JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
「会津は一つ」を力の源泉に(1)福島県JA会津よつば組合長 原喜代志氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年10月16日
「多くの出会いと経験が積み重なり、現在の私を形づくっていると強く感じる」と置かれた環境に感謝するのは福島県JA会津よつばの原喜代志組合長。大規模文化圏をけん引する手腕を聞いた。インタビュアーは文芸アナリストの大金義昭氏。
震災時JA奔走 役割と意義痛感

JA会津よつば組合長 原喜代志氏
大金 第45回農協人文化賞の受賞スピーチでも触れていましたが、趣味の将棋はいつから?
原 小学生の頃です。駒の動かし方を教わり、面白くなりました。先日、家の光協会の皆さんとご一緒した時に「『家の光』に出合ったのは詰将棋コーナーからでした!」と言ったら、「実は担当でした!」とあいさつされた職員さんがいて、そういえば、昔の将棋仲間が全国大会で負かされた相手がその彼だったのです。出会いとは不思議なものですね。(笑)
大金 入組はいつ?
原 生家は稲作と養蚕、それに林業をしていました。夏場の桑畑は暑くて大変でした。林業では食えなくなり、養蚕も衰退し、稲作が中心になりました。親の勧めで会津農林高校から県立農業短期大学校に進み、1976年に地元の会津高田町農協に入りました。人の出入りが多かった生家もJAも、私にとっては空気みたいな存在でした。(笑)
大金 信用・共済部門を長く歩いてこられた?
原 最初は総務で、次に信用の融資部門。共済担当になるのは8JAが合併し、JA会津みどりになってからです。支店長を6年間務めた後、総務部長になりました。46歳で支店長になった時は課長の皆さんがみな年上で気を遣いましたが、今でもその人たちとのつながりは深い。(笑)
「東日本大震災」が発生した2011年3月には、総務部長として大きな責任を負うことになりました。ガソリンがなく、コンビニが空っぽという混乱した最中に、県の振興局から「被害が甚大な浜通り地域のために、おにぎりがほしい」と言ってきました。幸いに米を作っている職員は多い。米を持ってきてもらっても、JAで炊けばブレーカーが落ちる。「家で炊いて炊飯器ごと持ってきて!」とお願いし、職員総出で4500個を超えるおにぎりを作りました。それを振興局が避難所などに届けてくれた。「こんなことができるのはJAだけだな!」と思いました。
その年5月の総代会で常務理事になり、組合長以下4人の常勤が毎朝打ち合わせをしながら最前線で臨機応変に対処し、私は信用・共済担当として支店の皆さんなどと震災対応に奔走しました。
大金 何か学んだことは?
「共済」理解組合員浸透
原 JA共済は多くの組合員から感謝されたのですが、「共済推進の際にJAの話をもっとちゃんと聞いておけばよかった」と後悔される組合員さんもたくさんおられた。「もしも」の備えに、共済の意義をしっかり伝えなければと改めて思いました。もう一つは、食べ物の大切さとそれを作る農家の役割です。これは本当に痛感しました。
東京電力への損害賠償請求も苦労しました。地域には「生産研究会」という組織とJAと二つの米販売窓口があったのですが、窓口をJAに一本化しました。この取り組みもJAならではのことでした。
大金 2016年には「会津いいで・あいづ・会津みなみ・会津みどり」の4JAが合併してJA会津よつばが誕生し、22年には組合長に就任します。
原 合併後は大変でした。何しろ、「自分たちがやってきたことが一番いい!」とみんなが思っている(笑)。会津は東京都の2倍以上、千葉県や愛知県よりも面積が広い。ただ、もともとは一つの文化圏ですから、「会津は一つ」を合言葉にブランドを確立し、消費地との連携を強化して産地の底力を発揮する組織・事業・経営に努めています。
大金 「心のこもった"あいさつ"」「誠意と責任」「知識と能力の向上」「地域とのつながり」「感動のサービス」など、五つの「行動宣言」の由来は?
原 合併事務局で策定しました。組合員主体のJAですが、同時に職員の生活を守るためにも、地域農業振興と食料供給に全力を尽くすべく、会津のPRに消費地へ出向いてトップセールスに励んでいます。
大金 「会津米120万俵」と言われる、秀でた米の主産地です。
原 どこに行っても「自分の家の米が一番うまい!」と農家の人は思っています(笑)。しかし、年々370戸ほどの米農家が減少しています。これを何とか食い止めたい! 去年までの米価は生産費を割り込んでいましたが、農家の皆さんはしっかり良質米を作ってきた。
米の取り扱いが県域全体からJA単独に変わったので、最終清算を、収穫した翌年の12月から9月6日に前倒しできました。昨年の概算金に加え、「コシヒカリ」で60キロ当たり1700円、「ひとめぼれ」で1900円、「天のつぶ」「里山のつぶ」で2200~2300円の追加払いができました。
JAとしては、農家の皆さんに「来年もよし米を作んぞ!」と言ってもらえるよう、強力にサポートしていきたい。
大金 この夏、店頭で「米の品薄感」が浮上しましたが?
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