JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第52回 第16回全国農林水産物直売サミット 第5分科会における私の講演の核心部分の紹介-つづき‐2018年4月14日
<カルチュア・ポリス>について
カルチュア・ポリス(Culture Polis)というのも、もちろん私の造語であるが、文化、芸能など多彩な伝統芸能、多彩な伝統技術、それらも踏まえつつ創造されてきた華麗な多岐にわたる歴史的神社仏閣などの文化遺産、それらを支えてきた祭礼などの多彩な歌舞音曲。それらは、わが国のいずれの地域においても、地域的特色を色濃く残しながら、これまで脈々と受け継がれてきた。それらは、いずれも地域性に裏付けられつつ脈々と受け継がれてきたが、しかし、それらはいずれも海外諸国との比較で日本文化という観点からくらべてみると、日本を代表しうる文化と言えるように思う。つまり、地域性、特殊性という側面を色濃く持ちつつも、一般性、共通性という視点でとらえ直してみると、わが国を代表しうる文化の担い手なのである。
こうした視点が、高度経済成長、さらに人口の東京一極集中、その裏腹としての農村地域、山村地域の急激な人口流出、過疎化の進行、それに伴う、農業や畜産業、さらには林業の後退、衰退という歎かわしい事態の急展開のなかで、いちじるしく弱まってきているように思われる。
そういう敗北感に陥るのではなく、「東京には文化といえるものはないではないか、しかし、わが地域には何百年、何十年にもわたり受け継がれ、地域を賑わし、守り抜き、元気づけてきた伝統芸能、伝統文化があるぞ」と胸を張って次代を担う若者たちに語りかけるべきではなかろうか。そのための拠点は、それぞれの地域ごとにあるだろうが、新しい拠点として農業者=生産者と消費者=地域住民・都市消費者を結びつける拠点として農産物直売所がなってほしいと私は考え、かつ各地で説いてきた。
もちろん、このような文化遺産だけではなく、自然遺産にも日本全国各地域とも恵まれている。北海道から沖縄に至るまで、海に接していない県はごく僅かで、四界海に囲まれ、四季のめりはりに恵まれ、全国百名山といわれる山々にも恵まれて、都市では得られない景観と心の安らぎが得られるところは全国の農村、山村の至るところで求めることができる。このような自然遺産と先に述べた文化遺産、あるいは世界遺産に指定された群馬の富岡製糸場のような産業遺産などを、いまこそあらためて評価しなおして、広義のカルチュア・ポリスを各地で作り上げる努力を惜しまないでほしいと希望する。
<農業・農村のもつ教育力の発揮を>
農村にはもちろん、農業にもすぐれた「教育力」がある、と私は考えてきたし、農民塾などを通して農民塾生に説いてきた。一言で言うならば「生きる力」を農業・農村は教えてくれると考えている。そのためには、各地に「高齢技能者」がいるが、そういう方々に一肌脱いでもらって「生きる能力」を教えてもらう機会を色々と作ることが必要ではないかと考えている。農村の高齢者は、ただ長生きしてきたのではなく、生きるための知恵と技能、そして技術をその身体の中にいっぱい詰め込んでいると思う。その「技能」を次代を担う若者や学童に教えてもらう機会や場を是非とも作ってもらいたいと思う。
いま一つ大変気がかりなことは、近年、農村の小・中学校が少子化の中で廃校が多発していることである。
小学校は、誰にとっても「心のふるさと」「心の拠り所」だったはずである。
その小学校の廃校を新しい時代に活かしている例が各地でみられるようになっている。「そば打ち道場」の開設、「木工施設の開設」、「陶器(焼きもの)教室」の開設、など全国各地で多彩な取り組みが見られ、そこには都会からの参加者、参入者がふえてきているとの報告もあるし、私もいくつかこれまで現地視察をしてきた。しかし、ここでそれらを具体的に紹介する余裕はないので、『総合情報サイト「里の物語」』(http://satomono.jp/)にアクセスして頂きたい。
これは、私が理事長を務めている一般財団法人「都市農山漁村交流活性化機構(愛称:まちむら交流機構)」が開設しているもので、「都市(マチ)と田舎(ムラ)の交流支援を目的とした全国の農山漁村の魅力を伝える総合情報サイト」でこれは全国約3000件の農家民宿、農林水産物直売所、農家レストラン、廃校活用施設や農林漁業体験情報などを検索、閲覧ができるようになっている。是非とも活用していただきたい。
<10点満点を目指す努力を>
さて、この稿の最後になったが、重要なことは、別紙の「5ポリス」の各項目が10点満点になるよう各地で努力してほしいという提案である。
皆さんのいろいろの集まる会合などの折、自らの地域は、それぞれ5角形の項目が、現状では10点満点で何点であるか、どの項目が点数が足りないか、どうすれば8点以上になれるか、各個人に書いてもらって、そのコピーを作り、全員に認識してもらい、どこをどのように改善し努力すれば8点以上の合格点をとれるか、というようなことを討議して、深めてほしいと思う。
そうすることを通して、それぞれの地域の活力をどのように回復して新しい進路ができるか判ると思う。色々の立場の方から色々の意見を出していただき、真の地域創生の方向づけを全力をあげて地域の総力を結集して進めていただきたいと念願してやまない。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日