JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは72【今さら聞けない営農情報】第191回2023年3月11日
国は、肥料原料の価格高騰に対応した肥料価格高騰対策事業を実施し、海外原料に依存している化学肥料の低減や堆肥等の国内資源の活用等に取り組む農業者に対し、肥料コスト上昇分の一部(7割)を支援しています。この事業は、15項目に上る化学肥料低減に向けた取り組みのうち、2つ以上を実行または強化・拡大することで補助を申請できます。
今回は、⑬育苗箱(ポット苗)施肥の利用です。これは、水稲であれば水稲育苗箱全量施肥法、野菜であれば野菜育苗ポット施肥法・セル苗全量基肥施肥法とも呼ばれている技術を活用することで実行できます。
まず、水稲育苗箱全量施肥法とは、専用肥効調節型肥料「苗箱まかせ」(ジェイカムアグリ株式会社)を使用した、窒素(および加里)の溶出量を調節できる省力・低コストな施肥法です。具体的な使用方法は、育苗箱に指定量の床土を入れ、その上に「苗箱まかせ」を入れ、その後に播種、覆土をします。つまり、床土と覆土で「苗箱まかせ」と苗種子をサンドイッチ状態にするイメージです。「苗箱まかせ」には播種後の本田で必要な窒素全量入っており、そのことによって基肥と追肥の作業が省略できます。また、肥料の利用率が高くなるので施肥量が削減でき、ほ場の状況によりますが、慣行施肥に対し約10~40%節減が可能になります。
一方、野菜育苗ポット施肥法とは、育苗時に使用するビニールポットの用土に、育苗期間中はほとんど溶出しない被覆肥料を必要な分だけ混合して育苗します。こうして育苗した苗を定植することで、本圃へ局所施肥したのと同じ効果が得られ、ほ場全面施肥に比べ、窒素成分であれば30~40%削減できます。
また、セル苗全量基肥施肥法は、野菜栽培での機械移植に適したセルポットに充填する用土に、育苗期間中はほとんど溶出しない被覆肥料を全量施肥する技術です。この技術を使うことで、慣行施肥と同等の収量、品質を維持したまま、窒素成分を30~40%程度削減できます。特に、ハクサイやキャベツなど大面積で機械定植を行う場合に削減効果が大きい技術です。
いずれの技術も施肥量を減らすことができ、また施肥作業に費やされる労力と時間を大幅に減らすことができるので、施肥コストの低減に役立ちます。また、本技術で使用する肥料は、溶出制御を施した特殊なものなので一般の化成肥料に比べると購入費用が割高とはなりますが、それを加味してもトータル施肥コストの削減に貢献できる技術です。
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