JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略16【今さら聞けない営農情報】第112回2021年8月7日
「みどりの戦略」では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。前回より「有機農業」に関する技術的戦略(1)~(10)(図参照)を掘り下げており、「(1)地力維持作物を組み入れた輪作体系の構築」を掘り下げました。今回は、「(2)水田の水管理による雑草の抑制」です。
これは、水稲の有機栽培で使用されている方法で、「早期湛水処理」と「深水管理」の2つの処理により除草効果を発揮します。
まず、「早期湛水処理」ですが、早期(およそ(田植え30日前頃)に湛水し、丁寧な代かきと均平化によって、イトミミズの繁殖を促し、それに伴うトロトロ層(膨軟層)の形成させる方法です。
土中のイトミミズは、土中に頭を突っ込み、土中の有機物(小さな雑草種子ども含む)を泥とともに食べて、非常に細かな粒子径の泥混じりの糞を水田土表面に排泄します。これが、つもりに積もって一般に厚さ数センチの非常に粒子の細かい泥の層、いわゆるトロトロ層が形成されます。これができると、トロトロ層発生前に水田土表面近くにあった雑草の種がトロトロ層の下数センチの深さに埋まってしまうことになり、コナギなど浅い深度(0.7cm程度)でしか発芽しない雑草の種であれば、発芽の機会を失わせることができ、結果として抑草効果を発揮します。
この方法で効果を発揮させるための条件は、雑草が発芽してくるよりも早くトロトロ層を形成させる必要があり、そのためには、移植30日前に湛水して、できるだけ多くのイトミミズに働いてもらう必要があります。また、下の方にいる雑草種子を土壌表面に浮き上がらせるために、途中さらに1~2回の代かきを行うと抑草効果が向上するようです。
もう一つの「深水管理」です。これは主にノビエに対して効果を発揮する方法です。ノビエは、種も小さくて実生は弱々しく、第3葉までが水没するとそれ以上生育できなくなります。そのための水深が10cm~15cmであり、最低2週間程度の期間この深さを保てればノビエは生えてこなくなります。逆に水深が保てずに、ヒエの葉が空中に露出するとヒエはどんどん生育しますので、できるだけ田面を均平に、全ての面が最低10cm以上に保てるように管理できればノビエを減少させることができます。
水深を保つためには、しっかりとした高い畝やこまめな水管理が必要で、近年では水深を自動で管理する水田センサー等のICT機器が登場し、このような管理を楽に行えるようになっています。
この2つの方法を同時に行えば、コナギやタマガヤツリ、ノビエなどの1年生雑草を激減させることができるのです。これが、「水管理による雑草の抑制」する技術です。
ただし、これらの方法は地下茎や地下深くから発生してくるホタルイやクログワイ、オモダカなどの多年生雑草には効果がありませんので、多年生雑草が多い場合は、除草機など他の方法との併用で除草作業を行う必要があります。
また、これらの方法を行うと、有機質窒素の無機化の促進などにより、稲の生育が進み、倒伏が起こりやすくなることもありますので、元肥の調整など施用する窒素量を意識する必要があります。
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