経験を交換するということも貴重なことだと思います。
--現地研修の場は地域でがんばっているJAであり、講師の方々も長年、JAや中央会・連合会で仕事をしてきたJAグループの関係者です。特別に講師がいるのではなく、今、JAグループが持っている力を研修に活用しているということだと思いました。
たしかにJAグループの資源をフル活用させてもらっているということですが、とくに昔の農協の現場を経験してきた人にも講師をお願いしています。というのも、やはり途上国の実情をふまえると、今よりも昔の農協づくりに関わってきた経験を伝えることが研修員に非常に理解されると思うからです。ですからJAグループのOBも含めて現場で実践してきたことを伝えることが役に立つと考えています。
一方で、農産品の加工など6次産業化といった途上国も注目する取り組みも取り上げ、JAの現場で専門的に関わっている方々に講義をしてもらっています。
--事業はそのほかどのようなものがありますか。
研修事業としてはJICAからの受託研修以外にアジア・太平洋地域各国の農協組織のリーダーを対象にICA(国際協同組合同盟)とASEANからの受託研修があります。それからIDACA職員を農協育成の専門家として派遣したり、ICA研修員に対して、研修で作成した行動計画の実施状況の調査とアドバイスを行う事業もあります。
タイの農協育成にかつて全中が協力して協同組合づくりに力を入れてきましたが、最近ではタイがアジアの近隣諸国のモデルになるようなレベルまで発展してきており、とくにICA研修では研修生は日本に来る前にまずタイで研修を受けるというプログラムになっているほどです。それにはJAグループも貢献したと思っていますし、IDACAも引き続きアジアをはじめ各国の農協づくりの拠点として役割を発揮したいと考えています。
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