JAの活動:JA全農改革実践レポート
【JA全農自己改革実践レポート】第3回 多収米を3年契約2019年3月27日
JA全農は農産物取り扱いの主力である米穀事業の改革に取り組んでいる。特に米の消費が低迷するなかで、業務用米など実需者のニーズに応じた作付け、買い取りや直接販売による生産者の手取り最大化への取り組みを支援している。埼玉県吉川市で水田130ha余りを経営する(有)中井農産センターもその一つで、多収米を導入して労力を分散し、JAとの契約栽培で規模を拡大。経営の安定に努めるとともに米粉、小麦粉の加工で所得アップにつなげている。
中井農産センターの経営のほとんどが経営受託と作業受託からなる。経営面積のうち、水稲の作付けは約120ha余り、それに飼料用米8haのほか、米粉用の米、小麦などを作付けしている。付加価値を高めるため冷凍ご飯や赤飯、混ぜご飯、のし餅などのほか、饅頭やおはぎ、団子など6次産業化で、15品目ほどの加工品を作っている。
(写真)中井農産センターの風景
同センターは、JAさいかつと全農の支援で平成27年と28年、多収品種(当時未登録品種)2品種の試験栽培に取り組んだ。その結果をもとに29年は「とよめき」を採用して1・5ha作付し、30年はさらに7haまで拡大した。
JAから多収品種の栽培を勧められたときのことについて、「多収品種の本格的栽培は始めてで不安もあった。しかしJAや全農のサポートで、一定の収量を上げることができた」と浅見明一代表取締役社長は振り返る。31年産では、労力の分散をすすめるため、収穫時期が遅い「ほしじるし」に切り替え、3年契約で面積を10haに拡大した。
契約栽培には収支計画を立てやすくなるという利点がある。「契約栽培をすることで面積あたりの所得が早い段階で計画できるので、先々の収益の見通しが立てやすくなった。また既存品種と収穫時期が違うので、労力の分散ができて非常に助かっている。センターには若い人が多いので、経営面積はもう少し増やせるだろう」と意欲を見せる。
同センターのある吉川市は都心まで1時間以内の通勤圏内で、宅地化が進んでいるものの、管内には約1万3400haの水田があり、埼玉県の穀倉地帯でもある。しかし高齢化が進み経営委託や農作業委託を希望する農家が増えており、農地をどのように保全していくかが課題となっている。市内には中井農産センターと同じく経営受託と作業受託を積極的に展開する大規模法人が3つあり、個人の取組みとあわせ農地の集積がすすんでいる。今後、委託を希望する農家はさらに増加することが予想され、中井農産センターの取り組みは一つのモデルになると、JAさいかつでは見ている。
同JA組合員相談課の宇野英美課長代理(3月上旬まで経済部TACセンター長)は、「全農が作成した埼玉県版の栽培歴の使用を勧めて提案した。農作業の年間計画を効率よく設定でき、労力の分担も出来るようになった」と言う。
(写真)水田を見回る浅見社長(右)
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
(関連記事)
・「米麺」のミールワークスと業務提携 JA全農(19.03.27)
・機構改革の詳細が明らかに JA全農(19.02.15)
・「農家手取り最大化」へ挑戦 全農コスト削減の成果発表(19.02.13)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日