JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第41回 予防効果と治療効果2020年2月29日
作物の病害を防除する農薬である殺菌剤の効能書きなどを見ると、「本剤は治療効果を有し、安定した効果を発揮する」などと記載されていることがあります。治療といえば、病気が治るようにすっかり元通りになるようなイメージがありますが、作物の病害の場合、ちょっと異なります。
予防効果とは、病原菌が作物に侵入するのを未然に防ぐ効果のことをいい、病害が発生する前に作物全体に万遍なく散布しておいて、病原菌を迎え撃つのを予防的防除といいます。
この予防効果の高い殺菌剤とは、作物表面に殺菌剤の層を作って長い期間作物を守り、雨にも流されにくい性質を持っていることが特徴で、マンゼブ(商品名:ジマンダイセン、ペンコゼブ)やTPN(ダコニール)、銅を有効成分とするものが予防効果主体殺菌剤の代表です。これらの薬剤は、どれだけ効果を持続できるかを把握しておくことで、効率のよい防除が組み立てられます。
一方で治療効果とは、作物体内に既に侵入してしまっている病原菌を、殺菌剤の有効成分が作物の体内に入りこんで病原菌を殺す作用のことをいい、病害が発生した後に防除することを治療的防除と呼んでいます。
治療効果を持つ殺菌剤は、作物に散布されたあと、作物の葉や茎から作物体内に浸透していく性能を持っていることが特徴で、この性質があるために、既に中にいる病原菌に作用することができます。
ただし、殺菌剤による治療効果とは、人間の傷が癒されるようなものとは異なっており、作物に一度できた病斑が活動を停止し、それ以上大きくならない、あるいは病斑上に胞子などの繁殖器官を作らなくなった状態のことをいい、病斑が癒えて綺麗になくなることはありません。
この作物体内へ浸透していく性能は、葉表から葉の裏くらいまでの短い距離を移行できるものを浸達性、葉から、茎、他の葉など作物の各部分にまで移行できるものを浸透移行性といって区別されており、より作物の深い部分に存在する病原菌をやっつけるには、浸達性程度では足りないこともあります。
近年販売されている殺菌剤の多くはこの浸透性移行性や浸達性を持っているものが多くありますが、病原菌が作物のどの辺にいるかによって、浸透移行性を持っていても治療効果を発揮できない場合がありますので、あらかじめ、農薬製品のラベルや技術資料を良く読んで確かめておく方がいいでしょう。
ただ、一つ押さえておかなければならないことは、病害防除の基本は予防散布であることです。予防効果主体の残効が長い殺菌剤を定期的に使えば、安定的な効果が発揮できますし、治療効果のある殺菌剤も、予防的に散布された方が効果も安定します。なぜなら、目に見えないところで潜伏期間にある病原菌には、治療効果のある殺菌剤でなければ防除できず、気づかなかった病斑などの取りこぼしを減らすことができるからです。
安定した防除効果を得るためには、予防効果主体の殺菌剤で防除を組みたてるように心がけましょう。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
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