JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは81 有機質資材を活用した施肥⑲【今さら聞けない営農情報】第200回2023年5月20日
肥料原料の価格の高騰に対応し、政府の肥料価格高騰対策事業の支援を受けるための化学肥料低減の取り組みが進められています。この取り組みをより進め、日本農業を発展、維持させるためには、国内の肥料資源を活用する必要があり、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材の活用が重要になります。
このため、本コラムでは、有機質資材を有効活用するために必要な知識として、「有機質資材が持つ作物の健全な生育に役立つ効能」についてご紹介しています。その効能は、①肥効増進効果②土壌の化学性改善③土壌の物理性改善④土壌の微生物活性の改善⑤植物生理活性の増進⑥土壌緩衝能の改善といったものであり、前回までに①~④についてご紹介しました。
今回は、⑤植物生理活性の増進についてご紹介します。
◇ ◇
土壌中では、様々な微生物や植物の根をはじめとした有機物などが存在しており、それらが相互に作用しあい分解や生理活性物質の合成など複雑な反応が起こっています。このような反応のほとんどは、土壌内に存在する生物の生きた細胞の内外に存在する酵素の働きによるものであり、酵素の働き具合が土壌中の生理活性の度合の指標となっています。
土壌中で活性化する酵素は約50種類ほどあり、多くが加水分解酵素や酸化還元酵素であり、その他に転移酵素などがあります。
作物の生育や収量と関連が深いのは、有機態窒素を植物が吸収できる形に無機化する働きを持つプロテアーゼ、グルタミナーゼ、同様に有機態リンを無機化するフォスフォジエステラーゼ、フォスフォモノエステラーゼなどになります。有機質を入れることでこのような酵素の働きで、作物の生育や収量が向上させることができます。
ただし、β-グルコシダーゼなど土壌病原糸状菌と連携して連作障害の誘引物質であるフロリジンやアミグダリンの生成に関与するものもあります。ただし、そのような反応をするのは一部の作物に限られるため、事前にさけることができますのでご安心下さい。
一般には有機質を入れることによるメリットの方が大きいので、有機質を有効活用するようにしたいものです。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































