JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(25)【今さら聞けない営農情報】第255回2024年6月22日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
前回から施肥量の決め方の基礎知識をご紹介しています。
今回は、施用量を決める要因の3つ目、③天然供給量を紹介します。
作物は、施肥した肥料分以外の養分、すなわち、もともと土壌に含まれていた養分や灌漑水に含まれる養分も利用して生育します。このため、目標収量を得るのに適正な施肥量を決めるためには、目標収量を得るための養分量から天然供給量を差し引いて、過剰な施肥とならないようにする必要があります
この天然供給量は、灌漑水の栄養状況や栽培条件、作付品種などによって大きく異なってきますので、正確な数値を得るのは容易ではありません。このため、実際の施肥では、作物ごとの肥料三要素無施用区における収量指数(肥料三要素を施用した場合の収量を100とした場合の収量比率)を用いて天然供給量を計算した推定値を使用します。
肥料三要素無施用区の収量指数は、水稲の場合ですと無窒素が75、無リン酸が97、無カリが93となっています。これは、窒素を必要とする量を施用した場合の収量を100とした場合に、窒素を施用しないと収量は75に止まるということを示します。一方、陸稲の場合は無窒素が46、無リン酸が66、無カリが90となっており、水稲よりも無施用区での減収割合が多くなります。水稲と陸稲の違いは灌漑水があるか無いかなので、水稲の場合窒素分やリン酸分の多くを、灌漑水から得ているということが分かり、そのため、水稲の肥料施用量を決定する場合には、特に天然供給量を意識しないといけないということになります。
その天然供給量(推定値)は、(目標収量を生産するのに必要な成分量)×(無施用区の収量指数)÷100で計算することができます。
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