JAの活動:今さら聞けない営農情報
農薬の正しい使い方(52)【今さら聞けない営農情報】第318回2025年10月4日
「いまさら」では農薬を正しく、安全に、しかも高い効果を得るため、農薬の正しい使い方の基礎知識をご紹介しています。農薬の防除効果は、有効成分をいずれかの方法で作物に付着または吸着させることができてはじめて発揮されますので、高い効果を発揮させるには、有効成分をいかに効率よく作物に付着させるかが鍵となります。前回までに、各種剤型の特徴と散布方法について、特に農薬の製剤に焦点をおいて農薬の正しい使い方のヒントをご紹介してきました。しかし、農薬をより効率よく正しく使用するためには、製剤の選択の他に散布対象となる作物やその生育ステージ、あるいは病害虫雑草の生態に合わせた使い方も重要になります。前回までに、農薬を選ぶにあたっては、まずは作物と防除したい病害虫雑草を定め、それに応じた農薬を防除暦や指導指針、検索サイトを参考に農薬の候補を選び、散布法(散布機器選び等)の選択について紹介しました。今回は、病害虫の生態に合わせた選び方、使い方の続きです。
病害虫防除では、可能な限りこの1次の伝染・加害を防ぐことが防除効果を安定させるポイントですが、害虫の場合は、防除対象となる害虫が潜む場所にきちんと届かせるための散布法が必要であることを前回紹介しました。それを受けて今回は害虫の潜む場所に農薬を届かせる考え方を紹介します。
農薬には様々な有効成分や剤型があり、その組み合わせによって使用の考え方が異なります。
一番単純な方法は、水和剤やフロアブルなど水で希釈して噴霧する薬剤を使用し、害虫の潜んでいるところや加害場所に目掛けて丁寧に噴霧していくことです。そして、害虫の加害が発生する時期には、作物の生長に合わせて一定間隔で散布を繰り返します。しかし、どんなに丁寧に噴霧しても、散布後の作物の生長具合や散布時のノズルの向きと加害部位の位置関係などによって、農薬が付着していない部分が発生することがあります。
この時、使用している農薬が浸透移行性・浸達性(作物に沁み込んで作物体内を移動する力)の有無が効果の安定性に影響を与えます。つまり、浸透移行性・浸達性がある農薬であれば、例え農薬が直接付着していない部分が発生しても、農薬の有効成分が作物の体内を移動して直接付着していない部分にも有効成分が行き渡り効果を発揮してくれるのです。特に、花の奥など通常の散布では農薬を付着させることが難しい部位にも農薬の有効成分を行き渡らせることができるので大変便利な特性なのです。
(つづく)
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