JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
「魚沼コシ」の誇り賭けて 「特A」奪還へ肥培管理徹底【駒形正樹・JA魚沼みなみ営農部長】2018年7月24日
JA魚沼みなみ
米の生産・販売と資材価格低減
管内の水稲作付面積は3000haほどで、JAの米販売額は32億2000万円です。農家数2781戸(平成29年2月末)を面積別にみると、50a未満が51.9%で一番多く、次いで1ha以上5ha未満が23.0%、50a以上1ha未満21.4%、5ha以上10ha、未満2.7%、10ha以上1.1%となっています。兼業農家中心で1戸当たりの平均は1ha強。認定農業者への農地集積率は57%です。
認定農業者は384名で法人形態組織は41組織となっています。
生産資材コスト削減は、稲作が主となりますが、(1)新潟県下統一肥料への取り組み―価格10%のコスト削減、(2)肥料農薬の直送―工場からの直送による8%程度の割引、(3)品目集約によるスケールメリット活用―国産高度化成「オール14」の県域を越えた広域入札、(4)相見積りによる価格抑制―商系の割合、肥料1割、農薬5割、(5)予約申込書取りまとめによる計画的仕入れ―次年作用肥料農薬の取りまとめ(約2800件)、(6)その他―土づくり資材の特別価格を設定(平成30年産米品質・食味向上対策)などに取り組んでいます。
◆依然高い米生産費
しかしながら、中山間地のため10a圃場が多く残っていること、雪解けから降雪までの約7か月間に農作業期間が限られるため農業機械の取得率が高く償却費が嵩んでしまうこと、土づくり資材や堆肥などの肥料費の削減に加えて収穫量を抑えているなどのため、平成29年度の玄米60kg当たりの生産費は1万5402円かかりました。当JAの自己改革の目標は達成したものの、北陸地区の平均生産費を大きく上回る状況となっています。
営農指導とTACの取り組みは、(1)南魚沼産コシヒカリ栽培ごよみ―作業所貼付用のポスターの作成、(2)米づくり情報の発行―適期作業のため年10回程度発行、(3)携帯メールで緊急情報等を配信―現在930名が登録、(4)生育基準圃場を活用した研修―田植え、中干し、穂肥、刈り取りなどの集合型指導会、(5)出向く営農指導実践―専任TAC1名、兼任6名、(6)営農指導、信用、農機担当の連携―TAC月例会などがあります。
さらに、魚沼6JAと5市2町、関係機関が連携した品質・食味向上対策を打ち出すため、「魚沼米憲章」の改定が行われました。この中で田植え時期が遅れ過ぎないよう注意すること、選別網目は1.9mm以上を使用することを明記しました。
南魚沼市(旧大巻村)はコシヒカリ発祥の地です。昭和29年から越南17号(現在のコシヒカリ)の試験栽培が行われました。当時は「味は良い」ものの、倒伏しやすいなどの欠点がありましたが、その後も試験栽培・技術改良が続けられ、「越の国に光り輝く米」との思いから「コシヒカリ」と命名され、新潟県の奨励品種となりました。当地では、魚沼産コシヒカリ発祥の地を記念して建立された石碑があります。また、当JAの南魚沼産コシヒカリは、流通業界の人気調査では「特A」評価をいただいています。
◆独自にGAP項目
平成30年産米は特に品質・食味を重視した米づくりに取り組むことが至上課題です。穀物検定協会の食味ランキングにおいて、28年間「特A」評価を受けていた魚沼産コシヒカリが「A」評価に格下げとなりました。私たちは、魚沼の中の一産地として、このことを真摯に受け止め、「特A」奪還に向けた取り組みを行わなければなりません。土づくりから収穫作業まで、これまで行ってきた方向が間違っていたわけでないことは検証によって確認されています。一つひとつの作業の精度を上げて、いつ、どこの魚沼産コシヒカリを食べていただいても、美味しいと言われるようにならなければならないと考えています。
そのため、当JAでは、「栽培記録・GAPカード」の提出を米の出荷者全員に義務付けています。肥料・農薬の使用時期、使用量はもちろんですが、栽培工程を独自のGAP項目で確認しています。
また、早くから機器を使用した食味検査、品質検査に取り組んでおり、JA独自のタンパク含量の基準値を設けています。条件を満たした米のみ「食味値検査済みシール」を張って区分管理します。もちろん、食味・品質の結果については個々の生産者にフィードバックし、次年産米の生産に役立ててもらっています。
生産者の意欲に応え、JA魚沼みなみは、乾燥籾3000tを貯蔵できるカントリーエレベーターを2基、1500tのカントリーが1基あります。このカントリーエレベーターは、籾のまま貯蔵でき、長く鮮度を保つことができます。また、雪国の特徴から冬の外気温が低く、カントリーの大きなサイロで貯蔵された籾は10度C以下まで下がり、品質・食味の劣化を防ぐことができるという特徴があります。大きな「雪室」に貯蔵していると言えるでしょう。
また農業倉庫は4か所にあり、その一つは収容力4万俵の自動ラック式低温倉庫です。年間15度C以下に保たれ、入出庫もシステム管理されています。平成30年1月には、新たな精米施設が稼働しました。1時間当たりの精米量2.5tの能力を持つラインが2つあり、色彩選別機・金属検知器により安全を確認します。商品規格は10kg、5kg、2kg、1kg、真空包装450g、300g、150gのラインナップとなっており、さまざまな用途に対応できます。
販売では、農業者の所得増大を第一に展開しています。現状では、集荷量の9割以上を直売しており、平成29年産米では集荷数量は15万1200俵のうち14万4000俵を直売しました。内訳は、玄米が11万4000俵、精米が3万俵です。
◆精米販売の拡大へ
主な販売先は、玄米は卸業者や生協、商社、小売店など、精米は百貨店や量販店、提携JA、通信販売、航空会社の機内食、一般顧客などです。特に精米販売を拡大できるよう、取引先様への訪問営業、販売企画提案、試食販売会やイベントへの参加によるPRを積極的に行っています。
商品は、南魚沼産コシヒカリの中でも、栽培方法によって4種類あります。慣行栽培コシヒカリ、特別栽培米(化学合成農薬6割削減、化学肥料5割削減)コシヒカリ、特別栽培米(化学合成農薬8割削減、化学肥料不使用)コシヒカリ、有機栽培米(JAS認証)コシヒカリです。
特に有機栽培米南魚沼産コシヒカリは、厳しい栽培管理と生産記録の順守を絶対の必要条件としているため、現在、集荷量のわずか1%ほどしかありません。
先人が育て上げてきた米、そしてお客さまとのお付き合いを大切に考えて、いつまでも「夢のある農業」の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。
※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
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