JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは79【今さら聞けない営農情報】第198回2023年4月29日
肥料原料の価格の高騰に対応し、政府の肥料価格高騰対策事業の支援を受けるための化学肥料低減の取組が進められています。この取り組みをより進め、日本農業を発展、維持させるためには、国内の肥料資源を活用する必要があり、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材の活用が重要になります。
このため、本コラムでは、有機質資材を有効活用するために必要な知識として、「有機質資材が持つ作物の健全な生育に役立つ効能」についてご紹介しています。その効能は、①肥効増進効果、②土壌の化学性改善、③土壌の物理性改善、④土壌の微生物活性の改善、⑤植物生理活性の増進、⑥土壌緩衝能の改善といったものであり、前回までに①および②についてご紹介しました。
今回は、③土壌の物理性改善についてご紹介します。
土壌の物理性改善とは、土壌に団粒構造を形成させることに他なりません。土壌は、基本的に細かい土壌粒子がバラバラに存在する単粒構造となっており、これは砂場の砂を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。これに対して団粒構造とは、複数の土壌粒子が相互にくっついて団子状態になる構造のことをいい、軽く握った丸いおにぎりをイメージするとわかりやすいでしょう。つまり、おにぎりを構成するご飯のひと粒ひと粒が土壌粒子、その塊であるおにぎり1個が団粒に相当します。
この団粒を構成する小さな土壌粒子と土壌粒子の間には小さな隙間(孔隙)ができていますが、そこには毛細管現象と同じ原理によって水を保持する機能が備わっており、団粒の中の微小な孔隙の分だけ水を溜めることができます。これが団粒構造を持つ土壌の保水性の正体です。
一方、大きな粒の団粒と団粒の間にも隙間ができますが、これは毛細管現象を起こすほど小さくなく、粒子と粒子の間の隙間に比べれば広い隙間になります。このため、ゴロゴロした石の間を水か流れていくように、団粒が吸収できない余分な水分は、この大きな隙間を通って下に流れていきます。これを排水性といいます。また、水が通ったあの隙間には空気が入り込み、通気性も良くなります。
このように団粒構造は、保水性と排水性という相反する機能を併せ持ち、通気性も高いことから健全な根圏の育成・維持に役立つ、作物の生育に適した土壌構造なのです。
この団粒構造は、腐植など有機物を多く含む堆肥などの資材を施用することにより、その有機物が分解されてできる物質が接着剤の役割を果たすことによりつくられます。そのため、作物の生育に適した土づくりには堆肥等有機物の施用が欠かせないのです。
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