JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略15【今さら聞けない営農情報】第111回2021年7月31日
「みどりの戦略」では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。前回より、それらの考え方とその具体的な方法についての掘り下げを試みており、前回は「有機農業」を掘り下げており、段階的に実現する技術戦略の概略を紹介しました。今回は1つ1つの戦略を少し堀下げてみます。
まず、2020年~2030年までの10年間に実現を目指す4つの技術革新です。
最初が、(1)地力維持作物を組み入れた輪作体系の構築です。
地力維持作物といえば、マメ科植物が代表的です。ご存じのとおりマメ科植物は根の根粒菌が共生しており、空気中の窒素を固定して地力増進に役立ちます。輪作を行う中で、生育に必要なN(窒素)を補ってくれる作物を入れることはプラスになります。
問題は、どの作物を組み合わせて輪作体系を組むかが重要となります。
有機農業を拡大するためには、生産した作物が、再生産が可能な価格で店頭に並びあるいは直接販売によって確実に売れる仕組みが必要であり、輪作を組む時も輪作される作物のそれぞれが確実に売れることが前提になります。有機農業の場合、通常の農法に比べ、格段に手間暇がかかり、加えて収量も通常の農法よりも少なくなるので、少ない収量でも農家の生活を支えるだけの収入が得られることが条件になります。
例えば、水田利用で多く行われる稲作→麦→大豆の輪作体系を考えてみます。水田と畑作の輪換は、土壌病害虫や雑草防除にも有効で理にかなった方法です。どういうことかというと、畑作で発生する土壌病害虫や雑草は、好気性(生きるために空気が必要)なものが多く、水田化により水没すると生きていけませんので、畑作病害虫雑草は水田化するだけでほとんどが防除できます。
水田を畑地に変えると、何年かは畑地の土壌病害虫雑草防除に大きな手間がかからないメリットがありますが、水田独特である湿害というデメリットも出てきます。畑地作物の多くは、土中にある程度の空気が必要で、団粒構造をもった水はけのいい土壌を好みます。水田は水をしっかり保持して貯めるのが役割ですので、水はけが良いと逆に都合が悪くなります。なので、水田を畑地として利用しながら何年かしたらまた水田に戻すような使い方をするには、暗渠などの設備をしっかりといれて、土壌水位を確実に制御できる水田にする必要があります。
さて、本題の稲作→麦→大豆の体系ですが、稲作の後に麦を植え、麦が終了した後に大豆を入れて、その後再び稲作に戻すといった、2年3作のような体系が一般的であり、この最後の大豆によって、どれだけ次期作の稲作と麦作のための窒素分を賄えるかが重要になります。実際には、大豆で蓄えられた分の窒素分だけでは、次作の稲作・麦の生育に必要な分には足りないため、堆肥や菜種粕などの有機質肥料を追加する場合が多いようです。
このように、地力維持作物を軸にしてどのような収益作物を組み合わせるかが、輪作体系構築の鍵となります。全国で普及させるためには、それぞれの地域にあった輪作体系を選べるよう、複数の実効性のある「地力維持作物を組み入れた輪作体系」の提案が必要となると思われます。
次回は、(2)水田の水管理による雑草の抑制と(3)土着天敵や光を活用した害虫防除技術です。
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