JAの活動:農協時論
【農協時論】JA運営への「女性参画」 実質的参画へ環境整備を 根岸久子・JCA客員研究員2024年6月25日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJCA客員研究員の根岸久子氏に寄稿してもらった。
根岸久子 JCA客員研究員
過日、ある県からJA女性役員研修会で「JA女性役員に期待すること、求められる資質、スキル」について話してほしいと依頼された。
当日、私の話の後は分散会形式で話し合いが進められたが、私は分散会には参加せず、近くで話し合いの内容に聞き耳をたてていた。いずれの分散会も意見が飛び交い、話は途切れることなく、議論白熱と言えるほどの盛り上がりで予定の時間はあっという間に過ぎてしまった。参加者の皆さんはまだまだ語り足りないといった面持ちで、私はそのパワーに圧倒されつつ、分散会報告を楽しみにしていた。
分散会報告では研修目的に即して、まずはJA役員として果たすべき役割や取り組みたい活動、抱負等について話し合ったこと、なかには期待に応えようと一歩踏み出しつつも孤軍奮闘していること等が報告されていた。「さすが」と思いつつも、それ以上に報告者が熱を込めて報告していたのが、女性たちが役員になって直面した悩み、そしてJAに対する要望等であった。
それらは「何をやったらいいかわらない」、「自信がない」、「JAは私たちに何を期待しているのか」等々で、こうした発言の背景には、JAから役員就任を依頼されたものの、JAにとって「今、なぜ、女性役員が必要なのか」の説明もなく、加えて「JA役員に必須の知識等を学ぶ研修がない」こと等があった。
分散会のなかでは、「役割を理解しないまま現場に出された」「知識不足なので発言できない」「研修を要望します(女性への投資等)」「スキルアップの機会がない」「各JAで研修会を開いてほしい」「形式的な参画(人数等)、本当に必要とされているのか」といった意見や要望が多く、「意見を真剣に聞いてほしい」といった声もあった。
ちなみに、女性役員の皆さんは役員候補者にリストアップされた方々だけに女性部や地域組織、行政組織の役員等を経験されてきた、いわばリーダーとしての能力は試され済みであり、加えてこれまでの活動を通して積み上げてきた多彩なネットワークもお持ちの方々である。
こうしたJAへの要望や不満等の裏には「役員に選ばれたからには、その任務・役割を全うしたい」との強い思いがあるからで、それゆえJAには女性役員への期待や役割をきちんと提示してもらい、それを果すために必要な教育研修を強く望んでいるのである。いわば役員としての力をつけJA経営に貢献したいとの積極的な「参画」への意思表明と言えよう。
ちなみに「参画」とは、「政策や事業などの計画段階から加わること」で、途中で加わるのは「参加」と定義されている。その意味で「JA運営への女性参画」は未だ「参加」の段階で足踏みしているのではないか。JAには早急に「参加」から「参画」へとジャンプすることを期待したい。
農業、農協をめぐる環境が厳しさを増す中で、今後は農政運動だけでなく広く国民に農業・農協が果たしている役割や存在意義を積極的に発信しつつ、農業・農協への援軍を広げることが必要となろう。その意味でも能力と意欲を併せ持つ女性役員の皆さんがその力を存分に発揮できるような環境づくりを急がなければならない。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日