JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは41【今さら聞けない営農情報】第160回2022年7月30日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、有機農業の推進が大きな目標となっています。有機農業に取り組むあるいは拡大するためには、有機農業についてよく理解する必要があり、本稿では、その大元となる有機JAS規格について解説しています。過去3回(N0.137、No.138、No.139)に渡り、別表2の有機栽培で使用できる農薬等資材の概略をご紹介しました。現在、別表2で示された資材を使用する際の留意点を、別表2に掲載されている順番に沿って連番で紹介しており、今回がリスト最後にあたる35番目の資材です。
35.還元澱粉糖化物液剤
還元澱粉糖化物は、オリゴ糖(砂糖や乳糖、澱粉などを原料として酵素の力でつくる)を高温高圧下において水素と反応(還元)させて作る多糖類です。甘味料の一種で食品にも使用され、製造の過程で化学反応を伴わないことから有機JAS規格でも認められています。
還元澱粉糖化物は、粘り気のある無色透明液体で、アブラムシ類、ハダニ類といった害虫の気門を封鎖して窒息死させます。気門封鎖というと、害虫の気門を物理的にふさぐようなイメージがありますが、実際には気門から気管系内部に浸潤して毛細血管を皮膜することで呼吸の邪魔をすると考えられています。また、うどんこ病にも効果があることが知られています。原理は害虫と同じで生命活動である呼吸を邪魔することで効果を発揮します。うどんこ病は、作物体の表面に菌糸や胞子をはびこらせる病害なので、菌糸や胞子に直接的に還元澱粉糖化物を散布して病原菌体に薄膜を張るように皮膜することで効果を発揮します。このように粘性のある製剤に被覆されることにより効果を発揮しますので、虫体や菌体に満遍なく薬液がかかるように、葉の表裏目掛けて丁寧に散布する必要があります。
商品には、「あめんこ」や「キモンブロック液剤」があります。以前、「エコピタ液剤」も有機JASで使用が可能でしたが、従来の有機JASに適合した原材料の調達が難しくなり、原材料の変更を行いました。その新原料が有機JAS基準を満たさないものであることから有機JAS農産物に使用できるリストから削除されました。
このように、現在は有機農業で使用が可能な製品であっても、何らかの理由で製造原料が変えざるを得ないようなことがあった場合、その変更した原材料が有機JAS規格を満たしていなければ、製品自体が有機農産物への使用が不可になることがありますので、毎年使用する前に、製造メーカーホームページなどを必ず確認するようにして下さい。
様々な原料の値上げが続き、調達が難しくなっている現代、エコピタ製造メーカーが製品供給維持のために有機JAS規格から外れた原料を使用せざるを得なくなり、結果として有機農業に使用できない製品になる場合がありうることをご承知おき下さい。
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